《めブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom4 ぬるま湯に浸かりすぎないように【2】
「そういえば、うちでの生活は慣れた?」
「うん。諏訪くんのおかげですごく快適だよ」
素敵なマンションには相変わらず気後れしているものの、洗練されたシステムキッチンで料理をするのは楽しいし、広いバスルームはリラックスできる。バルコニーで飲むコーヒーはおいしく、家財付きの部屋には不満なんて出てこない。
ホテル暮らしのような生活は快適すぎるくらいで、レビューをつける機會があるのなら星が十個でも足りないくらいだ。
「それならよかった。もし不安とか不満があれば、遠慮なく言って」
「そんな……。諏訪くんは私のことをすごく考えてくれてるから不満なんてないし、逆に申し訳ないくらいだよ。むしろ、諏訪くんこそ本當にいいの?」
諏訪くんは私のことを気遣ってくれるけれど、あのマンションは彼のもので、私は居候に過ぎない。ルームシェアならともかく、家賃もれていないのだから……。
そんな中でもこんなに気を遣ってもらえることに謝している反面、彼こそ本當に私と一緒に住んでいて大丈夫なのかと心配だった。
「前にも言ったけど、無理ならこんな提案はしないから。香月がご飯を作ってくれるおかげで、俺もすごく快適だしね」
「ご飯くらい……」
私がしてもらっていることに比べれば、私がしていることなんて微々たるものだ。
料理が好きな私にとって、食事の支度は苦じゃない。ふたり分を用意する方が作り甲斐があり、おしゃれなキッチンを使えることだって嬉しいし、料理がもっと楽しくなった。だからこそ、余計に申し訳ないのだ。
「わかってないな、香月。手料理が食べられるって、俺からすればすごくありがたいし、嬉しいことなんだよ。香月の料理はお世辭抜きでうまいしね」
さらりと褒められて、面映ゆいような気持ちになる。
「だいたい、自炊はほとんどしない男のひとり暮らしの食生活なんて、結構ひどいものなんだからな。毎日、コンビニかカップラーメンか、たまにテイクアウトだし」
「外で食べないの?」
「付き合いで行くことはあっても、ひとりで外食しようってあんまり思わないんだ。それなら家でゆっくりしたいかな」
この一週間、諏訪くんは忙しそうだった。
帰宅時間はそこまで遅くないけれど、食事やお風呂を済ませたあとにも仕事をしていたし、土日も數時間は書斎にこもっている。そんな仕事中心の彼の生活では、食事にまで気が回らないのかもしれない。
「だから、香月がいてくれてすごく助かってる。俺にもメリットがあるっていうかさ」
それもきっと、諏訪くんの本音に違いない。けれど、彼はそれ以上に私を思いやってくれているんだろう。
ただの同級生にここまでしてくれる諏訪くんは、本當に優しい人だ。昔から変わらない格に、思わず笑みが零れた。
「ありがとう。諏訪くんって、本當に優しくていい人だね」
「そうでもないけどね」
自嘲混じりに微笑んで肩を竦めた彼に、ふふっと笑ってしまう。
「謙遜することないよ。諏訪くんがいい人じゃないなら、いい人なんていないんじゃないかな」
「本當にわかってないな」
「え?」
「いや、こっちの話。香月は変わらないなと思ってさ」
ふと獨り言のようごちた諏訪くんが、眉を寄せて瞳をたわませる。
「そんなに長してないかな?」
「そういう意味じゃない。全然すれてないってことだよ」
「そんなことないと思うけど……」
彼の目には、どんな風に私が映っているのだろう。
なくとも、私は高校生の頃のように真っ直ぐじゃなくなったし、容師だったときは嫌なこともたくさん考えた。口にできなかっただけで、男スタイリストたちへの恨み辛みでいっぱいだったこともある。
すれていない、なんてことは斷じてない。
けれど、諏訪くんがそう思ってくれているのなら、せめて彼の中だけでも綺麗なままでいさせてほしい。おこがましくも、そんなことを願ってしまった。
「香月」
不意に優しい聲音で呼ばれて諏訪くんに視線を戻すと、和な雙眸とぶつかった。
「仕事はゆっくり覚えて。あんまり急がなくていいから」
「でも、それだといつまでも出ていけなくなるし……」
「いいんだ」
きっぱりと言い切る彼は、本當に優しい。優しすぎて困るくらいだ。
あまり甘えてはいけないと思うのに、焦らなくていいんだと思わせてくれることが嬉しくて、諏訪くんを見つめて「ありがとう」と笑みを返す。彼は困ったようにも見えたけれど、らかい笑顔で首を橫に振った――。
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