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駆け抜けていった八月も終わり、九月も中旬を迎えた頃。

木野さんについてもらわなくてもできることが増え、仕事に慣れた実や長している手応えをしずつ得られるようになった。

諏訪くんへの気持ちを持て余しながらも、毎日必死に業務をこなしている。一刻も早く仕事に慣れて、彼の家を出ていけるようにしたいからだ。

このままずっと一緒にいたい……と思うこともある。しでも長く今の生活を続けられる方法を探したこともあった。

諏訪くんへの想いは実るはずがないからこそ、今だけは現狀を言い訳にすれば彼の傍にいられるかもしれないと考えて、もうしこの生活を維持していたい……と。

けれど、それはあまりにもずるい。

見返りを求めずに優しくしてくれる諏訪くんに対して不誠実だし、いくら失が確定しているからといっても、好きな人にそんなことをしたくない。

彼が無償の思いやりを與えてくれた分、せめて私は仕事を含めて自分自を長させなければいけないし、その上でを張ってお禮がしたい。

だから、甘えてずるいことを考えてしまった自を叱責し、諏訪くんの友人として恥ずかしくない私でいたいと思ったのだ――。

土曜日の今日は、諏訪くんは珍しく午前中だけ出社すると言って出かけていった。

なんでも、先日契約先の企業で起きたシステムトラブルの件で、どうしても今日中にチェックしておきたいことがあるらしい。

エスユーイノベーションは、基本的にカレンダー通りの勤務形態だから他のエンジニアは休みだけれど、諏訪くんと鵜崎副社長だけが出社するのだとか。

他の社員はいなくていいのかと尋ねれば、『このトラブルで隨分殘業させてしまったし俺とタケだけでいい』と話していた。

諏訪くんは、もともとの格もあいまって経営者に向いていると思う。

エスユーイノベーションで働くようになってから、彼がどれだけ社員に慕われているのかを目の當たりにしてきたけれど、こういう気配りをじられるのは日常茶飯事だし、それだけ社員を大切にしていることが伝わってくる。

葉わないでも、自分が好きになった人はこんなにも素敵な人なんだと、仕事でもプライベートでも何度もじてきた。

だからこそ、ただ苦しさや切なさにいで傷つくだけじゃなく、諏訪くんへのめた心をけ止め、時間をかけてでも消す決意ができたのだ。なんてかっこいいことを言ってみても、本當はまだ切なさに負けてしまいそうなんだけれど。

小さなため息を零したとき、玄関のドアが開く音がした。

晝食の支度をしていた私は、キッチンからリビングのドアに向かい、廊下に出て笑顔で出迎える準備をする。直後、広い廊下で鉢合わせた人に瞠目してしまった。