《めブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom7 は曲者、あなたは変わり者【4】
「容師時代には平気なふりをしようとしても、が震えたり強張ったりして思うようにならなかったのに、諏訪くんの前ではずっと大丈夫だった。それってきっと、諏訪くんが私に対してひとりの人間として向き合ってくれてたからだと思うの」
今になって気づいたことは、私の諏訪くんへの信頼を裏付けるようで、自然と彼に笑みを向けることができていた。
「だったら言わせてもうらうけど」
引かない私に諦めたのか、諏訪くんがため息をらす。
「俺は香月と付き合いたいと思ってる」
剎那、きっぱりはっきりと言い切られた彼の願に、が大きく高鳴った。
(そっか……。諏訪くんが私を好きでいてくれたってことは……普通はこういうことなんだ)
當たり前の流れなのかもしれないけれど、今の私はそこまで思い至らなかった。
というよりも、諏訪くんがそこまでのことをんでいると考えていなかったのかもしれない。
「私は……」
私だって、初相手だった彼のことが好きだと自覚している。けれど、イコール付き合いたいか……と尋ねられれば、すぐに浮かんだ答えは〝否〟だった。
本當は、敦子のように普通にをして、大切な人と結婚する未來を夢見ている。ただ、普通にれ合えもしない今の狀況では、その一歩を踏み出すのが怖かった。
諏訪くんのことは好きだし、彼の隣に他のが並んでいるところを想像するだけで、がズキズキと痛む。一方で、自分が人としての務めを果たせる気がしないことが、私から自信をこそぎ奪っていった。
私の事を知った上で『付き合いたい』と言ってくれる諏訪くんは、私にとってはなかなか出會えないような素敵な人だけれど……。彼の目線に立てば、私以上にいい人はたくさんいる。なくても、近にいる篠原さんは魅力のあるだ。
「うん、わかってる。香月がまだに踏み出せるところまで來てないのも、トラウマのせいで怖いって気持ちがあるのも。ただ、俺が知りたいのはそこじゃない」
「え?」
「香月にとって俺は対象になれる? それとも、絶対にそうはなれない男?」
「そ、れは……」
素直に言ってもいいのなら、言ってしまいたい衝に駆られる。けれど、付き合ってもなにもできないかもしれないのに、本心を打ち明けるのは勝手に思えた。
「俺は、香月を見てるとれたくなるし、キスしたい、抱きたいって思う。でも、今の香月に同じことを求める気はないよ」
戸い悩む私に、諏訪くんが瞳をそっと緩める。今日初めて見た彼の和な微笑みが、グラグラと揺れる私の心を優しく包み込んでくれた。
「香月がそんなことまで考えられないのは當たり前だし、別に今すぐ無理にどうこうしようなんて思ってない。ただ、香月が俺と一緒にいたいと思ってくれる気持ちがあるのなら、今の自分の不安だけを見るのはやめてほしい」
「でも、先のことなんてわからないでしょ……。私、もしかしたらずっとこんなじかもしれないし……」
「確かに先のことはわからない。香月はずっと今のままかもしれない。でも、逆に言えば、今の不安が杞憂に終わるかもしれないってことでもあると思うよ」
「あっ……」
「わからないっていう意味でなら、いい方か悪い方かどっちに転ぶかもわからないってことだ。俺は香月は大丈夫だと思ってる。現に、俺には自分かられただろ?」
目から鱗だった。私は悪い方にばかり考えていたけれど、言われてみればいい方に転ぶ可能だってありえる。
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