《我が家の床下で築くハーレム王國》第31話儀式より大切な事
儀式六日目。早朝に起きたハナティアの異変以降、彼の様子がおかしかった。儀式はしっかりと行うものの、この五日間より何度も休憩を取っており、その異変は明らかなものだった。
「おい、あまり無理するなよハナティア。朝からずっと顔悪いぞ」
「大丈夫……大丈夫だから」
そう言いながらも、やはり調子が悪いように見える。こんな調子で殘りも続けるなんてそんなの無理だ。見ているこちらも辛くなる。
「サクヤを呼ぼう。こんな非常事態で、儀式なんて続けられるわけ」
儀式を一時中止してもらうために、口へ向かう。こちから出られなくても、何かサインをすればきっと向こうも気づいてくれるだろう。
だがハナティアは俺が向かうのを阻止した。
「駄目、翔平。中止なんかしたら儀式の意味が」
「儀式なんかより大切なものがあるだろ! そんな調子で続けたら、神も加護もあるか」
「翔平……」
確かに神の加護も必要かもしれない。けど、それ以上に大切なものがある。俺が今選ぶべき選択は後者だ。ハナティアがこんなに辛い思いをしているのに、儀式を続けさせるなんてそんな事出來ない。
「お前に絶対無理だけはしないでもらいたいんだよ。だから分かってくれハナティア」
「……うん」
こうして一週間続くはずだった儀式は、ハナティアの異変により六日目の途中で中止することになったのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ハナティア様はさきほど眠りました。お醫者様はしばらくは安靜にしたほうがいいと」
「そうか。無事なら良かったよ」
その日の夜、ハナティアの部屋から出てきたサクヤに彼のことを尋ねると、そう返ってきた。
「翔平様はこれからいかがなさいますか?」
「今日はここに泊まってくよ。ハナティアが心配だし」
「そうですか。ありがとうございます」
二人で廊下を歩く。その足取りはやはり重い。
「儀式は言わば形だけのようなものなんです。昔は一週間もやらなかったらしいんですけど」
「じゃあどうして、一週間になったんだ? あの場所に一週間も居させるなんて、儀式とはいえ拷問みたいなもんだぞ」
「それが私にも詳しくは分からないんです。私が來た時には既にというじでして」
何がどうなって、一週間あそこで生活するようになったか分からないけど、あれは神的に辛い。特に子を授かったの方は一週間の合計二日以上あそこであれをやらなければならい。それを拷問と呼ばずして何と呼ぶ。
「それを姉ちゃんもやったのか……」
「柚様の事ですか? 思い出されたのですね、あの事故の事」
「全部ではないよ。でも知りたくなかった事の方が多かった」
「記憶というのはそういうものですよ」
「だったらどうして、雪音の事を教えてくれなかったんだ」
その問いにサクヤが足を止める。事故の事もそうだけど、まさか雪音も俺も同じ被害者だったなんてショックだった。それをいつか正志が知る事になると思うと、心が痛い。
それはずっと同じだった三人だからこそだ。
「雪音様の事は黙っていようと思いました。あなた達三人がすごく仲良さそうなところを見て、それを壊すのが怖かったんです」
「でもいつかは俺が思い出すって分かってたんだろ?」
「それを踏まえても、です。それを願ったのは何より雪音様自なのですから」
「雪音が?」
「雪音様が翔平様とハナティア様が一緒に家から出てきたところを遭遇した日がありましたよね」
「あったな、そういえば」
「実はその日、雪音様からこちらから連絡があったんです」
『お元気でしたか雪音様』
『はい。そちらも……ハナティアちゃんはお元気すか?』
『こちらもお様で』
「それまで連絡取っていなかったのか?」
「はい。あの事故以降連絡は取っていなかったんです」
「雪音も結構重癥だったのか?」
「お二人ほどではないと聞いていましたが、まさか同じ高校や大學に通っているとは思っていませんでしたけど」
でも同じ學校に通っている以上、彼も同等にしばらくは病院生活だったのだろう。そんな素振りを一度も見せなかったので、全く気づく事なんでできなかったけど。
『え? 翔平様にまだ話していないんですか』
『翔平君が記憶喪失だって聞いていたから、話したら混すると思いまして』
『でも雪音様だけの事は話してもよろしかったのでは?』
『壊したくないんです。私達の今のこの時間を』
『それが雪音様の幸せだからですか』
『はい』
「幸せ、か」
雪音らしい言葉だと思った。俺も何も知らなかったら、この幸せが続けばいいと思う。けど、その幸せもずっと続かない事も俺は知っている。それは多分雪音も正志も分かっている。
「だから私も黙っている事にしたんです。そして実際に會う事があったら、その時は初対面のように振舞ってほしいと」
「だから俺も違和をじなかったのか」
そんな會話している間に、俺の部屋に到著する。本當はもうし話を聞きたかったが、儀式の疲れもあったので俺はサクヤと別れてそのまま部屋へと戻る。
(あ、そうだ寢る前に……)
ベッドにったところで、攜帯を取り出して電話をかける。その相手は……。
『翔平君? どうしたんですか?』
「いや、ちょっと話がしたくてさ」
雪音だった。記憶の事とか、サクヤの話とか聞いて彼の聲が聞きたくなってしまった。
『明後日には大學に來るんですよね』
「ああ。明後日にはまた會えると思う。それでさ雪音、明後日大學が終わった後し時間あるか?』
『特に用事とかはないですけど。正志君はわないんですか?』
「いや、二人きりで話したい。その方が……お前も正志も楽だと思うから」
『え? それって……』
「詳しくは明後日話すよ。じゃあおやすみ」
『待ってください、翔平君』
何かを察せられる前に電話を切ろうとするが、ギリギリで呼び止められてしまう。
『私も……話がしたいです翔平君。ただし、一つ頼みがあります』
「なんだ」
『できれば……ハナティアちゃんも呼んでくれないでしょうか』
「……分かった。おやすみ」
『はい、おやすみなさい』
電話を切る。恐らく雪音は俺が何を話そうとしたのか察したのだろう。だからハナティアも呼んだ。もうを隠す必要がなくなったから。
(しずつ……変わり始めるんだな)
高校生の時はこんな事になるなんて思いもしなかったよ。
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