《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》5……國王陛下もかなり怒り狂っております。
「はいはい、落ち著きなさい。それよりも、子爵?こちらに先れも殿上すると使いもなく、乗り込んで、挨拶もなしかい?ここがどこか解って言っているのかな?ふーん、それだけ分が高かったかな?君は確か子爵だよね?」
端正なお人形のような貌にうっすらと笑みをはいたリスティルは、見る。
「それに、その裝コードはマナー違反じゃなかったかな?伯爵以上は飾りボタンは金、タイのは白。だよね?でも子爵は、飾りボタンは銀、タイはベージュだ。タイピンもマナー違反だ。そして、元の開いたドレスはダンスパーティなどで、午前中の裝には不適格。下品だね。最後に、デビュタント前のお子さまにその裝は著せてはいけないマナーになっている。三人揃って私に反逆?それとも、私の國王としての今までの采配などに、文句でも言いに來たのかな?じゃぁ伺おうか?」
「い、いえ!違います!陛下の忠実な家臣として……」
「忠実?君は自分のに忠実だろう?噓をつかないでしいね」
國王は一歩前に進み出る。
「私は、君の父のルイスを近衛として傍に置いていた。ルイスは職務にも忠実で、領地にも心を配っていたよ。でも、君はどうだい?領地は疲弊して人々は荒んでいたよ。こちらの屋敷にもメイドも庭師もいないそうだね?いたのは先代の執事で、現在は先代の言で孫娘であるマリアージュ嬢の養育を任されたアレッザール子爵サーシアス卿とその夫人でメイド頭であるイーフェどののみ、だよね?」
「そういえば陛下。本來は爵位を持たれている二人は、マリアージュ嬢がしないでと頼んでも、屋敷に多額のお金を貸していたそうです。その額を記載した書面をお預かりしております。ちなみに、マリアージュ嬢はえる寸前と過労で寢込んでおります。アレッザール子爵夫妻は共に過労に足腰を悪くし、しばらく靜養をされた方がいいとのことです」
「……ふーん、自分と変わらない爵位持ちの人間を顎で使い、金銭をむしりとっていたと?で、そのお金で豪遊?ラルディーン公爵?3人は?」
「サー・デュアンリールが、自ら守ると」
「デュアンリールが。それなら安心だね」
にっこり微笑む。
しかし、それが怖い。
「自分の子供が拐された?ちゃんちゃらおかしい!自分達が自分の地位にあぐらをかいて、幻の世界に浸っていたのではないか!」
「陛下!私は!」
「処分を言い渡す。そなたには爵位の何たるか全く理解できないと見える。このままではラミー子爵領の民が不幸になる。領地は國に返還。爵位を返上して貰う!」
「なっ!陛下!お願い致します!それは、それだけは!」
「そして、アレッザール子爵にラミー子爵領と地位を譲り、統治を命ずる。前アレッザール子爵には子息がいる。その子息は、長年辺境にて無位無で働き続けた。彼にアレッザール子爵の位を與え、後々ラミー子爵を譲ることとする。……だが、どちらも子爵というのも……ラミー子爵サーシアス卿の長年の功労を認め伯爵位にしよう。王太子、ラルディーン公爵。如何か?」
リスティルは二人を見る。
意見も問題もないと二人は頷く。
「と言うことだ。元ラミー子爵となったお前たちは、返済の為に家屋敷……あぁ、あの屋敷はラミー伯爵のもの。すぐに荷を纏め、アレッザール子爵の代わりに辺境に向かって貰おう。下がれ!」
「陛下!」
「お願い致します!」
「僕は、辺境なんて行けません!」
「ほぉ……私の命令に背くか?では牢に繋がれるが、どうかな?」
震え上がる3人に、ラルディーン公爵はねじり伏せるように、
「陛下の溫を無にしたいのか?すぐ戻り、辺境に數日中に下るがいい。アレッザール子爵が戻ってくれるだろう。誰か、逃げないように監視をしつつ送り出してくれ」
「はっ!では、元ラミー子爵どの。どうぞ」
「む、娘を拐されたんだ!」
悪あがきのようにんだ男に、ラルディーン公爵は、
「戸籍を確認した。お前には娘はいない。その瓜二つの息子がいるだろう。噓をつくな」
「そんな訳はない!マリアは……」
「確認すると8年前……先代が亡くなる前、孫の將來を悲観し、養に出したとなっている。安心するがいい。家族3人で仲良く暮らすがいい」
ラルディーン公爵の聲に押されるように、3人は連れ出されていったのだった。
周囲は、シーンと靜かになり、
「お兄ちゃん!お腹すいた!」
と無邪気にラディエルはしがみつき、
「ラディエルも?私もだよ。陛下。妃殿下がお待ちです。參りませんか?」
弟を抱き上げながら問いかける。
「そうだね。ラルディーン公爵も、詳しい話を詰めたいが構わないだろうか?」
「はっ!そして、一つお伝えしたいことがございます」
「解った。じゃぁ、著いてきなさい」
侍従に案され王宮の奧にっていく。
そして、食堂に6人は向かうと、待っていた王妃が迎える。
「お帰りなさい。どうでした?」
「琥珀ちゃーん!」
正妃ティアラーティアを溺する國王である。
正妃ティアラーティアは、17歳で結婚し、翌年王太子ティフィリエルを出産した。
夫であるリスティルとさほど変わらない外見だが、年の差婚である。
「陛下?」
「陛下じゃないもん!」
「もう、困ったわね。リー?どうしたの?」
抱きついてくる夫を見る。
「あのね?琥珀ちゃん。ラミー子爵の爵位を返上、領地も奪って辺境に送っちゃった」
「あら、良いじゃない。あ、マリアージュどのはどうなるの?」
「えっと、その事をどうしようかなぁって」
「あー、兄貴。ティアラ。その件で頼みがあるんだが……」
席につき、テーブルにお皿が置かれるなか、ミューゼリックが口を開く。
「兄貴……と言うか、陛下。マリアージュを私達の娘にしたいのですが、お許し頂けませんか?」
「えっ?でも、ミューの家は、特にデュアンリールがダメじゃないの?」
「いや、デュアンが妹にしてしいって……可がるからもう一度お兄ちゃんになりたいって言い出したんだ。デュアンとマリアは何度か會っていて、仲が良いんだ。昨日からご飯に、何だと面倒を見ていたから……それに、路頭に迷わせたくないと思うんだ……」
「ミュー……」
ミューゼリックと妻のアリアは婚約直前に引き離され、ミューゼリックは必死に5年間も行方を探し続けた。
運命の悪戯というよりも……運が悪かったのだが……ようやく見つかったアリアと即籍をれ、すぐに生まれたデュアンリールを溺した。
即と言っても籍をれるには、當時の國の勢があり、時間がかかったのだが、その間にアリアは妊娠した。
ミューゼリックもアリアも、それにミューゼリックの兄弟や家族はその理由を知っているのだが、籍挙式直後に生まれたデュアンリールを不思議がる者もいた。
それを歪んだ解釈に発展させたのが、デュアンリールの弟妹たちだった。
「デュアンがどうしても妹にしたいって言うもんだから、頼みに來たんだ」
「……うーん、可がるならいいよ?」
「それは當たり前だ!可がるさ!ありがとう、兄貴!しばらく靜養させて、そして、その間に調子がよければレビュタントに間に合うようにと思ってる。來年でもいいだろうが、早めに私の娘として紹介したいと思って」
「それは良いわね。おじさま。エスコートはデュアンリール?」
「だな。本當に可がっているから、他は嫌がるだろう」
ミューゼリックは答える。
「でも、ミュー。ミューの娘と言うことは、ミューの財産目當てで近づく馬鹿もいると思うんだけどね~?」
「まぁ……そうだが、まだ14だし、アリアも喜んでいたしなぁ……」
「あら、お父様」
「良いことがあるわ」
「なぁに?マシェリナ、ミシェリア?」
促した國王の娘たちは弾を投下する。
「お父様。お兄様の正妃になされば?実の親のことは隠して、今のレミー伯爵の遠縁で養に貰った娘ですって」
「そうよね。お兄様もいい加減を固めたらいいのよ」
「……はぁ!何で突然私が!」
「ねぇ?お父様も充分、曾孫や玄孫やしゃごもいてもおかしくないんだから」
「お母様にはそんな曾孫や玄孫は困ると思うけれど、お兄様にお嫁さん、憧れでしょう?」
娘たちの一言に、
「ひ、ひどーい!と、父様が、年寄りだって言いたいの?琥珀ちゃーん!子供たちが!」
「リーに曾孫に玄孫は良いけれど、ティフィリエルにお嫁さんは憧れだわ……それに、可かったもの。良いわねぇ」
「母上!」
ティフィリエルは聲をかけるが、母と妹二人の聲に諦める。
基本には逆らわない方がいいのである。
「……えっと、叔父上、あれは本當じゃないので気にされず、普通の娘さんとして可がってあげて下さい」
ため息をついたのだった。
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