《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》34……華やかな使者
ティフィの暗殺未遂事件はほぼ外部にれることはなく王宮の一部で収められたが、王弟ミューゼリックたちにはすぐ駆けつけた。
ちなみに、大騒ぎにはなってはいけないとデュアンはヒナと母と殘り、ミューゼリックは娘を抱いて姿を見せる。
「失禮する」
リティは父親にしがみつき、完全に背中を向けている。
「泣くな、リティ……」
ひっく、ひっく……
しゃくりあげる娘の背中をトントンと叩いて近づく姿に、ティフィは驚く。
「えっ?どうしたんです?兄さんと喧嘩はありえないでしょう?」
「喧嘩は全くない。ちなみにヒナともな」
「じゃぁ、何で?」
「怖かったんだよな……リティ」
優しく聲をかけると、リティは泣きじゃくる。
「お、お姉さん……ワゴン押してた。橫通ったの……あのお姉さんが……?ティフィお兄ちゃんに、ど、毒……」
「ほら、大丈夫だ。泣くなリティ。ティフィは大丈夫だから……」
ソファの空いている席に座る。
「本當に、何ともなくて良かったな。ティフィ」
「アルトゥールが気がついてくれたので……」
「言うか、この王宮であのでがらしみたいな濃いのお茶は出さないだろう?と言うか、お前が置きっぱなしだったお茶ですらまだ明るいだったぞ」
アルトゥールはさき毆られた頭をでつつ答える。
「クッキーは味いのに、あのお茶はないよな〜」
「クッキー……?」
「そう。いくつか戴きました。味かった」
「ヒナちゃんが『パパと食べるのです』って、お部屋に……」
「大丈夫!食べられる!」
自信満々に答える。
可い娘が自分の為に作ってくれたクッキーである。
食べなくてどうする!
アルトゥールは妻家で子煩悩である。
「リティも食べるか?」
「えっと……お腹いっぱいなのです。それに、ティフィお兄ちゃんは……?」
「た、食べてるよ?味しいね?それに食べやすい大きさで」
「本當ですか?良かったです」
父親に涙を拭いてもらい、えへへと笑う。
「皆と頑張って作ったのです。味見していたら、食べ過ぎちゃいました」
「へぇ、どれくらい作ったんだ?」
「えっと、リー伯父さまとティアラお姉さまと、パパとママとデュアンお兄ちゃん、じいやとばあやとクレスお兄ちゃんたちに、あ、ロビンソン伯父さまのところにも」
「ロビンソン近衛副隊長?」
名前が出てくるとは思わなかった2人は驚くが、ミューゼリックが、
「ロビンソン、リティを可がってて、餌付けされてるんだ」
「あのおっちゃんが……」
アルトゥールは遠い目をする。
近衛……こちらでは國王一家の警備を中心に擔當する。
隊長であるデュアンは、國王の甥ではあるが名譽職ではない。
それだけの実力と手腕を持っていたのだ。
今は部下の反逆の為、謹慎と言う名目で靜養中ではあるが……。
デュアンの部下であり、デュアンがラルディーン公爵の息子として外などで抜ける際には、隊長代理としてくロビンソンは、いかついヒゲオヤジなのだが……。
「伯父さまがお兄ちゃんのお見舞いに來て下さったのです。そうしたら、リティにもリボンを下さったのです。それに、本とかも」
嬉しそうに、髪に結んだリボンを示す。
「今日はお兄ちゃんに結んで貰って、ロビンソン伯父さまのところに行ったんです。喜んでくれて良かったです。でも……パパ。伯父さまにはいっぱい貰っているのに、クッキーで良かったですか?」
「喜んでただろ?ロビンソンはあれでも甘黨だ。お茶の時間に嬉しそうに食べてるだろうな」
「そうだったんですか。良かったです。お兄ちゃんがクッキーを選ぶ時に、ティフィお兄ちゃんの方にはシンプルなものを多くれた方がいいけれど、ロビンソン伯父さまの方には、チョコチップとかが良いって言ってました」
「デュアンも甘黨で、2人で時々甘いもの食べているらしい。ティフィもクッキーを食べる位大丈夫だが、デュアンたちの食べっぷりは凄いから、引いてるらしいぞ」
「あ、お兄ちゃん、今日もクッキーにジャム」
それを聞いたアルトゥールとティフィはやけしそうになる。
ちなみに、アルトゥールは普通の味覚だが、デュアンはあの型からは想像つかない甘黨である。
お酒はほとんど嗜まない代わりに、お菓子はよく食べる。
その種類は幅広く、自分でも作る。
「そう言えば、兄ちゃん、デュアンの食べっぷりに引いてたなぁ……」
「デュアンは好き嫌いがないからな。リティも」
「味しいものは味しいって食べます。食べられるだけありがたいのです。ありがとうございますっていうのです」
「でもあの量で、大丈夫か?」
アルトゥールの問いかけに、リティは、
「前よりしは増えたのです。でも、すぐにお腹いっぱいになるのです」
「そうなのか。いや、調が悪くなければいいんだ。うちの兄は食べられないものが多くて、それで苦労してるから、それもあるのかと心配だったんだ」
「アルトゥールお兄ちゃんのお兄さんですか?」
「そう。質で食べられないんだ。食べると疹とか、寢込むことも多いから」
「大変ですね……」
心底そう思うと言いたげに、心配そうな顔になる。
「そうなんだ。で、甘いものもダメで、辛いものもダメ、ほとんどのお茶も飲めない。全部刺激になるんだ。で、一応甘くて食べられるのはチェナベリー位かな」
「そうなのですか……」
「好き嫌い以前に質だから、可哀想だよ。無理して口にしたら本當に半月は寢込むから。しかも薬も過剰反応して悪化するから」
「本當に大変です!」
リティは顔を変える。
すると、扉がノックされ、
「失禮いたします、殿下。お客様をお連れいたしました」
クレスの聲である。
「お客様……」
「構わない」
ティフィの聲に、扉が開きクレスと共に1組の男がってくる。
「げっ!」
その姿に腰を浮かせようとしたアルトゥールに、ドレス姿の金髪のがにっこり微笑む。
「……アルトゥール?今、何とおっしゃられたのかしら?」
「いいえ、いいえ!相変わらずおしいと言いました!」
「當たり前でしょう」
扇を広げ、コロコロと笑う。
「私ほどしい人間は、あまりいなくてよ。そして、お久しぶりにございます。王太子殿下ティフィリエル様、ラルディーン公爵閣下。そしてファティ・リティ様」
優雅にお辭儀をする姿に、ミューゼリックは、
「あぁ、久しぶりだ。いつにも増してローズ嬢は華やかでしいな」
「ありがとうございます。お世辭でも嬉しゅうございますわ」
「いやいや。本気だぞ」
と言いながら、娘を見る。
「リティ。この方々はシェールドの騎士で、こちらがレイル・マルムスティーン侯爵。後ろの方が、サー・カイ・レウェリン。2人とも、シェールド國王陛下の懐刀」
「初めまして、ファティ・リティと申します。えと、ローズ様とカイ様、よろしくお願い致します」
父に抱っこされたままだが丁寧に頭を下げる。
「どうしましょう!こんな可いレディにお會いできるなんて!」
「先輩……その格好ではやめましょう」
「だって、カイ!あぁぁ、ドレスに裝飾に……一式をお姉さまたちにお願いして……あぁぁ、ラルディーン公爵、連れて帰っても構いませんこと?」
「ダメだ。そういうと思ったから、この狀態だ。リティはやらん」
「うちの子の嫁に……」
「やらんと言うのに」
ローズと父にオロオロとするが、アルトゥールは、
「また暴走が始まった……これさえなけりゃまともなのに……」
とぼやき、ティフィもわずかに視線を逸らし、
「カイ先輩。こちらにどうぞ……ローズ嬢も」
「ありがとうございます。先輩、いきますよ」
カイはいつも通りと言わんばかりに、ローズを抱え上げソファに座らせ、その橫に座る。
「きゃぁぁ!カイ!貴方、何するのよ!」
「先輩。公私は分けましょうね。今はその姿でも公で來ているんですからね」
「分かっているわよ。失禮しちゃうわ!」
「分かってますか?先輩大暴走してましたよ」
「……可い子をでるのに、文句は言わせないわ!」
「先輩?その姿で拳を握り締めると変ですよ?」
のんびりとした口調で、長いプラチナブロンドのワンレングスの髪をかきあげる。
下ろしたままの髪が揺れ、端正な顔が見える。
アイスブルーの瞳に優しげに微笑むがどことなく憂げな表、その表がますますしさを増すのだが……長い髪で普段は隠しているが、かきあげる仕草や、儀式などで顔を曬すと男問わず魂を抜かれた様に呆然とするらしい。
「本當に……どうして先輩は、そう、綺麗なものに弱いんでしょうね」
ちらっと隣を見るカイに、ミューゼリックは、
「……お前は本気で鈍だよな」
「は?」
「いや、こっちの話だ」
と呟いたのだった。
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