《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》45……國王陛下と一巻きのリボン
デュアンは婚約者親子の帰還を殘念がる。
「ヒナ姫……又ね。二月後には行くからね?」
「お兄様は、騎士の大祭ですもの。ヒナはリティお姉様と遊ぶのが楽しみなのです」
「えぇぇ〜!ヒナ姫……僕だって、僕だって……」
「リティお姉様。一緒に金の森に行きましょうね」
「うわーん。リティと姫が仲良しなのは嬉しいけど、複雑……」
デュアンが肩を落とすのを、リティとヒナは顔を見合わせて笑う。
「ヒナちゃん。今度、お兄ちゃんとパパとママと一緒に行きますね」
「じゃぁ、セリお兄ちゃんは、お姉様の騎士として帰って來てね?」
「こーらー?ヒナ?軽々しくそう言うことは言うんじゃない」
アルトゥールはおませな娘にめっとする。
リティの騎士・・……つまり、特別な存在として一緒に帰って來てしい。
何なら婚約者としてでもいいと言うことである。
それはダメだろう……アルトゥールは思う。
それでなくても、セリはカズール伯爵の蔵っ子である。
そして、ヒナの遊び相手でもあった子供たちに聲をかける。
「クレス兄ちゃんところの、ノエルとリラとベルも、遊びに來ると良い。暇なじいちゃん、ばあちゃんや俺の兄ちゃんが來るから」
「暇な兄って誰のこと〜?」
背後から気漂う獨特の聲に、アルトゥールは振り返る。
「うわぁ!兄ちゃん!何で來たの!」
ワタワタ慌てるアルトゥールの背後から姿を見せたのは、蒼い……溟海うみの、空の、夜の、朝焼けに変化して行く寸前の……世界の時のを髪に寫し取ったかのような、蒼の王……。
瞳は宵闇にけむるで、は白く、顔立ちは整っている……。
長い睫を伏せ、ため息をついた絶世の貌の王は、
「……帰ってこないから、心配で……ずっと、俺がお前を束縛しているのかと……思って……蒼記あおきには、いい加減大人なんだから放置しろって……でも……喧嘩して、もう蒼記の馬鹿!しばらく口聞かない!って言って來た」
「はぁぁ?兄ちゃん!幾つだよ〜!蒼記兄ちゃんに馬鹿って……うわぁぁ、やばいな。それ、絶対効くよなぁ……」
「えぇ、効くわぁ……大丈夫かしら」
アルトゥールの橫でローズ様が遠い目をする。
「お久しぶりです。へ……アイド兄さん」
デュアンは聲をかける。
その時には妹を抱き寄せている……でないと、セリと取り合いになるからである。
振り返った青年は、くなったデュアンに目を見開き、ため息をつく。
「デュアン……無事で良かった。それと、俺と姿、取り替えない?羨ましい……この姿じゃなければ気軽に出歩けるのに……」
憂げに俯く様は、魔(?)ローズ様が我を忘れ、悶えするほどしい。
「ダメ!兄ちゃんは、馬鹿親父のようにフラフラしちゃダメ!」
「違うよ。陛下みたいに失蹤じゃなくて、今回のように何かあった時に、すぐに駆けつけられたらと思って……この顔とこの……変えられないかなぁ……」
「ダメ!兄ちゃんは、俺の兄ちゃん!姿変えたりしなくていいの!」
「何言ってんの!幸矢こうやは僕のだよ!全く。油斷も隙もない!」
背後から人外の貌の主を抱きしめる腕。
「ほら〜!お馬鹿は大丈夫だったでしょ?幸矢、のぞみは置いて行くよ。大丈夫。殺しても死なないよ」
「何だってぇ!蒼記兄ちゃんのボケ〜!兄ちゃん獨占止法〜!」
「うるさいよ。文句聞かない。ほらあっち行け!」
「こら、蒼記、!喧嘩しない!」
「アルドリー。甘い!こう言うのにはこうすればいいんだよ!はい、ミュー容赦無くやって!」
その聲に、拳が振り下ろされる。
「イタタタ……」
「本気で毆った〜!」
2人はく。
「うるさいぞ。アルトゥールだけじゃなくアーサーもでかい図、邪魔だ邪魔!」
「あ、すみません。ミュー兄さん」
「アルドリー。馬鹿は馬鹿だぞ?容赦無くしつけてよし!おやつは與えすぎないこと。締め付けすぎもダメだが、手綱はちゃんと握っとけ」
「ミュー兄さん!僕はナムグじゃないよ!」
アーサーは訴える。
「違ってたのか?今、うちで育てているミカとイザの子供たちでも、もっときちんと言うこと聞くぞ?特にリティのブルーローズは二対ある翼でヘタレないように、毎日プールで泳いでいるぞ。な?リティ?」
「は、はい。ブルーローズは、前はずっと寢てましたけど、最近しずつ遊ぶようになりました。翼パタパタします」
「へぇ……翼パタパタ出來るんだ。お話は?」
「出來ます。とってもお利口なんです。さっきも練習していて、お晝寢中です」
リティはちなみに、貌の人を見て、夢みたいと舞い上がっていたりする。
アルドリーは目を細め、微笑む。
數えるのも馬鹿らしい程、同異の心をタラし込んだ微笑みである。
「そうなんだね……ブルーローズだっけ?頑張ってるね。それに、柘榴姫ざくろひめ。大きくなったね」
「えっ……」
「リティ……シェールドの國王アルドリー三世陛下。アルトゥールの兄上だ。その後ろにくっついているのが、陛下の雙子の弟、アーサー殿下。全く似てない雙子陛下だ。リティが一回リボンを作りに行った時に連れて行ってくれたのが、陛下だよ」
父のミューゼリックの言葉に、目を見開き、慌てて頭を下げる。
「も、申し訳ございません。陛下。ファティ……」
「しっ……言わないで」
アルドリーの聲が響く。
「君の名前は竜族の名付けた神聖な名前。私がその名前を呼びかけると、竜族に怒られるからね。俺は、じい様が名付けた柘榴姫って呼ぶから……ゴメンね?」
「いいえ、あの。陛下……」
「幸矢で良いよ?アルドリーは呼びかけられても、返答しにくいからね」
「返答しにくい……ですか?」
「そう。アルドリーって言うのは、俺の本當の名前であって名前じゃないんだ。俺の本質……俺自は、グランディアの幸矢が近いと思ってる。アルドリーは表層……形式上の名前で、俺は幸矢。こちらに來た時の仮の名前がアイドなんだよ」
リティは考え込むが、呟く。
「えっと……リティも一緒で、昔はマリアージュって呼ばれてて、でも、お母さんに本當の名前があるって言われて、もう1つの名前が柘榴姫……みたいなのですか?」
「正解。柘榴姫は賢いね。あ、そうそう。これ、兄さんに頼まれたんだ。これは仮のものだから、正式には後日贈らせて貰うよ」
「えっ……」
白い布とブルーのリボンに包まれたを差し出されけ取る。
そして、戸いつつリボンを外し、中を丁寧に開けると、目を見開く。
「お、おじいちゃんのリボン……!」
「これはね?柘榴の花と実のモチーフのリボンだよ。それに、ラミー子爵の紋章だった幻の鳥ユースも織られている。とても貴重な特別なリボンだね。ルイス様が柘榴姫にした大切な寶の1つだよ」
「……ありがとうございます。幸矢さま。大切にします」
「そうだね。それに、これを言うと君のお父さんは怒ると思うけれど、二月後のシェールドの大祭では、怨恨を殘さないことと、騎士の総帥カズール家の領地の名産品であるリボンが戦いの勝者に贈られているよ。その中でも最初の試合と最後の日のリボンは特別でね?そのリボンをけ取ると……」
「こら!言うな!アルドリー!リティ!聞くんじゃないぞ?いいな?」
ミューゼリックが割り込む。
アルドリーは微笑み、
「ミュー兄さん?子供はいつかは手から離れるんだよ?グランディアでは風の鳥って言う位だからね?飛んで行っちゃうよ?」
「離すか〜!うちの子はどこにもやらん!」
「あーあ、兄さんは変わらないね」
リティの頭をでたアルドリーは、もう一度リティを見る。
「じゃぁ、二月後、會えるのを楽しみにしているよ?それじゃぁ、ヒナ?パパと帰ろうか?」
「うんっ!抱っこ〜」
抱っこをせがまれ抱き上げると、アルドリーはヒナと共に手を振り、
「ほら、蒼記、、カイ兄さん帰るよ?そして、ローズ姉さんとセリ。任務を、いいね?」
「はい、分かっておりますわ」
「かしこまりました。陛下」
2人はそれぞれ頭を下げて、そしてリティたちも手を振り一行を見送った。
「パパ!リボンです!嬉しい!」
リティは父親に飛びつく。
「綺麗!どうしましょう。ママに見て貰うのです。それとも、ママに……」
「そのリボンは、本當に特別な人にあげなさい。いいね?」
「パパとママとお兄ちゃんは特別じゃないの?」
「うーんとそうだなぁ……パパとママとデュアンには構わない。他の人にあげる時には、よく考えて……」
「んーと、リーおじさまとお姉ちゃん……」
考える無邪気な娘を抱き上げながら繰り返す。
「こーら、よく考えなさいと言っただろう?簡単にあげてはいけないんだよ?いいね?特に、そこのティフィやセリにはあげないこと!」
「えー?パパ。ダメ?」
「ダメ!このリボンは本當に國寶級の価値があるんだ。これ1つで、この間のパーティを開くことができる」
「……パーティ……って、パパ」
「デビュタントだよ。分かるか?シェールドのリボンは本當に特別ななんだ。一巻きポンっと下さるなんて普通はないことなんだよ。いいね?」
父親の言葉に青くなり、リティは頷いたのだった。
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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