《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》58……目を覚ませば再び異空間?
ムニムニ……。
ふかふかのベッドに、ルーズリアは常春の國と言われて、暖かく、年中花が咲きれる。
いつもふわふわと花の香りが漂う。
しかし、
「うにゃ……」
目をこすりながらを起こすと、家や王宮の部屋とも違う……。
「マ、ママ……?セリお兄ちゃん……?」
起き上がった場所は何故かひんやりとしていて、そして、
「キャァァ!」
目の前の蒼い巨大な石……巖と言うべきか……明ではないものの深淵の青……そして、ラピスラズリのように金や時々白い部分が出ているわけではなく、蒼く、ただ天の川のように銀が散っている。
だが驚いたのは、その形は、兄のデュアンリールが図鑑で教えてくれた、ドラゴンの形。
しかし、いびつに崩れている部分もある。
そしてその前に、虹の卵が祭壇の上にクッションを下に敷いて置かれていた。
卵は大きい。
リティの頭よりも大きいはずである。
周囲を見回して、誰もいないことを寂しく思いながら恐る恐る卵に近づく。
すると、聲が響いた。
『そなたが我が子の守り手か』
キョロキョロとするが、誰もおらず、卵とそして、巖を見る。
「えっと、ル、ルーズリア王國のラルディーン公爵ミューゼリックの娘ファティ・リティと言います」
『ファティ・リティ。良い名だな。私は、約2000年前に死んだドラゴン。この建は私の力がれるのを防ぐことと、そのねぼすけを守るために作られた』
「ねぼすけちゃん……」
『そうだ。私は妻との間に二つの卵が生まれた。一つは孵化したが、これは眠り続けている。そろそろ起きろと言いたいのだが、守り手がいなかった。ようやく見つかった。よろしく頼む』
「あの……た、確か、パパやお兄ちゃんが、シェールドにはドラゴンがいて、そのドラゴンは他國に居られないと……」
リティは問いかける。
『他のドラゴンなら、溟海(うみ)も渡るのに苦心するが、ホワイトドラゴンと我らブルードラゴンならば何のことはない』
「でも、ルーズリアに住むことは……」
『それは出來ぬ。もし、ルーズリアにねぼすけを連れていくと、さほどせず戦場となるだろう。ドラゴンについてありもしない力を持つと噂が流れ、ねぼすけも、そなたも傷つく』
「で、でも、パパやママがいるのです。デュアンお兄ちゃんも。リティをいい子だって可いって言ってくれたのは、頭をでてくれたり、抱っこしてくれるのはパパ達……」
『……ねぼすけには母はいない。父は我だが、もう、時はない。兄はいるが家族や守る者達で手一杯……頼む。この子を……ここから出してくれ……広い世界を見せてくれ。もう父にしがみつく年ではないと……』
淡々としているようで、懇願し、リティに訴える。
『お願いだ。もう時間はない。この子を抱いてあちらの扉から出てしい』
「扉……」
何もないと思っていた空間に扉が見えた。
『頼む……私はエーレンフリート。無理矢理連れてきたことは謝ろう。ファティ・リティ……どうか、その子を頼む。すぐに出て行ってしい。もう……』
躊躇ったものの、必死の聲に、
「エーレンフリートさま。分かりました。連れて行きます」
大きい卵を抱きかかえ、大きな巖の顔を見つめる。
「エーレンフリート様に祝福がありますように……」
『ありがとう……ファティ・リティ、そなたと、ねぼすけの前途が明るいことを……行きなさい』
「はい」
ファティ・リティは言われた扉に近づき、扉を開け出て行った。
扉が閉まることをじた巖……石と化した元ドラゴンは、
『我が子と竜の守り手となる異國の姫に祝福を、幸福であれ……』
と呟くと、意識が途切れるとともに、巖が崩れ落ちたのだった。
扉を出ると、リティは見たこともない空間に、
「どうしよう……ここはどこ?」
と立ちすくむ。
目の前には大きな廊下に、両側には部屋がある。
誰かの住まいだろうか?
すると、扉が突然開き、
「何があった?気配が!」
出てきたのは、前に會った、絶世の貌の王アルドリーとその弟のアルトゥール。
しかし直するリティに、キョトンとし、
「あれ?柘榴姫……」
「リティどうしたんだ?こんなところに……」
「話を聞くよりも、まずは中にってもらおう。おいで、柘榴姫。カイ兄さんもいるよ?」
とアルドリーに抱き上げられ、室にる。
一応、アルドリー達の行にそれぞれ配置につこうとしていた騎士達は、あっけにとられ、
「誰だ?あの子は……」
「見たことない……」
と呟くが、カイが、
「あ、リティ姫!」
「カイお兄ちゃん。お、おはようございます」
「おはようございます。リティ姫はお利口だねぇ?でも、セリは?それか側に誰か……」
アルドリーの問いかけに、首を振る。
「目が覚めたら、大きな青い石のあるお部屋にいて……。聲がして、この卵ちゃんの守り手って、言われたのです。この子を連れて部屋を出て行きなさいって……」
言葉もなく、一旦戻ってきていたヴァーソロミューが部屋を出て行き、アーサーもついていく。
アルドリーは、リティをソファに座らせると、ブランケットでを覆い、
「寒かったでしょう?柘榴姫。カイ兄さん。ハーブティを。そして、お菓子をお願い」
「はい」
カイは、息子の年齢の青年とともに、別室にり、戻ってくる。
「リティ姫。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「あ、紹介するよ。お菓子を持って來たのは、ラファの一つ上の馴染で、セドリシア、セナだよ。セナはカズールの分家の跡取り。お父さんがあそこで寢てるリオン兄さん」
「すみません。病弱で……ストレスで逆流食道炎に」
セナは頭を下げる。
「普段は良いのですが、今回は大叔父が外遊とのことで、叔父のフィア兄さんに任せると何かが起こると……」
「一応父さんは破壊魔だけどやるときはやるよ?大丈夫だよ。それより、その卵」
「エ、エーレンフリートさまが、ねぼすけを連れて言ってくれと……無理やり連れて來て悪かったと言ってました」
「エーレンフリート……」
アルドリーは呟く。
そして何かの言葉を紡ぐ。
「柘榴姫。その竜王の名前は忌み名。もう口にしてはいけないよ」
「忌み名……悪い言葉ですか?」
「違う。竜族の真実の名は軽々しく呼んではいけないんだよ。竜族は本當に大きい上に強い力を持つ。だから、貧弱な人間が名前を呼び捨てにしたり、簡単に口にしては特にレッドドラゴンなんて激怒して火を噴くよ。プライドが高いだけでなく戦闘能力も高いからね」
「分かりました。あの、えと、幸矢(コウヤ)さま。この子どうしたらいいですか?」
虹の卵を差し出す。
「ん?お休みしてるんじゃないの?」
「いいえ、中でいてるのです。グルングルン……時々、ほら、蹴ってる」
卵がき、その瞬間、ペリペリっとかすかに割れる音がした。
「えっと、今割れたところを、トントンって叩いてみて。啐啄(そったく)って言って、親がここにいるからって知らせるの。柘榴姫、中の赤ん坊を傷つけたらいけないから、外からは手を出せない。あ、ヴァーロ!」
青ざめた顔で戻って來たヴァーソロミューは、
「父の巖が砕け、中は砂煙です……」
「ちょうどよかった。ヴァーロ。卵が中から殻を壊しているんだ」
「は?全くきもしなかったねぼすけが?」
その言葉に、パリン、とかけらが落ち、中から何故か左後ろ足が出て來た。
そうすると、左右に抜けないと言いたげに足を振り回す。
「足が出て來た……。普通顔だよね」
ヴァーソロミューは呟く。
すると拗ねたのか、ドンドンと殻を叩き、次は右後ろ足が出る。
卵に両足……の奇妙な姿に、周囲はぶっと噴き出す。
「おーい、ねぼすけ。顔を出しなさい。殻全部壊して。不格好だよ」
その言葉に、ドーンという音とともに、目の閉じたままの頭が出てくる。
『うゆしゃい!にーた、パパよりうゆしゃい!』
目はまだ開いていないが、したったらずの思念が聞こえる。
『ねぼしゅけ、ちあうもん!にーたきあい!』
「えっと、手とが出ていないから、殻をのけましょうね」
これ以上は本人の力では無理と、リティは殻を取っていく。
すると、家にいるナムグの赤ん坊よりもプリプリとしたおに長い尾、小さい翼を持った、ずぶ濡れの生きが現れた。
ブランケットやタオルで濡れたを拭き、それが何故か真っ白の玉になった。
「ブルードラゴンの子供は生まれた時には純白のなんだよ。他のドラゴンは漆黒だけどね」
「そうなんですか……」
『ママ!おにゃまえ!おにゃまえ』
せがむ竜の子に、
「えっと、男の子ですか?の子ですか?」
「だと思うよ。オーラが違うから」
「……じゃぁクレスツェンツはどうでしょう」
「……それは素敵だね」
アルドリーは微笑んだのだった。
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