《家庭訪問はのはじまり【完】》第36話 料理教室
今日のメインはハンバーグ。
初めて瀬崎さんのお宅で晩飯をいただいた時に、とても味しかったから、私からリクエストした。
「まずは、米を研ごう」
「えっ?」
驚いた私が瀬崎さんを見上げると、瀬崎さんはおかしそうに笑った。
「夕凪、まさか、晝飯にハンバーグだけを食べる訳じゃないだろ?
ご飯ととサラダ位は必要だろ」
「あ、そうか」
恥ずかしい。
そんな常識的な事に気付かないなんて。
いかに今までいい加減な食生活だったかが分かってしまう。
だけど、瀬崎さんはそれにはれる事なく、晝食の準備を進めていく。
米を研いだら、ベーコンと刻んだ野菜を炒めて、コンソメスープの準備。
それから、玉ねぎをみじん切りにしてハンバーグの準備なんだけど、みじん切りがうまく出來ない。
見かねた瀬崎さんが後ろから手を添えて切ってくれるんだけど、それがまた余計にドキドキしてしまって包丁をうまく使えなくなってしまう。
なんとか切り終えて、玉ねぎを炒めて、熱を取り、ようやくハンバーグの準備にる。
空気抜きも、瀬崎さんのようにリズムよくは出來なくて、でも「空気さえ抜ければゆっくりでも大丈夫」って言ってくれて、だからあまり上手ではないけど、なんとかハンバーグの形を作り、焼く事が出來た。
たかがハンバーグ、されどハンバーグ。
私は1時間以上かけて、ようやく晝食の用意を終え、瀬崎さんとダイニングテーブルの席に著いたのは、すでに1時半になろうとする頃だった。
「いただきます」
2人で聲を揃えて、手を合わせて食べ始める。
「うん、おいしい」
瀬崎さんに言われて嬉しくなる。
「ふふっ
ほんとだ。
私史上、1番おいしいお料理かも」
「くくっ
そうなのか?
じゃあ、これから、夕凪史上最高をどんどん更新していかないとな」
瀬崎さんが笑う。
「ええ!?
ハンバーグだけでも大変だったのに。
出來るかなぁ」
「出來るよ。
誰が教えてると思ってるんだ?
手取り足取り、親切丁寧に教えてやるよ」
「ええ!?」
その言い方、なんだか卑猥な響きをじるのは、私だけかなぁ。
「でも、いいの?
あ、授業料は?  材料費も」
そうだ。
私は今頃、お金の事に気付いた。
夏に冷製パスタを作ってもらった時も、私はお金を払ってない。
いくら払えばいいんだろう。
「そんなの、もう貰ったよ」
「えっ?」
払ってないよ?
「授業料は夕凪。
今日は、夕凪にずっと會いたかったから、ちょっと貰いすぎたかも。
ごめんな、抑えが効かない大人で」
それって、さっきの…?
「くくっ
夕凪、顔、赤いよ。
ごめん、思い出させちゃった?」
噓!?
もう、なんですぐに顔に出ちゃうの?
恥ずかしい。
「やだ。見ないで」
私は、すぐに顔を手で覆った。
「なんで?
こんなにかわいいのに、見ないでいるなんて、無理だよ」
「もうやめて。
私、瀬崎さんにそんな風に言ってもらえる程、かわいくないよ」
「夕凪は、自分の魅力を知らなさすぎなんだよ。
そう言えば、學年主任さんはどうしてる?
また言い寄られたりしてない?」
ああ、武先生…
「あれから何度かお食事にはっていただいたんだけど、どうすればいいのか分からなくて、言い訳して逃げ回ってるの。
ちゃんとお斷りした方がいいとは思うんだけど、學校で仕事中に言うのもよくないと思うし、かといってプライベートで會うのは、なんだか怖い気もして…
どうすればいいと思う?」
あ、でも、他の男の人の事を瀬崎さんに相談するのは、デリカシーに欠けるよね?
「ごめん。
なんでもない。忘れて」
「なんで?
夕凪が他の男に言い寄られてるのに、忘れるなんて出來ないよ。
夕凪、そういう事はいつでも相談して。
大して力にはなれないかもしれないけど、
夕凪が困ってる事は知っておきたい」
瀬崎さん…
「ありがとう。
でも、これは私がちゃんとしなきゃいけない問題だから」
「だけど、半分は俺のせいだろ?
俺が正々堂々と付き合える相手だったら、斷るのも簡単だし、俺が一緒に行って話をつける事もできる。
俺が嘉人の父親であるばかりに夕凪に迷をかけてごめんな」
瀬崎さんは、申し訳なさそうに頭を下げる。
「そんなの、瀬崎さんのせいじゃないよ。
武先生と付き合う事だってできるのに、そうしたくないと思ってるのは、私なんだから」
「夕凪、嬉しいよ。
今の言葉だけで、春まで頑張れそうな気がする」
あれ?
私、なんか特別な事、言った?
私がキョトンとしていると、瀬崎さんが説明をしてくれた。
「夕凪は、武先生と付き合う事もできるけど、したくないって思ってくれてるんだよね?
2人での食事も斷ってくれてる。
でも、俺とは付き合ってないけど、こうやって會ってくれる。
  俺は特別って事だろ?」
あ…
私、もしかして瀬崎さんが好きって匂わせるような事言ったの?
どうしよう。
恥ずかしい。
私は瀬崎さんから視線を外して、黙々と食べる。
「夕凪。
これは、俺が勝手に思ってる事なんだけど、もし夕凪さえOKしてくれるなら、春に夕凪が嘉人の擔任を外れたら、6月に結婚しないか?」
えっ?
私は、思わず顔を上げて瀬崎さんを見た。
「もちろん、これは俺の勝手な希だから、夕凪が結婚はまだしたくないって思うなら、斷ってくれて構わないし、返事も春になってからで構わない。
ただ、頭の片隅に俺がそう思ってるって覚えておいてくれれば、それでいいんだ」
これって、プロポーズ?
付き合ってもいないのに?
しかも春まで放置して6月って、準備期間が短すぎない?
「あの…
私、まだ、付き合うかどうかのお返事もしてないんだけど… 」
「くくっ
だよな。
俺、焦りすぎだな。
でも、俺の思いはそれくらい真剣だってこと、覚えておいて」
「なんで?」
「え?」
「なんで私なの?
そんな風に思ってもらえるほど、いいところなんてないのに。
料理だって出來ないし、掃除だって出來なくて、結婚なんかしたら、絶対、失敗したって思うに決まってるよ?」
「夕凪、何、言ってるんだ?
料理や掃除をしてほしいなら、家政婦を雇うよ。
俺は家事をしてほしい訳じゃない。
夕凪を好きになったのは、理屈じゃ説明できないけど、強いて言うなら、夕凪は、いつも一生懸命前向きにがんばってるし、人の悪口を言わない上に、人の良いところによく気がつく。
人を褒めるのが上手いし、人を尊重できる。
だから、そんなに周りに気を使って、疲れないのかなと思うし、頑張りすぎて倒れたりしないのかなとも思う。
俺は、そんな夕凪を守ってやりたいと思うし、俺だけに甘えてほしいとも思う。
それって、変かな?」
私は、大きく首を橫に振った。
なんか、すっごく嬉しい。
そんな風に思ってくれてたなんて。
そんな風に見ててくれたなんて。
「春、ちゃんとお返事するから、待ってて」
私は、瀬崎さんにそう告げて、ある決意をした。
その後、食事を終えると、瀬崎さんはまだ日も高い3時すぎに嘉人くんのもとへと帰っていった。
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