《家庭訪問はのはじまり【完】》第37話 付き合ってるんだろ?

翌週、私は拠點勤務地の変更を申請した。

私の勤める県では、初任から6年目までくらいは、遠方に飛ばされる事も多い。

しかし、それ以降は拠點となる勤務地を登録しておくと、基本的にはその中での異となる。

私は、実家のある地域を拠點勤務地としていたが、今いる地域を拠點勤務地に変更した。

私は現在6年目。

次の異でも、この地域に留まる事を選んだ。

そして、瀬崎さんは、一週おきくらいに私の部屋へ來るようになった。

お晝前に來て、お料理をして、おしゃべりをして、キスをして…

付き合ってないと言いつつ、キスをするってどうなの!?

もはや、詭弁でしかない気もするけど、それでも、建前だけでもちゃんと取り繕っておきたい。

私は昔から、真面目な優等生タイプで、ルールからはみ出す事が苦手だった。

それは、今も変わらない。

黙ってればいい…と言う人もいる。

だけど、黙ってても私自が落ち著かない。

だから、制服も校則をきっちり守ってたし、宿題も忘れた事がない。

その格が、現在の狀況を生んでいるんだと思う。

私たちは、付き合ってない。

その一點があるおかげで、私は罪悪なく瀬崎さんに會う事ができるんだ。

武先生とは、結局、何の進展もないまま、年末まで來てしまった。

優しい武先生は、週末、よく食事にってはくださるが、私が都合が悪いと言うと、それ以上、無理強いはしてこない。

だけど、ほんとにこのままでいいのかな?

変に期待を持たせたままじゃ、申し訳ない気もするし。

そんな事を考えていた12月の中旬。

私が教室の掲示を張り替えていると、武先生が隣のクラスからやってきた。

「夕凪先生」

「はい」

なんだろう?

績の事かな?

「24日、空いてますか?」

24日って、クリスマスイブ!?

瀬崎さんからは何もわれてない…っていうか、嘉人くんもいるし、われる事はないと思われる。

だけど、これに続くのは、きっとデートのいだよね?

どう答えるべき?

私が返事に困ってると、

「もしかして、もう予定ある?  瀬崎さんと」

「えっ、あの… 」

っ!?

なんで!?

なんで、瀬崎さんの事、知ってるの?

「悪い事は言わないから、保護者はやめた方がいい。

うまくいっても、いかなくても、辛い思いをするのは、夕凪先生だよ」

武先生は穏やかに言う。

「えっと… 」

これは、なんて答えればいいの?

「夕凪先生ん家の駐車場に瀬崎さんの車が止まってるのを何度か見かけたんだ。

付き合ってるんだろ?」

ああ、そういう事!

瀬崎さんの車、珍しいから、知ってる人が見たら、すぐ分かるもんね。

「あの、違うんです。

実は、私、お料理が全くできなくて…

瀬崎さんにお料理を習ってるんです」

「えっ?」

いつも落ち著いた武先生が、珍しく驚いた聲を出した。

だけど、それも一瞬の事で、すぐにいつもの武先生に戻って言った。

「夕凪先生、いい大人が、それを信じられると思う?」

そう…だよね。

だけど…

「信じていただくしかありません。

私も、その程度の分別は持ち合わせているつもりです。

なくとも、擔任する児の保護者とどうこうなる程、無責任ではないつもりです」

そう。

だから、瀬崎さんの様々な言葉にも、返事を返さないできたんだから。

「じゃあ、24日、付き合っていただけますか?

詳しい話は、その時聞きますから」

「……はい」

これ、斷れないよね?

斷ったら、瀬崎さんと何かあるからだと思われちゃう。

だけど…

クリスマスイブかぁ…

別に、クリスマスだからって、何かがある訳じゃないけど、好意を寄せてくれるのに好意を返せない人と過ごすのは、気が重いなぁ。

私、なんで武先生の事を好きにならなかったんだろう。

こんなにかっこよくて、いい人なのに。

人の気持ちって、ままならないなぁ。

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