《家庭訪問はのはじまり【完】》第38話 クリスマスパーティー
それからしばらくした週末、クリスマス直前の日曜日。
瀬崎さんが私の家にやってきた。
「こんにちは」
そう言って玄関に現れた瀬崎さんは、いつものスーパーの袋じゃなくて、大きな紙袋を提げていた。
「あれ?  どうしたんですか?」
不思議に思って聞くと、
「ちょっと早いけど、夕凪とクリスマスパーティーしようと思って」
と紙袋を広げて見せた。
中には、たくさんのお料理。
「これ、どうしたんですか?」
「うちの店でテイクアウト用に作らせたものだよ。
さすがに1人で全部作るのは無理だからね」
と瀬崎さんは笑う。
えっ!?
Accueilアクィーユのお料理!?
一、いくらかかってるの!?
「こんなにたくさん、いいの?」
「もちろん。
と言っても、品數が多いだけで、量は2人分だから、そんなに多くはないんだ」
それでも、フレンチレストランのお料理だもん。
安いはずがない。
瀬崎さんは、おいしそうなお料理をテーブルの上に所狹しと並べ、最後にお酒だと思われるボトルを取り出した。
「今日は特別。
とっておきのシャンパンを持ってきたよ」
シャンパン!?
「瀬崎さん、帰りはどうするの?」
お酒を飲んだら、運転できないでしょ?
「泊まろうかな?」
「え!?」
瀬崎さんは私に艶っぽい視線を向ける。
それって…
どうしよう!?
どう答えればいいの?
うろたえる私を見て、瀬崎さんは吹き出した。
「くくっ
冗談だよ。
今日は、夕凪と飲みたくて、タクシーで來たんだ。帰りもタクシーを呼ぶから大丈夫だよ」
ほっ…
焦ったぁ。
クリスマスだし、本気かと思った。
「くくっ
夕凪、そんなあからさまにほっとするなよ。
俺が傷つくだろ?」
「あ、いえ、そんなつもりじゃ… 」
私が慌てて取り繕おうとすると、
「ま、夕凪のそういうところも
かわいいんだけど」
と、頭をポンポンとでられた。
キャー!!
どうしよう。
がキュンキュンするよ。
ドキドキが止まらない。
「くくっ
夕凪、シャンパン開ける前から顔赤いよ。
そんなにかわいい態度を取られたら、ほんとに泊まりたくなるだろ?」
えっ!?
私は驚いて顔を上げると、一歩踏み出した瀬崎さんにふわっと抱き寄せられた。
瀬崎さんの腕に包まれて、ドキドキすらも心地よくなる。
私は瀬崎さんの背に腕を回してキュッと瀬崎さんのニットを摑んだ。
「夕凪、好きだよ。してる」
瀬崎さんが抱き締めたまま、耳元で囁く。
私は一気に耳が熱を持つのをじた。
瀬崎さんは一瞬腕を緩めて、顔を傾けた。
そのままゆっくりと近づいて、そっと私のにれる。
だけど、瀬崎さんのは、一瞬れただけで、すぐに離れていった。
私には、それが寂しかった。
瀬崎さんにもっとれたい。
れてほしい。
そう思う私がいる事に驚いた。
「夕凪ん家にはないかなと思って、これも持ってきた」
そう言って、瀬崎さんが取り出したのは、丁寧に緩衝材で包まれたシャンパングラス。
「ふふっ
正解!
一人暮らしの家にそんな必要ないもん」
私はそれをけ取ると、キッチンで洗い直した。
瀬崎さんが、テーブルセッティングを終えると、2人で向かい合わせに席に著く。
「夕凪、クリスマスにはちょっと早いけど、乾杯!」
瀬崎さんに注いでもらったシャンパングラスを掲げて乾杯をする。
「ん、おいしい!」
香りがふわっと鼻から抜けて、ほんのり甘みもじられて、とても飲みやすい。
「こんなにおいしいと飲みすぎちゃいそう」
私が言うと、
「いいよ。
ここは、夕凪ん家なんだから、うっかり寢ちゃっても、管を巻いても大丈夫だよ」
と瀬崎さんは笑ってくれた。
「ええ!?
そんな事、しません!」
私が口を尖らせると、
「くくっ
それは楽しみ。
夕凪と酒を飲むのは初めてだもんな」
そうか。
いつも瀬崎さんとは、食事しかしてなかったんだ。
「ふふっ
私も楽しみ。
瀬崎さんは、お酒強いの?」
「まあ、それなりには。
夕凪は?」
「んー、弱くはないと思うけど、ざるって言う程、強くはないかな」
「ああ!  そういえば、夏頃、俺が電話したら、ご機嫌で酔っ払ってた事があったな」
「えっ? 噓!?」
そんな事、あった?
「噓じゃないよ。
ほら、學年主任さんとデートの約束してきた日」
武先生とデート?
「ああ!!  あの映畫の?」
「そうそう。
あの時、電話越しの夕凪がかわいくて。
そのまま、電話を切って會いに行きたいと思ったよ」
瀬崎さんは、微笑んで言う。
「ええ!?  全然、覚えてない。私、何、言った?」
「くくっ
それは、すっごくかわいいから俺だけの」
「ええ!?  気になる〜
私、なんか、変なこと言った?」
「言ってないよ。
いつもより、ちょっと素直だっただけ」
素直って?
私、何言ったの?
「瀬崎さん、すっごく気になるから、教えてください」
「じゃあ、ご褒くれる?」
「ご褒?」
「ああ。
俺だけの寶を披するんだから、何かご褒があってもいいんじゃない?」
ご褒かぁ。
「それって、私が真っ先に思い浮かべたご褒でもいいんですか?」
「お? 夕凪が真っ先に思い浮かべたご褒?
いいよ。それ、すごく気になるし」
「じゃあ、ご褒あげるから、教えて?」
ご褒、瀬崎さん、怒るかな?
「夕凪に『ご機嫌だな』って言ったら、俺からの電話が嬉しいからって言ってくれたんだよ。
俺のために學年主任さんと2人では飲みに行かないようにした、とも言ってたな。
どんなに『好き』って言ってもらうより、舞い上がると思わないか?」
は、恥ずかしい。
それって、好きって言ってるのと、変わらないよね。
私は、照れ隠しにシャンパンを飲む。
すると、瀬崎さんは、また笑う。
「夕凪は素直でいいなぁ」
「えっ?  何が?」
私がキョトンとすると、
「今、照れてる?  恥ずかしいの?
顔が赤いのは、シャンパンのせいだけじゃないよな?」
噓!?
私は、頬に手を當ててみる。
確かに顔が熱い。
「もう!!
そこは、気付かないふりしてよ。
余計に恥ずかしいじゃない」
私は立ち上がって、バッグから手帳を取り出した。
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