《家庭訪問はのはじまり【完】》第47話 嘉人くんと

私が3つ目のポテトに手をばした時、店のり口が開き、來客を知らせるチャイムが鳴った。

私がそちらに顔を向けると、

「ああ! 夕凪先生!」

と嘉人くんの元気な聲が店中に響いた。

「嘉人さん!  どうしたの?」

私は、白々しく思いながらも、嘉人さんに問う。

「僕、スキーに行ってきたの。

でね、パパが飲みを買いたいって言うから、寄ったの」

嘉人くんは、店中に響く聲で説明してくれる。

「嘉人さん、分かったから、し小さな聲で話せるかな?」

私がそっと注意すると、嘉人くんは、はっとしたように、慌てて手で口を押さえる。

ふふっ

かわいい。

「先生の生まれた家がこの近所なの。

この子は、神山晴ちゃん。

先生の姪なのよ。

みぃちゃん、この子はね、ゆうちゃんの擔任してる子で、瀬崎嘉人さん。

2人とも1年生だから、お友達になれるかもしれないね」

私は2人を紹介する。

晴ちゃん?」

嘉人くんが呼ぶ。

「うん」

人見知りの晴は私の後ろに隠れて返事をする。

「パパ!

僕、晴ちゃんと遊びたい!」

うーん、それは…

「嘉人、お前がいくら遊びたくても、晴ちゃんは、初めて會った嘉人と遊びたいとは限らないだろう?」

瀬崎さんが嘉人くん諫めてくれる。

「そうなの?

晴ちゃんは、遊びたくない?」

嘉人くんが心配そうに尋ねる。

「ゆうちゃん」

晴が後ろから私の袖を引く。

「なに?」

「みぃちゃん家で遊ぼ」

「えっ?

みぃちゃん家かぁ。

ママ、いいって言うかなぁ。

電話してみる?」

「うん」

まさか晴がそんな事を言うとは思ってなくて、心、焦ってる。

だって、それって、瀬崎さんをうちに連れてくって事でしょ?

「瀬崎さん、晴がこう言ってますけど、もし許可が下りたら、寄っていただいても構いませんか?」

「いや、でも、お正月からお邪魔するのは、

  ご迷だし、非常識でしょ」

瀬崎さんは苦笑する。

「それはそうかもしれませんけど、ったのは晴ですから」

私はそう言うと、母に電話をする。

「あ、お母さん?

あのね、今、コンビニで偶然私が擔任する子に會ったんだけどね」

と説明をする。

 

「それが、なんか、スキー帰りにたまたま飲みを買いに寄ったんだって。

でね、晴がうちで一緒に遊びたいって言うの」

 電話の向こうで母がいろいろ言ってくる。

「うん、でも、兄さん家は、さすがにお義姉さんに申し訳ないでしょ?

だから、私の部屋で遊ばせてもいい?」

母には母なりの気遣いがあるらしい。

「うん、お父さんも一緒だから、大丈夫」

ようやく母の許可が下りた。

「ありがとう」

私は、電話を切って、子供たちに向き直る。

「私の部屋なら遊んでもいいって」

「やったぁ!」

と飛び跳ねる嘉人くんと、私の袖を摑んだまま、

「ゆうちゃん、ありがと」

と小聲で囁く晴。

対照的な2人だけど、仲良くできるのかな?

私は瀬崎さんの方を見て、

「という事になりました。

ごめんなさい。

こんな事になって」

と謝る。すると、

「いや、これは嘉人のせいだから。

むしろ、正月からご家族に気を遣わせて申し訳ない」

と謝り返されてしまった。

私たちは、瀬崎さんの車で実家に向かう。

うちは、田舎の農家だから、土地だけは広い。

瀬崎さんの車には不似合いな納屋の前に停めてもらって、母屋にる。

餅つきもできる広い土間を抜けて、居間にいる両親に瀬崎さんは挨拶をする。

コンビニで急遽買った菓子折りを手渡し、

「本當にお正月からご迷を承知で押しかけまして、申し訳ありません」

と平謝りだ。

うちはみんな大雑把な人間ばかりだから、そんなに気にしなくていいのに。

「いいえ、なんのお構いもできませんけど、好きなだけ遊んでらしてくださいね」

母がよそ行きの顔で挨拶する。

    人が読んでいる<家庭訪問は戀のはじまり【完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください