《家庭訪問はのはじまり【完】》第57話 パパすごい
「いただきます」
3人で手を合わせて、食事を始める。
「おいしい〜!」
瀬崎さんの料理は、今日もとてもおいしい。
「くくっ
それなら良かった。
舌平目じゃなくて申し訳ないけど」
瀬崎さんが笑う。
「これ、なんのお魚?」
私が尋ねると、
「當ててごらん」
と返されてしまった。
そんな事を言われても、私は魚の名前すらあまり知らない。
「んー、ヒラメじゃないなら、カレイ!」
「ブッブー」
瀬崎さんが誤答である事を告げる。
「じゃあ、サバ!」
「ブー」
「サンマ!」
「ブー!  形を見れば秋刀魚じゃない事は分かるだろ」
「だって、私、魚の名前なんて知らないもん」
私が口を尖らずと、嘉人くんが不思議そうに言った。
「パパ、夕凪先生より知りなの?」
私たちは、思わず顔を見合わせた。
「嘉人さんのお父さんは、先生よりいろんな事を知ってるのよ。すごいよね」
私は嘉人くんにそう言った。
父と息子。
絶対、尊敬できる父の方が將來、関係がうまく行く。
ま、実際、私から見ても尊敬しかないような素晴らしい人なんだけどね。
「パパ、すごぉい!」
嘉人くんから、尊敬の眼差しが注がれる。
「ほんと、すごいよね〜
で、答えは?
これ、何の魚?」
私が聞くと、
「ヒント!  ふた文字の魚だよ」
と返されてしまった。
「ええ〜、ふた文字の魚って、いっぱいない?
じゃあ、ブリ!」
「ブー!」
「イワシ…は三文字だし、ニシンも違うし、もう分かんないよ」
私がギブアップしそうになると、またヒントをくれる。
「ムニエルより、フライや開きで食べる事が多いかな」
「フライ?  開き?
   っ!
アジ!!」
私が力一杯答えると、瀬崎さんは優しく微笑んで、
「正解!」
と言った。
「へぇ、アジなんだ。
ムニエルって、白魚のイメージだったけど、アジもおいしいね」
私は隣の瀬崎さんに微笑んで言う。
すると向かいにいた嘉人くんが不思議そうな顔をした。
「なんか、パパと夕凪先生、仲良しになった?」
はっ!
しまった!!
一緒にご飯を食べてるから、いつものように砕けすぎた。
「あ、あれ?  そう?」
私はうろたえて答える。
「うん。なんか仲良しに見える」
「嘉人、パパと夕凪先生は、お正月に嘉人と晴ちゃんが仲良く遊んでる時に、たくさんお話して仲良くなったんだ。
パパと夕凪先生が仲良くなったら、嘉人も嬉しいだろ?」
瀬崎さんは、あくまで余裕だ。
「仲良しになったら、先生、ママになってくれる?」
嘉人くんが嬉しそうに瀬崎さんに尋ねる。
くすっ
嘉人くんの後ろにパタパタと揺れる仔犬の尾が見えそう。
「そうだな。
もっと仲良くなったら、ママになってくれるかもな。
でも、夕凪先生が嘉人のこと、こんな暴れん坊の怒り蟲、お母さんになるのは無理!って思ったら、ダメかもしれないぞ?」
瀬崎さんが言う。
嘉人くんは心配そうに私を見て尋ねる。
「僕、暴れん坊?  怒り蟲?」
ふふっ
かわいい。
「うーん、1學期よりは、大分暴れん坊じゃなくなったよね。
怒ることはあるけど、手を出す事はなくなったし。
あとは、授業中に勝手に喋るのがなくなれば、安心して2年生にしてあげられるんだけどな」
私が言うと、瀬崎さんが反応する。
「嘉人、授業中に喋ってるのか?」
「あ、違うの。
お友達とひそひそお喋りじゃないの。
私の説明の途中で、思った事を勝手に発言しちゃうの。だから、話が逸れたり、進まなかったり、ね?」
嘉人くんに視線を送る。
嘉人くんは、ばつが悪そうに目を逸らした。
「ん?  それって、授業の邪魔してるって事?」
「まぁ、有りに言えば…
でも、嘉人さんが私の話に反応してくれるおかげで、みんなが話に食いついてくれる事もあって、悪い事ばかりでもないんだけどね」
嘉人くんは、いつ怒られるんだろうと張してるように見える。
「だから、授業中、聞きたい事、話したい事がある時は手を挙げられるようになったら、もう2年生かな。嘉人さんは、3月までにできるようになるかな?」
私が聞くと、嘉人くんは元気よく答える。
「僕、できるようになる!」
ふふっ
こういう素直なところが嘉人くんのいいところだなぁ。
「じゃあ、先生、明日から楽しみにしてるね」
それから、私たちは、和やかに食事を終えた。
これから計算ドリルを頑張る嘉人くんを殘して、私は瀬崎家をお暇いとまする。
はぁ…
瀬崎家に家庭訪問するのは、毎回ドキドキするなぁ。
1回目は、春。
嘉人くんのお母さんにADHDの事を伝えた。
あの時は、瀬崎さんとこんな風になるなんて、思ってもみなかった。
2回目は、夏。
嘉人くんがブランコに乗る田村禮央くんを押して、けがをさせた時。
あの時、瀬崎さんが離婚した事を知ったんだった。
そして、その頃から、嘉人くんが「ママになって」って言い始めた。
3回目は、夏休み。
瀬崎さんに相談があるって言われてお邪魔したのに、なぜか告白された。
でも、もう3學期。
嘉人くんも落ち著いてきたし、家庭訪問はこれで最後かな。
このまま何事もなく、年度末を迎えられますように…
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