《家庭訪問はのはじまり【完】》第66話 學級懇談會での攻撃

その後、子供たちを下校させると、學級懇談會が始まる。

私が學校での様子を話し、保護者の方が家での様子を話してくれる。

話題は、ゲームにかける時間。

全然やらない子と、宿題もやらずに寢る間を惜しんでゲームをする子がいる。

保護者の方の意見を伺って、懇談も無事終了…と思われた矢先、初めて懇談に參加した岳さんから質問が來た。

「先生は、子供がノートを學校に忘れたら、わざわざ家まで屆けるんですか?」

これは、この間の事を他の保護者の前で攻撃しようとしている?

「私が気づいた時は、毎回、ご連絡させていただいてます。 

この中にも、何人かご連絡して、必要なら私の仕事帰りに屆けますとお話をした方がいらっしゃいます」

「あ、うちも連絡をいただきましたよ」

そうおっしゃってくださったのは、莉乃りのちゃんのお母さん。

「漢字ドリルの宿題の日で、ノートが引き出しにったままになってたからって」

それをけて、私は補足する。

「ただ、先生によっては、忘れた本人の責任だとおっしゃって、そのままにされる方も多いので、2年生になったら気をつけてくださいね」

「じゃあ、なんで神山先生はわざわざ連絡をするんですか」

岳さんは、攻撃の手を緩めない。

「1年生ですからね、ノートがない時にどうすればいいのか分からなくて困ってるんじゃないかと思うんです。

だから、國語のノートにやってもいいよって事をお伝えするとともに、保護者の方が必要だとおっしゃるお子さんにはお屆けするようにしてます。

その子によっては、他のノートじゃ嫌だと強いこだわりを見せる場合もありますから、私のできる範囲でその子の不安を取り除ければと思ってご連絡して保護者の方の判斷を仰いでます」

瀬崎さんは、私が話すのを黙って見守っていてくれる。

「じゃあ、なんで先生は、ノートを屆けるついでにその家に上がり込んで、お食事まで食べていくんですか?」

それもバラすのか…

他の保護者がざわつく。

「それは、軽率だったと反省してます。

既にわざわざ、食事を用意してくださっているのをお斷りするのは、卻って失禮な気がしたものですから、お言葉に甘えてしまいました。

今後はそのような事がないようにしたいと思います」

「あの、何の事をおっしゃってるんですか?」

莉乃ちゃんのお母さんが他の保護者を代表して質問する。

「実は、先日、ノートをお屆けした際に、お禮だと思うんですが、『食事を用意したから一緒に食べていってください』とおっしゃっていただいたんです。

わざわざ作ってくださったものをお斷りしづらくて、ついお言葉に甘えてしまいました。

それは教師としては軽率だったと反省してますし、今後はそのような事がないように努めたいと思います」

私が言うと、

「それは、斷りにくいですよね。私でもいただくと思います」

と禮央くんのお母さん。

味方が増えたみたい。

嬉しい。

分が悪いと判斷したのか、岳さんはそれ以上何も言わなかった。

懇談は無事、終了した。

その後、また保護者の方が個別に質問に訪れる。

2年生で使うノートの事。

今、ノートがなくなったら、次は何を買えばいいのか。

ドリルを3回目まで終わらせてる子もいるが、させた方がいいのか。

懇談に參加する保護者の方は、基本的には真面目で熱心な方が多いので、質問も多岐にわたる。

最後に瀬崎さん。

だけど、近くで岳さんが聞き耳を立てている。

「先日は、私の軽率な行でご迷をかけて、申し訳ありませんでした。

今日もこんな風に攻撃されるとは思ってなくて、本當にご迷をおかけしました」

あくまで、保護者に徹して話してくれてる。

「いえ、瀬崎さんのせいではありませんから、気になさらないでください」

「ありがとうございます。

まさか、子持ちの私にストーカー行為を働く人がいるなんて、思いもしませんでしたから、本當にご迷をおかけしました」

ん?

これ、岳さんにわざと聞かせてるよね?

それを聞いた岳さんは、そそくさと居なくなってしまった。

「くくっ

逃げるくらいなら攻撃しなきゃいいのに。

ひとりでよくがんばったな」

誰もいない教室で、瀬崎さんが頭をでてくれる。

だけど、教室なんて、いつ、誰が通りかかるか分からない。

私は、慌てて一歩下がって距離をとった。

「くくっ

職場じゃしょうがないか。

続きはまた今度」

そう言って瀬崎さんは、教室を去っていった。

はぁ…

いつになく疲れた。

授業參観より、懇談の方が100倍疲れるよ。

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