《家庭訪問はのはじまり【完】》第72話 返事

午後の職員會議を終え、定時に帰宅する。

攜帯には、瀬崎さんからメールが屆いていた。

[ 今日、7時頃、行くよ。

    それより帰りが遅くなるようなら、

連絡して]

だから、私は返信をする。

[ 今、帰宅しました。

    夕食を用意して待ってます]

私は、あまり得意ではない料理を瀬崎さんのために頑張った。

瀬崎さんに教えてもらったポークソテー。

実家から屆いたばかりの春キャベツを添える。

初めは短冊切りにしかならなかったキャベツも、今では千切りとは言えないまでも、八百切りくらいにはなってるんじゃないかと思う。

7時過ぎ、瀬崎さんがやってきた。

「夕凪、お疲れ様」

「瀬崎さんもお疲れ様です」

約束の終業式。

意識してしまう私は、どこかぎこちない。

「今、嘉人に會いに実家に寄ってきたんだけど、泣き疲れて寢てたよ」

「えっ?」

そんなに泣いたの?

「くくっ

今日は、それはそれは、大変だったらしい」

「そうなの?」

「ああ。

母の話では、帰るなり

 『夕凪先生が、夕凪先生が』

って泣き喚いて、暴れたらしいよ」

それは、嬉しいような、困ったような…

「母親が出てった時もこんなに泣かなかったし、暴れるなんて事なかったのに。

夕凪は、母親より特別な存在なのかもしれないな」

瀬崎さんは、私の肩を抱き寄せる。

「嘉人の擔任じゃなくなった夕凪に改めて言わせて。

夕凪、してる。結婚しよう」

「…はい。

私もずっと瀬崎さんが好きでした。

よろしくお願いします」

私がそう言うと、瀬崎さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。

「分かってたけど、ちゃんと夕凪に言ってもらうと、やっぱり嬉しいな」

瀬崎さんは、私のうなじに手を添えると、そっとれるだけの優しいキスをした。

「さっ、せっかく夕凪が作ってくれたんだから、冷めないうちに食べなきゃ」

瀬崎さんはそう言うと、手を洗って食卓につく。

「いただきます」

2人で手を合わせて、食事を始める。

でも、私は瀬崎さんの想が気になって、食べられない。

「うん、うまいよ。

ちゃんと筋切りもしてあるし、味もいい。

夕凪は、やっぱり、やればできるんだな」

瀬崎さんに褒められて嬉しくなった私は、ようやく食事に箸をつけることができた。

食後、私は今日の學校での事を話す。

嘉人くんが花束を渡す代表になった事。

花道で泣いた事。

それを聞く瀬崎さんは、やはりお父さんの顔だった。

「嘉人には、いつ言おうか。

本當は明日にでも言ってやりたいんだけど、いくらなんでも、早すぎるよな?」

瀬崎さんに尋ねられる。

「あのね、終業式は終わったんだけど、厳に言うと、私はまだ嘉人くんの擔任なの。

31日までは、嘉人くんに何かあったら、私が擔任としてく事になるから、本當はまだ瀬崎さんと付き合っちゃダメなんだ」

「まぁ、そうだよな」

と瀬崎さんは分かってた口ぶりで答える。

「だから、早くても4月1日以降じゃないとダメなの。

でね、できれば、私の口から嘉人くんに話したいんだけど、ダメかな?」

「夕凪から?」

「うん。

嘉人くんとは、ちゃんと正面から向き合いたいから、瀬崎さんに全部任せるんじゃなくて、私がちゃんと言いたいの。

ダメ?」

これはちょっと出しゃばりすぎ?

お父さんに任せるべき?

「分かった。

じゃあ、3人で話そう。

夕凪が話すのを俺が橫で見てるのはいいんだろ?」

「うん!  ありがとう」

よかった。

「じゃあ、善は急げ。

4月の最初の土曜日にうちで話そう。

いい?」

「うん。

嘉人くん、喜んでくれるといいんだけど」

「喜ぶに決まってるだろ。

喜びすぎて、夕凪を獨り占めしそうで怖いんだけど」

ふふっ

瀬崎さん、嘉人くん相手にヤキモチ?

なんかかわいい。

「私は、嘉人くんとは結婚しませんよ?」

私がそう言うと、

「くくっ

そうだよな」

と苦笑いをこぼした。

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