《家庭訪問はのはじまり【完】》第87話 お泊まり

夕日のオレンジが、窓から部屋の奧までびてきた頃、嘉人くんは帰ってきた。

「ただいまぁ!」

「おかえりなさい」

私が返すと、

「あれぇ?  なんで夕凪先生がいるの?」

と聞かれた。

「なんでって、なんで?」

思わずへんなけ答えになってしまった。

「だって、外に車、なかったよ?

先生、もう帰っちゃったんだと思った」

「ああ。今日ね、先生、嘉人くん家にお泊まりしようと思うんだけど、いいかな?」

私がそう言うと、嘉人くんは目をキラキラさせて、

「いいよ!」

と答えた。

だけど、まだ噂になると困る。

「でも、先生が嘉人くん家に來た事も、お泊りした事もみんなには緒なんだよ。

嘉人くん、守れるかな」

「うん。僕と先生のお約束ね」

嘉人くんは小指を出す。

ふふっ かわいい。

指切りなんて、2年生になるとなかなかしない。

嘉人くんは、神的にいのかもしれない。

私は嘉人くんと指切りをする。

それから、再び瀬崎さんとお料理に戻った。

3人で晩ご飯を食べ、瀬崎さんと嘉人くんでお風呂にる。

私はそのあと、らせてもらう。

アパートのお風呂より広くて、足をばしてれるのが嬉しい。

ゆったりと浸かって、いつものニャンコ柄のパジャを著ると、リビングで瀬崎さんが待っていた。

「夕凪、おいで」

私が瀬崎さんの所へ行くと、瀬崎さんは私の手を取って、膝に座らせた。

えっ!? 

これ、恥ずかしすぎる。

私は慌てて降りようとするけど、瀬崎さんの両腕が腰に回されて、逃げられない。

「夕凪、必ず幸せにする。

  だから、ずっとそばにいて。」

瀬崎さんが耳元で囁く。

嬉しい…

私は降りるのをやめて、を預けて答える。

「うん。

じゃあ、瀬崎さんは、私が幸せにする」

その直後、ぎゅっと抱きしめられた。

「嬉しいよ。

だけど、違うだろ」

違う?  何が?

私が首を傾げると、

「瀬崎さんじゃないだろ」

と指摘された。

ふふっ  

そこ、こだわる?

「はい。

ゆっくんは、私が幸せにします」

その翌週から、私は金、土とゆっくん家に泊まる事になった。

東京の採用試験の願書を出し、結婚式の準備をし、合間に料理を習い、嘉人くんの宿題を見る。

宿題をやらずに遊びたがる嘉人くんのやる気を引き出すため、向かい合って一緒に漢字ドリルをやったりする。

私は嘉人くんが知らない漢字も使い、難易度を上げて嘉人くんと競爭する。

負けず嫌いな嘉人くんは、とても一生懸命ドリルをやる。

やりながら、私は、嘉人くんのデタラメな書き順を訂正して教えていく。

計算ドリルは、驚くほど早い。

1年生の時の計算カードもクラスで1番早く合格していた。

計算は本人も楽しいようなので、特に策を労す事なく、スラスラとやってくれる。

そんな日々を過ごすうち、嘉人くんは気付いたらしい。

擔任の先生はバランスよく宿題を出してくれるのに、嘉人くんは平日は計算、週末は漢字をやる事にしたらしい。

まぁ、それで頑張れるなら、それもいいけど、私の宿題に割かれる時間が増えていくなぁ。

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