小學校で教鞭を取る俺には、ずっと忘れられないがいる。

神山夕凪

俺が30歳の時、教育実習に來た8歳も年下のの子。

いつも明るく真っ直ぐに生徒の中に飛び込んでいく姿は、最初から好が持てた。

だけど、俺が彼を見つめるようになったのは、そう、あの會議室での會話を聞いた時からだった気がする。

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その時、実習生は養護教諭も含めて5人來ており、職員室に席は作れないので、會議室を控え室として使わせていた。

ある時、俺が會議室前の職員トイレに向かうと、中から実習生たちの會話がれ聞こえてきた。

「なんかさぁ、子供ってかわいいと思ってたけど、実際に會ってみると違うよね〜」

「違うって？」

「なんかさぁ、かわいい子もいるんだけど、なんか小生意気でムカつく子もいない？」

それに賛同する実習生たち。

まあ、分からなくもない。

俺だって、自分が悪いくせに噓ついてごまかす奴や、授業をふざけて妨害する奴はムカつく。

「それにさぁ、2組の田中誠たなか まこと！キモくない？」

田中って、2年のあいつか。

田中は、自閉癥で小學校までは特別支援學級にいたが、學力に問題はないため、進學を目指して中學學と同時に、普通學級を希した奴だ。

確かに、人と目を合わせられないし、挙不審に見られても仕方ないところはある。

だけど、教員になろうって奴が言う臺詞か？

「田中くんは、自閉癥なんだからしょうがないでしょ。

そういうこと、で言うの、よくないんじゃない？」

そう言ったのが、神山夕凪だった。

「だって、で言わないで表で言う方が酷でしょ？」

口の減らない実習生だ。

「そんな事ないよ。

口言うくらいなら、本人に注意してあげた方が、その子のためになるじゃない」

「ええ！？

じゃあ、神山さん、あの子に言える？

言えるなら、言ってみてよ」

「………分かった。

明日、話してみる」

そんな口車に乗る事ないのに。

正義は強いけど、要領の悪い奴。

翌日の晝休み、間の悪いことに、俺が擔任するクラスへ行く途中、神山夕凪が田中を呼び止める現場に出くわしてしまった。

他の実習生たちが、遠巻きに眺める中、彼は田中に話しかける。

「田中くん、こんにちは」

當然、田中は、目を合わせないし、おどおど、もじもじと挙不審なきをする。

「田中くん、こんにちは」

彼はもう一度、ゆっくりと挨拶をする。

田中は、答える代わりに、目を伏せたまま、こくんと頷いた。

「田中くん、先生、田中くんに話しかけてるんだ。

先生、田中くんの目を見てお話したいな」

だけど、田中は余計に落ち著かない様子で顔を背け、をくねらせる。

神山は田中が顔を背けた先に回り込み、さらに目を合わせようとするが、田中はさらにをくねらせて、神山の視線から逃げようとする。