俺は、別にその後も神山に固執してた訳じゃない。

だけど、誰を紹介されても、誰と出會っても、あの真っ直ぐで一生懸命な神山と比べてしまう。

仕事にかまけて、そんな不な日々を送り5年が経った頃、俺は近くの小學校への異が決まった。

小學校でも、英語教育が始まるため、英語教師が何人か小學校へ回される中の1人だった。

で、異してみて、驚いた。

あの、神山夕凪がそこにいた。

やっぱり、あの頃のまま、真っ直ぐ一生懸命、子供と向き合っていた。

俺は、案の定、気付けば彼を目で追っている。

ああ、俺は今でも、彼が好きなんだ。

異して早々に自分の気持ちに気付いたが、思えばもう8年程、人はいない。

こんなおじさんになって、何をどうすればいいのか分からず、戸ったまま1年が過ぎた。

そして、今年、同じ1年生の擔任になった。

これは、運命かもしれない。

なのに…

彼の運命の人は他にいた。

なんでだ？

絶対、俺の方がいいのに、なんで奴を選ぶんだ？

訳が分からない。

だけど…

彼が奴を選んだんだから、しょうがない。

俺は、彼の幸せのために出來ることをしよう。

4月、彼は別の小學校へ異した。

これで、條件は整った。

きっと彼の想いは就するだろう。

4月末、俺は廊下ですれ違った瀬崎嘉人を呼び止めた。

「嘉人さん、お父さん、結婚するんだって？」

カマをかけてみた。

「えっ！？  武先生、なんで知ってるの？」

さすが小學2年生、すぐにボロを出す。

「先生は、夕凪先生と仲良しだからな。

先生、日にちを忘れたんだけど、何月何日に結婚するか、嘉人さんは覚えてるか？」

「うんとね、日にちは覚えてないけど、6月だよ」

6月！

それはまた、早いな。

急いでかないと。

俺は、校長に掛け合った。

「夕凪先生が6月に結婚するんですが、お相手の了承を得られたら、元1年1組の子供たちで歌のプレゼントをサプライズでさせてもいいでしょうか」

「それはおめでとうございます。

木村先生、神山先生とお幸せに」

「あ、いえ、違うんです。

夕凪先生は、俺ではない人と結婚するんです」

校長は、あの時の言い訳をまだ信じてたのか。

「あ、それは……

でも、それなら、神山先生の、今、擔任してる児がするんじゃないですか？」

校長の言う事はもっともだ。

「ですが、ここだけの話、お相手は瀬崎嘉人の父親です。

瀬崎嘉人と一緒に歌わせたら、夕凪先生、喜ぶと思うんですが……」

「それは……

卻って、よくない噂を広める事になりませんか？

同じクラスには、岳真奈もいるでしょう？」

「そこは、希者だけにしますし、何より、後から憶測で変な噂が広まるより、ちゃんと擔任を外れてから付き合って結婚するんだという事を保護者に説明するいい機會だと思うんですが……」

俺の説得に、校長も最後は了承してくれた。

俺は、児名簿から瀬崎嘉人の父親に連絡をする。

父親は、初め、俺からの電話に警戒満載で応対したが、説明をすると、すんなり、というか、喜んで了承した。