《婚約者が浮気したので、私も浮気しますね♪》11
「とりあえず、レインは今夜は私の部屋に移りなさい」
「はい…、…はい?」
思わずうなずいてしまいましたが、おかしなことを言われた気がします。普通は別室を新たに用意するものではないのでしょうか?
確かに私とシャルル様は人同士で、たった今お互いの想いも確認いたしましたが、それとこれとは別問題ですわよね。
未婚のが、男の部屋に深夜にお邪魔するだなんてふしだらなことをしていいはずがありませんわ。客室エリアのどこかに部屋を用意してもらったほうがいいのではないでしょうか?
「駄目ですよ。またやってくるかもしれません。その點私の部屋は魔法防が施されていますから簡単には破られることはありません。それにその方が私も一緒にいることが出來て安心です」
やっぱり一緒にいるんですか!そんな気がしておりましたけれども、未婚の男が一夜を共にするなんて、そんなことあってはいけませんわ。
「私は」
「私の部屋に移しましょう、ね」
「……は、い」
有無を言わせない笑みに押し切られてしまいました。
今日は一夜をシャルル様と過ごすことになるだなんて、心臓、持つでしょうか…。
シャルル様のお部屋は何度かったことがありますが、必要最低限のもの以外置かれていない簡素な部屋になっておりますので、この1年で私が々な、花瓶や飾りなどを置いて華やかにしてまいりました。
寢室にはったことはないのですが、無事だった服などがどんどん裳部屋に運び込まれて行っております。
これはこのまま永住することになってしまうのでしょうか?
ああでも、ヨハン様が魔人になられましたので婚約の話しはなかったことになりますし、元々人ですから一緒の部屋でも大丈夫……、ではありませんわよね?
「あの、シャルル様」
「なにかな?」
「どうして私の裝がどんどん運び込まれているのでしょうか?」
「部屋を此処に移すからですよ」
「今夜だけじゃないのですか?てっきりそうだとばかり思っていたのですが…」
まあ、途中からそうじゃないことには気が付き始めていましたけれども。
今は落ち著くためにと淹れられたハーブティーを飲みながら、シャルル様とソファに並んで座っております。
「私の婚約は」
「また白紙撤回になるでしょうね」
「またですか…記録上には殘らなくても記憶には殘るものですし、2回も婚約破棄になった巫長など威厳も何もありませんわね」
「そんなレインにいいことを教えてあげよう」
「なんでしょうか?」
「私と正式に婚約をしないか?」
「はい?」
何をおっしゃっているのでしょうか。
「承諾してくれて嬉しいよ」
「え、いえお待ちください。今のはっ」
思いっきり疑問形でしたよね!?
「承諾してくれて嬉しいよ。王宮の方でも問題になっていたんだ、第一王が人では裁がってね。だから一度婚約を解消して別の誰かと結ばせようという話しになっていたんだよ」
「いつそのようなお話になったんですか!」
「半年前かな」
「そんなに前から…」
「もちろんレインの次の婚約者候補は私だよ」
私にまったくその報は來ていないのですがどうしてなのでしょうか?
「別にレインをのけ者にしていたわけじゃないよ。決まってから教えてでも遅くはないと思ってね」
遅いですよ!?
「ちゃんと言ってもらわないと困ります」
「でも、私と人同士なんだし構わないだろう?」
「構います。だって、両想いだってわかったのはさっきなんですよ」
「私はずっと前から気が付いていたよ」
「ふえ!?」
どうしてでしょうか。
「キスをしていると、だんだん反応を返してくれるようになっただろう?それに目がとろけるようになってきた。他の誰でもないレインのことだからわかるよ」
「……っ」
何も言えなくなってしまいました。私ってばそんなにわかりやすかったのでしょうか。
恥ずかしいですね。
「私以外にはわからなかったと思いますよ」
「うきゅぅ」
「かわいいですね、レイン」
「は、恥ずかしいので離れてください」
「駄目。ほら、いつものように膝の上に乗って」
そう言ってひょいっと抱えあげられていつものようにお膝の上に乗っけられてしまいました。
もうなんだか々恥ずかしいです。
翌朝、もう本當に々恥ずかしい夜が過ぎたかと思うと朝も恥ずかしさのオンパレードでした。
まずシャルル様の腕の中で目を覚ますところから始まりまして、おはようのキスをされてしまいました。
その後、顔を洗いまして今日著る服をシャルル様がお選びになっている間に、私は水行に向かい濡れた裝のまま部屋に戻って、シャルル様の魔法で乾かしていただいて、手ずから著替えをし、髪を結っていただきました。
さすがにお化粧はシーラにしてもらいましたが、もう恥ずかしくて頬紅は要らないのではないかと思ったほどです。
朝食は普通にいただ……けませんでした。ソファに座ったシャルル様の上に橫抱きに座って食べさせていただきました。もう一どこまで私は恥ずかしい思いをすればよろしいのでしょうか。
王宮に向かう馬車の中でも橫抱きにされて、足をでられたり背中をでられたりして、到著するころには大分疲れてしまいました。
「ミスト様、大分お疲れのようですね。昨夜のことお聞きいたしました。さぞかしショックでしたでしょうね」
「え、ええ…まあ」
勇者様がそう言って気遣ってくださいますが、正直それよりも恥ずかしさで疲れている方が上回っているので、思わず苦笑いを浮かべてしまいました。
「巫長、昨夜は助かりました。もし勇者が來るのがしでも遅かったら私は…」
「間に合ったようでようございました」
ブルリと震えたドロテア様に、間に合ったのだとほっとをなでおろしました。
この半年間、ヨハン様が手を出していなかったことも驚きですが、昨日の勇者様の言葉で抑えていた何かが切れてしまったのでしょうね。
そうなりますと、魔王とはいつ契約したのでしょうか?
「レインにも不思議に思うところはあるだろうけど、今日はそのことについて話し合うために集まったんだ。さあ行こう」
「はい」
なんだか大ごとになってしまいましたわね。
會議室に案されて、私はシャルル様の橫に座ることになりました。神殿側の代表ということですね。あと、私は一応ヨハン様の婚約者ですのでこの場に出席する義務がありますのよ。
「ではヨハンが契約したのはここ最近ということでいいのか?」
「はい、それまでに変わった行は見けられませんでしたが、以前1人で移した後からし様子が変なじがしていましたわ」
「変なじとは?」
「なんと言いますか、こういっては何ですが、ねちっこい視線というか、以前はなかった的な目で私を見てくるようになったというか…」
「そうか。勇者は何か気が付くことはなかったか?」
「そうですね、同じようにそのころから些細なことで良く衝突するようになりましたね」
「そうですか…」
「魔王は邪悪な存在と認識していいのだろうか」
「魔人が獨斷専行するということはよくあることだからわからないな」
偉い方々が難しいお話をなさっておいでですが、要するにこの國に危険が及ぶかどうかなのですよね。
はっきり言って及ぶと思いますわ。なんといっても勇者様にドロテア様、そして私が居りますもの。なくともヨハン様はまたこの王都にやってきますわよね。
あの時のヨハン様は憎しみに囚われていらっしゃいましたから、きっとまた…。
そう考えると恐ろしく思えてしまいます。
「レイン、大丈夫ですよ」
「はい」
フルリ、と震えた時に機の下でシャルル様が手を握って小聲で聲をかけてくださいました。たったそれだけのことですのにほっと安心してしまえるのは不思議ですね。
「魔人ヨハンが再度この王都に來るとして、防衛を固める必要がある。王と勇者は神殿にを寄せておくように」
つまり神殿で責任を取れと言うことですね、わかります。わかりますけれども神殿の資金も潤沢というわけではありませんので、それなりに補助金を頂かなくてはやってられません。
「神殿にを寄せていただくのは構わないのですが、神殿のどの部分にかくまいましょうか?客室では昨夜の私の部屋と同じ結果になってしまいますわ」
「では樞機卿様の部屋と同じエリアではいかがでしょうか?」
「それがいいでしょうね。私の住まうエリアに昨夜からレインも移してもらっていますし」
正確には同じ部屋に移したのですけれどもね。
「念のためドロテア王様と勇者様は同じ部屋でお過ごしになったほうがよろしいかと進言いたしますわ」
「「なっ」」
私だけ恥ずかしい思いをするなんて嫌ですし、効率もこの方がいいですものね。私の意見はもちろん採用されました。一夜明けて王宮では魔人に狙われた王とそれを救った勇者の話で大盛り上がりですもの。
とりあえず神殿に移することになりました。
思ったのですが神殿の防機能が働いていないような気がします。
半年ほど前から魔人になっていたというのであれば、何らかの防機能が発していたと思うのですがどうなっているのでしょうか?
もっとも、実際に防機能がある場所なんて、樞機卿のお住まいになってるエリアぐらいなものなんですけれどね。
ヨハン様はシャルル様他樞機卿様のお住まい近くには行かなかった、ということでしょうか?
可能はありますね。
「勇者様方はヨハン様と旅をしていて何か不審な部分をじなかったんですか?」
「不審というか、ドロテア王と人になったと聞いた時は驚いた、というぐらいだな。そんなそぶりはなかったし」
「私も、あの時はいささか強引で、思考がマヒしたように思えていました」
「そうなのですか…」
ではあの時に止めにっていた方がよかったのかもしれませんね。今思っても遅いことですけれども。
「魔王と契約したのはやはりドロテア様への心を利用されたと考えるべきでしょうか?」
「その可能は高いですね」
って、シャルル様、さり気なくをくっつけてこないでください。神殿の中のシャルル様の執務室ですよ!?勇者様達と作戦會議をしているんですよ!?
「レインは私が守りますので勇者はドロテア王を守ってください」
「もちろんだ」
即答ですか、かっこいいですね。勇者様って顔立ちは普通ですけど意思が高潔と言いますか、流石勇者様というじです。
男は顔ではありませんね。となりますと、顔の良い方は問題があるのでしょうか?
ふとシャルル様を視ます。シャルル様は正直形でいらっしゃいますので格に難があるのでしょうか?
今のところそうは思えないのですが…。
「とにかく、この神殿で迎え撃つにしても防を固める必要がありますね。王は防魔法に覚えはありますか?」
「申し訳ありません攻撃魔法の方に才能が偏っておりまして」
「わかりました、レイン」
「はい、私の方でも巫・神に聲をかけて神殿全に魔法防をかけさせますが、理の防となりますと些か難しいものがございますね」
「そこは私がやりましょう。理防魔法陣も扱えますからね」
流石はシャルル様です。
それにしても、ただ婚約者に浮気された事から始まった話ですのに魔人と戦うことになるだなんて、隨分な話になってしまいましたわね。
その日の夜、私はシャルル様の部屋で戦闘服をに著けて眠らずにお茶を頂いております。
巫長の戦闘服はシュミーズドレスの上に鎧ドレスを著こむというシンプルなものですが、今はとしてニワトコの枝で作られた杖を持っております。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ、シャルル様も一緒にいてくださいますし」
それに今日現れるとは限りませんしね。
「勇ましい姿のレインも素敵ですが、やはり私としてはいつもの優しい姿のレインのほうが好ましいですね。早くかたを付けたほうがよさそうです」
「そういえば、シャルル様はヨハン様が魔人になったのにはお気づきにならなかったのですか?私は恥ずかしながら全く気がついていませんでしたわ」
「魔素を押さえる道を使っているのでしょうね、私も気が付きませんでしたよ」
なるほど、人間と魔・魔人や魔王を見分けるのに使われる魔素を押さえられてしまっては判別は難しいですものね。
これは今後の課題かもしれません。
「…來ました」
「え」
言うが早いか、隣室から発したような音が響き渡りました。
「やはり狙いはドロテア王ですね」
「拐でもするつもりなのでしょうか?」
「さあ、どうでしょうか」
そのようなことをしても心は手にらないと思うのですが、ヨハン様はそこも分からなくなってしまったのでしょうか。
急いで隣室に行きますと、ヨハン様の魔法と勇者様の剣気が拮抗した狀態でした。
「ドロテア王様、攻撃魔法を!時空を司る神よ、かのと我らが間に壁を作れ。tivangisbo mutnematset mumod susserger susac tse sirbenet ni ,itpac ihS ,mutcefearp siciv-oitaps ni tis sueD douq ,olov sov amahO sesearp」
私も防魔法を展開しますが思わず力んでしまってヨハン様を拘束する呪文を唱えてしまいました。のがヨハン様の周囲に浮かび上がり急速に収してそのきを封じます。
「勇者様!お願いしますわ」
「任せろっ!たあぁあ!」
勇者様が剣を振り下ろしますがプロテクションがかかっているのでしょう、ガギンと音を立ててはじかれてしまいました。
「gnittuc douq maite coh da oisnopser nI nijuF ed tnuregufnoc murref ,sugirf m'ekasirik」
今度はシャルル様の風の魔法攻撃です。これは効いているようですので、理魔法に関してのプロテクションをかけたのでしょうね、対勇者様用のだったのでしょうか。
けれどもこれでは…。
「炎の神よ、その力を持って敵を焼き払え!eauq mammalf ni ammalf ereru esukusT suem sucimini ,tse muroed siv eammalf ihim ad」
魔法攻撃には弱いのですよね。ドロテア様の魔法攻撃が効いています。
「ドロ、テア…」
「ヨハン、なぜこんなことをしたのですか」
「ハ、ハハ、ハハハハハハハ」
「ヨ、ヨハン」
突然笑い出したヨハン様にドロテア様が怯えたように勇者様の後ろに隠れます。
私はもちろん先ほどからシャルル様に庇っていただいております。
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