《婚約者が浮気したので、私も浮気しますね♪》02
「巫長様、今朝はどうしちゃったんですか?シャルル樞機卿様と喧嘩でもなさったんですか?」
「そんなじですわね」
シーラの言葉に私は苦笑して頷くと、寢不足の顔をごまかす化粧をしてもらうように頼む。
結局あの後眠ることが出來ませんでしたわね。
シャルル様が南の魔王であるということは確定してしまったようなものですわよね。どうしてこんなことになってしまったのでしょうか、全ては私が悪いのでしょうか?
還俗したことがきっかけだとしたら、私にも責任がありますわよね。
けれども、シャルル様がお母様のお腹を食い破って産まれてきただなんて信じられませんわ。それではまるで忌み児のようではありませんか。
……だから東の森に捨てられてしまったのでしょうか?
これはボルドロウ家のこともし調べてみなければなりませんわね。約32年前に何があったのかを知ることから始めなければなりませんわ。
私はその日から巫長の部屋で寢起きをするようになり、日々の務めを果たしながら過去のことを調べる日々が続きました。
わかったことは記録が何度か書き換えられているということですわね。
ボルドロウ家は32年前に確かに奧方様に対して蘇生リザレクションの依頼を神殿にして功していらっしゃいました。ただし怪我の容は出産による死亡でお子様に関しては死亡したが蘇生はしないという容になっておりましたが、22年前にその記録が修正され、ご子息も同時に蘇生リザレクションしたことになっておりました。
つまり一時的とはいえ、大公家ではシャルル様は死亡扱いになっていたということですわね。
東の魔様のもとに捨てたのも、戻ってくることはないと考えてのことだったのでしょうけれども、神殿に來ることになってあの髪のから出生が明らかになったということでございましょうね。
それで記録を書き換えたということでしょうか。
なんとも言えない話ですわね。
そうして私は今、ボルドロウ家にお邪魔をさせていただいております。
シャルル様と結婚して初めてお邪魔するのですが、流石は大公家というべきか立派なお屋敷でございますわね。
応接室に通されて、待っていますと品の良さ気なご婦人がいらっしゃいました。この方がシャルル様のお母様でいらっしゃいますでしょうか。
こうしてこんなにも早く面會が出來ましたのは、私がシャルル様の妻であることと巫長という立場があるからでございますわね。
「ご機嫌よう、巫長様」
「はじめてお目にかかります、ミストと申します。シャルル様…アドルフ様には日ごろからお世話になっております」
「……そうですか」
反応は微妙ですわね。自分の腹を食い破った子供のことなどあまり話したくないというじでしょうか。
「今日はシャルル様の、アドルフさまのことで參りましたの、よろしいでしょうか?」
「ええ、あの子が結婚したと聞いていつかはこんな日が來るのではないかと思っておりました」
「そうですか。遅くなってしまい申し訳ありません」
「いいのですよ。その分私も心の整理が出來たというものです」
「お義母様は、32年前一度命を落とされた、これに間違いはありませんのね?」
「ええ、私は確かに一度死亡いたしました。神殿にいらっしゃる巫様方のおかげで蘇生することが出來ましたけれども」
「そうですか…。原因はアドルフ様で間違いないのですね」
「そうですわ。あの子は私の腹を食い破って産まれてきました。そのせいで私は死んだのです」
「…そうですか。そしてアドルフ様は東の森に捨てられてしまったというわけなのですね」
「そう聞いております。私の意識が戻った時にはもうあの子は死んだと聞かされましたから、生きていると知った時は信じられない思いでしたわ」
「その時はどんな気分でいらっしゃいましたか?」
「正直、どうして生きていたんだと思いました。東の魔に拾われていたなどとは思いませんでしたもの」
「そうですか」
「けれども、心のどこかでほっとしたことは確かです。ずっと罪の意識に囚われておりましたので。神殿にいるとはいえ、家族のが一切ないとはいえ、生きていてくれるのならばそれでいいと思ってしまっているのです」
「生きていてくれればいい、ですか?」
「ええ、それが母親というものなのですわ巫長様」
「そういうものなのですか」
母親とは業の深いものなのかもしれませんわね。
「今は會うことはないのですか?」
「ありませんね」
「そうなのですか、お寂しくはないのですか?」
「寂しい、と思わなくもありませんが。生まれたその瞬間から家族で無くなってしまいましたので…」
お義母様はそう言って寂し気に微笑まれました。
ボルドロウ家を後にした私は神殿に戻り、風の魔法を使い東の魔様に連絡を取ろうと試みました。
前回書狀を頂いた時の魔力殘滓が記憶にございますのでそれを使ってのですので上手くいくかはわかりませんけれども。
「da sirettil siH oyekodoT otnev tnus muutirips rep」
ふわりと風が巻き起こり、書いた書狀が東に向かって飛んでいきます。上手くいくといいのですが、不安ですわね。
手紙は無事に屆いたようで、東の魔様からお返事が屆きました。その中には東の魔様が開発したという通信機がっておりました。風の魔法で二ヶ所を繋ぐのだそうです。
水鏡の風魔法版のようななのでしょうか?
試しに耳に付けて使用してみますと、ノイズのようなが走った後に東の魔様とお話が通じました。
「ご機嫌よう、東の魔様」
「こんにちは、巫長。話しがあるみたい、ね」
「シャルル様に魔王の種をお渡しになったというお話ですが、本當なのでしょうか?」
「本當、よ」
「どうしてそんなことをなさったのですか。貴がそんな真似をなさらなければ悲劇は起きなかったのではありませんか?」
「悲劇?悲劇って何かしら?長く生きてるとねそんなことはどうでもよくなってしまうものなの、よ。面白いことが起きればいいの、よ。魔王を生み出すのも面白いことの一つ、ね」
「そんな理由でシャルル様を魔王にしたというのですか!」
「そう、よ。アドルフには才能があったから、ね。面白そうだったし育ててみたの、よ」
「あんまりですわ」
「でも、魔王になってもあまり活躍しないみたい、ね。確かに魔は活化したけど、それだけみたい、よ」
「ヨハン様が魔人にされてしまったんですよ」
「そうなの?でも、魔人の一人ぐらいいいじゃない、の。私なんてなんにん魔人を作ったか覚えてない、わ」
「はい?」
「なぁに?」
「貴が魔人を作った、ですって?本當ですの?」
「ああ、言っていなかったわ、ね。私は最古の魔王と言われる魔王の1人なの、よ。もっとも他の魔王がまだ生きているかは知らないけど、ね」
「な…」
新事実が出てきてまたもや頭が混してしまいました。
つまりはこういうことなのでしょうか?
東の魔様は最古の魔王として退屈を持て余していらっしゃって、その退屈しのぎに新しい魔王や魔人を生み出して世界を混に陥れているということなのでしょうか?
そんな理不盡なことがあっていいのでしょうか?
「そんな理不盡なことは認められませんわ」
「理不盡でも、この世界は力があるものが正義なの、よ」
「そんなっ…シャルル様は貴に利用されたということなのですか?」
「そう、ね。そいうことになるかもしれないわ。でも選んだのはあの子、よ」
東の魔様の言葉に何とも言えない気分になってしまいます。選んだ理由が私が原因だからです。
「話はお終い?ならまたいつでもかけてきていいわ、よ。私は退屈しているから、ね」
そう言って通話は切れてしまいました。
なんということなのでしょうか、世界はこうも力ある方々によって弄ばれているのですわね。
これはもう一度シャルル様とお話をしたほうがいいのかもしれません。
私が避けなければシャルル様と會話することぐらいは可能ですものね。夜遅くにですけれども。
そうして私は早速というじにその夜にシャルル様のお部屋でお帰りをお待ちしておりました。
やはり日付が変わったころにお戻りになったシャルル様は、この間見た時よりも幾分憔悴しているようにじられて不安になってしまいました。
「シャルル様、お話がございますの」
「なにかな、し怖いですね」
「32年前と22年前の記録を確認したり、ボルドロウ家に行ってお義母様とお話をいたしましたり、もう一度東の魔様とお話したり致しました。そうして私なりに々考えましたけれど、混してしまいまして、やはりシャルル様にもう一度お話をお聞きしようと思って今日は待っておりましたのよ」
「そうですか」
シャルル様はし考えて口を開きました。
「私は魔王になったことを後悔はしていません。レイン、貴を手にれることがこうしてできたのですからね」
「シャルル様」
シャルル様はそっと私の頬にれてらっしゃいます。
「魔王になるということは人とは違う時間を生きるということになります。それを覚悟しても貴方を手にれたかったんです。ヨハンのことは、……そうですね、羨ましかったとでもいうべきでしょうか?」
「羨ましかった、ですか?」
「ええ、貴の夫の地位につけるのですから羨ましかったのですよ」
「シャルル様は、どうしてそこまで私をしてくださるのですか?私など婚約者2人に浮気をされるような魅力のないでございますのよ」
「いいえ、貴は十分に魅力的です。あの2人が分かっていなかっただけで貴を手にれたいと思う男は大勢います」
「そうでしょうか?」
「そうですよ。私は貴を手にれるためなら何でもしたいと思ってしまったのです」
「……病的でいらっしゃいますわね」
「自覚はありますよ。けれどもどうか私のことを見捨てないでくださいレイン」
「見捨てるなど…」
言って、この間思わず手を振りほどいてしまったときのことを思い出してしまいました。もしかしなくとも、今憔悴なさっているのはあのことが原因なのでしょうか?
「シャルル様、眠っていらっしゃいますか?」
私は頬にれられた手にそっと自分の手を添えてシャルル様の顔をじっと見つめます。
「早く休戦協定を結んでしまわなくてはいけませんからね。全く一人芝居も楽ではありませんよ」
「一人芝居ですか」
「ええ、南の魔王役とその魔王との間にってやり取りをする樞機卿の役の一人芝居です」
「でしたら早く終わらせてしまえばよろしいではありませんか」
「そうしたいのですが、王宮が絡んできますので中々進まないのですよ」
「王宮は難しいことを要求してきているのですか?」
「活化した魔の討伐を積極的に行なってしいという要請ですね。けれどもそれをけてしまいますと私はここからいなくならなければならなくてはいけませんから、せっかくレインを手にれたのに意味がなくなってしまいます」
「シャルル様がいなくなってしまうのは嫌ですわ」
「そう言ってもらえてうれしいですよ。いなくなってしいなんて言われてしまったら、それこそ絶で死んでしまうかもしれません」
「シャルル様、申し訳ありません」
「レイン何を謝ることがあるのですか?」
「々ですわ。私、何も知らずにシャルル様を苦しめておりましたのね」
ポロリ、と涙がこぼれてしまいました。
シャルル様は顔を近づけてその涙を吸うと、目に、ちゅっ、と音を立ててキスをしてくださいました。
「泣かないでください。…もっといろいろ用意が整ったらお話しようと思っていたのですが、レイン」
「なんでしょうかシャルル様」
「私と一緒に神殿の外に出てはみませんか?」
「え?」
そんなことが出來るはずもありません。私は巫長ですし、シャルル様は樞機卿様でいらっしゃいますもの。
「魔退治という名目で大規模な討伐隊を組みます。その際に行方をくらませれば、私たちはこの神殿から逃れることが出來るのですよ」
「そんなことが可能なのでしょうか?もし失敗してしまえば一生神殿から、今の地位から逃れることは出來ませんわ」
「私は、いずれ近いうちに樞機卿の地位から去るつもりですよ。魔王になってから私には老いというものが発生しておりませんからね」
「そうなのですか?」
「ええ」
「……では、いつか私が先に死んでしまうのですね」
それは、なんだかとても悲しいことですわ。
「それなのですが、2人で無事に神殿から逃れられた暁には、レイン、貴は私の魔人になってくれませんか?そうすれば長い時間を一緒に過ごすことが出來ます」
「私が魔人になるのですか?」
「ええ」
「……考えさせてくださいませ」
「考える時間は沢山ありますよ。これからそれこそずっと」
「それは、選択肢が有るようで無いのではないのではないでしょうか?」
「だって私はもう貴を手放したくないのです」
シャルル様はそう言ってそっと私を抱きしめてくださいます。相変わらず優しい香りがして心がほっとするようにじられます。
思えばずっとこの香りに守られてきているようなじさえしますね。
「シャルル様、本當にどうして魔王になんてなってしまわれたのですか」
「私のわがままですよ」
「噓ですよね、私のせいですよね?」
「いいえ違います。あえて言うのなら國のせいです。あのままこの神殿に居たのなら、貴は何事もなく暮らせていたのに、この國が貴の生活をしたのが悪いのですよ」
「…そう、かもしれませんわね」
「ええ、ですからこんな國も、それをけれた神殿も捨ててしまいましょう」
「けれど…」
「大丈夫です。レインには私がいますよ」
「シャルル様」
本當にいいのでしょうか?私がいなくなってしまっては、殘った巫や子に負擔がかかってしまいますし、せっかく親友になったドロテア様が心配なさってしまうのではないでしょうか?
殘された方々のことを想うと中々決心がつきませんわね。
「レイン、どうか私と生きてください」
「……シャルル様は、私がいなくなってしまったらきっと」
「ええきっと邪悪な魔王になってしまうでしょうね」
「それは困ってしまいますわね」
「そうですよ、大変な事ですよ」
それはきっと數十年先の話しになるのでしょうけれども、世界を危険にさらすのはためらわれてしまいますね。
「勇者様に、もう大怪我をしないようにお説教をしなくてはいけませんわ」
「え?」
「だって、もし私がいなくなってしまったら、誰が勇者様のあの大怪我を治すというのですか」
「レイン」
「…私、ショックでしたのよ」
そう、夫が魔王をしていることを他のから聞かされるだなんて、まるで浮気相手から浮気をしていることを聞かされることよりもずっとショックな事でしたもの。
「だから責任を取ってくださいませ」
「責任ですか?」
「ええ、私を一生手放さないでくださいませね」
「っ!ええ!もちろんです」
……本當に仕方のない方ですわね。きっとこの方は私がいないとだめになってしまいますのね。
もしかして東の魔様はだから私に教えに來られたのでしょうか?このままいけば老いないシャルル様を不審に思う方が出てまいりますし、いずれ近いうちに樞機卿の座を降りることになったでしょう。
そうなれば私はそれについていくことは出來ませんものね。
世界をかき回しているように見えて、実はただ、母親が子を心配しているだけなのかもしれませんわね。
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