《妹は兄をする》5―兄妹―『い記憶』
それだけじゃない。
もっと嬉しい事があった。
兄がその指を私に、はめて
くれたのだった。
お兄ちゃんは私に指をはめると、
真っ直ぐに言った。
「梨乃似合うよ!」
私は兄のその言葉に顔を赤くして
がキュンと、ときめいた。
「お兄ちゃん…!」
私は嬉しさを込み上げると、涙を拭いて兄に無邪気に抱きついた。
「優お兄ちゃんありがとう!」
「指大切にするね!」
私は満面の笑顔で兄にそう伝えた。
兄は私に照れると、恥ずかしそうに前を歩いて、すたすた何処かに歩いて行った。
私は後ろから兄のあとを追いかけた。
「待ってよ、優お兄ちゃん!」
「待って!」
お兄ちゃんは黙ったまま、前を黙々と
歩いて行った。
神社の近くに差し掛かった時、空に花火が打ち上げられた。
夜空には、大の花が咲いていた。
艶やかなをつけた花火が、いくつも
夜空の上に打ち上げられていたのだった。
私は思わず呟いた。
「わぁっ綺麗…!」
私は夜空に打ち上げられた花火を
みながら、そこで立ち止まった。
そして、不意にそこで両親との
約束を思い出した。
花火が始まったら両親のもとに帰ってくるようにと、言われたのだった。
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