《妹は兄をする》19―家族―『小さな幸せ』
「梨乃!」
私は後ろから兄に聲をかけられた。
「え…、お兄ちゃん?」
後ろを振り向くと、兄がそこに
立っていた。
「遅いぞ梨乃」
「置いて行こうかと思ってた!」
兄はそう言うと、私の手を
いきなり摑んだ。
「えっ、お兄ちゃん」
「さきに學校に行ったんじゃ…」
「バーカ!」
「俺はそこまで冷たい男じゃねーよ」
「それに待ってって言ったのは、そっちだろ?」
「まあ、お前にお弁當も貰ったし…」
「仕方なく待ってやったんだ」
「ありがたく思えよ!」
兄はそう言うと、私の手を
握ってくれたのだった。
ちょっと偉そうだったけど、お兄ちゃんが私の手を握ってくれた。
私はそれだけでも嬉しかった。
「ありがとうお兄ちゃん…!」
私は微笑むと隣で歩きながら、
兄にそう言った。
兄は橫でちょっと照れくさそうな
顔をしていた。
兄はたまにだけど、私と手を繋いで
歩いてくれる時があった。
私はそれが嬉しかった。
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