《妹は兄をする》7―妹―『兄達の悩み』

「どうかしたのか?」

「え…?」

誰かに聲をかけられると隣を振り向いた。振り向くとそこには蓮一がいた。

「どうした?気が抜けた顔して、お前らしくもない。そのパンそんなに不味かったか?」

「あぁ、蓮一か…――」

蓮一に聲をかけられると、俺はフと目をそらしてため息をついた。

「なんだお前、今日はパンか?」

「いつもの弁當はどうした?」

「…っさい、ほっとけよ」

「今日は妹ちゃんに弁當、作ってもらう日だろ?」

「……」

「なんだ。ケンカでもしたのか?」

「黙れ、こっちはそれどころじゃないんだ」

そう言って言い返すと、蓮一は顔につけている眼鏡を人差し指で上にあげて、くすっと笑った。

蓮一は俺と同い年で、背もそんなにかわらない。ついでに頭も良い。績優秀で、常にクラスのトップだ。

それに中も大人だ。そこらのガキみたいな連中よりも、大人の考えをもっている。

そう言った所が、俺と蓮一は気が合う。

こいつとは中學の頃からの腐れ縁だ。

昔から何も変わっていない。

そうやって笑うところとか、余裕なところも、相変わらずこいつらしい。

ついでにキザなところもだ。蓮一は俺が唯一、心を許せる「友」だ――。

「妹ちゃんにお弁當作ってもらえなかったのか?」

「それは殘念。梨乃ちゃんの卵焼き、味しいから楽しみにしてたのに、食べれないんじゃ諦めるしかないな」

「まあ、早く仲直りしろよ。でなきゃ俺が困るからな」

蓮一はそう言って優斗に話すと、

隣でくすっと笑った。

「うるさい蓮一!俺はそれどころじゃねーって言ってるだろ!?」

「じゃあ何か?」

「もっとおおごとか?」

蓮一は不意にそう言い返すと、優斗は口を閉ざして黙り込んだ。

「…お前には関係ないだろ。それに妹の弁當、毎回狙ってるんじゃねーよ!」

「お前に盜み食いされちゃ、こっちのオカズが減るから迷なんだよ!」

そう言って優斗は迷そうに彼を睨んだ。

「いいだろ親友。俺達、仲が良いんだから――」

「仲が良いって、勝手にお前がそう思い込んでるんだろ?」

優斗は蓮一に左肩を抱かれると然り気無くその手を払った。

「俺の妹が作った弁當を狙うくらいなら、自分の妹に作ってもらえばいいだろ…!?」

優斗がそう言い返すと、蓮一はそこで

ため息をついた。 

「…妹って繭のことか?」

「冗談はよせ、うちの妹は料理はしない。それに臺所に立って料理している姿なんか見たことがない」

「殘念だがうちの妹は、作る側ではなく。食べる側の専門だ。だからお前の妹が羨ましいよ」

蓮一は優斗にそう話すと、軽くため息をついた。

「そ…そうか、あいつ料理出來ないのか。うちの妹とは大違いだな」

「だろ?」

「でも、あんな妹でも可い所はあるんだ。それは俺がよく知っている」

「そ、そうなのか…?」

「ああ、そうさ…――」

蓮一はそう言って優斗の顔を黙ってジッと見つめた。2人は青空が広がる屋上の下で、何気ない會話を続けた。

 

「――まあ、お前の妹も……」

「ん?」

優斗はフと右手を見た。すると蓮一が彼が持っていたパンにかぶりついていた。

『ちょ、おまえーっ!!』

そう言って慌ててる間に、蓮一は彼の

食べかけのパンを勝手に食べていた。

一口食べると、隣でモグモグ食べた。

「蓮一お前、勝手に人が食べてるパンをたべるなっ!!」

そう言って怒鳴ると、蓮一はケロッとした表で言い返した。

「いいじゃないか友よ。どうせそのパン、食べないんだろ?」

「な、なんだと…!?」

「う~ん、このエビカツバーガーはなかなか味い。どれ、もう一口いただくかな?」

「あっ、こらお前っ…!!」

蓮一はそう言って彼が持っているパンに、再びかぶりついた。

そして今度は、そのパンを全部食べた。

『あ゛~~っ!!』

「不思議だ。ただのエビカツバーガーなのに、お前が持っているだけで味しいなんて……」

「そう言って人のパンを勝手に食べるなよっ!!」

優斗は彼にエビカツバーガーを全部食べられると、キレ気味になりながら詰め寄った。

「なんだ。食べたいのか?」

「あぁ?」

「ほら、遠慮なく食べろ。まだ殘ってる」

「なっ…!!」

蓮一はいきなり優斗を下に押し倒すと、口移しで口の中に殘っているを分け與えようとした。

『やめれぇ~~っ!!』

その瞬間、拳が飛んだのは知るまでもない。

 

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