《妹は兄をする》10―妹―『兄達の悩み』

蓮一は、優斗の話しに思わず固まった。

あまりにも予想外な話しに返す言葉も出なかった。蓮一は唖然とした表でジッと、優斗の方に目を向けたのだった。

「……優斗、お前なに言ってるんだ?」

「妹にって……お前、それって……」

蓮一は耳を疑うとおもわず聞き返した。優斗は聞き返されると、下を向いた。

「……それって梨乃ちゃんにか?」

優斗は蓮一にそう聞かれると、

僅かにビクッと反応した。

 

「わりぃ、今のは聞かなかったことにしてくれ…!」

「あっ、おい…!」

優斗はそこで揺すると、急いでその場を離れようとした。蓮一はとっさに彼の腕を摑んだ。

「待てよ、今の話し本當か…?」

「蓮一……」

優斗は右腕を摑まれると、黙って蓮一の顔を見つめた。

「優斗、今の話しどう言う意味だ?」

「…ははっ、今のは冗談だ。気にするな」

「冗談?」

「そんなわけないだろ。ちゃんと俺に話してみろ」

「……」

優斗は蓮一に問い詰められると、摑まれた腕を振り払った。

「……誰にも言うなよ」

「ああ、そんの言うわけがないだろ?」

蓮一は優斗にそう言われると、真剣な表で答えた。

 

優斗はフェンスの下にしゃがみ込むと、ぽつりぽつりと、昨日の出來事を話した。

はじめは揺したが、何となく狀況が摑めてくると、蓮一はフェンスに背中をつけて寄りかかった。

「……なるほど、それは驚いたな。でもに反応しない男はいないだろう?」

「むしろ反応しない方がおかしい。そうだろ?」

「……」

蓮一は冷靜にそう諭すと、落ち込んでる優斗の頭を軽くでた。

「…そうじゃねえよ。上手く言えねえけど、そうじゃないんだ」

「じゃあ、何だ?」

「あの時、自分の妹にしたって言うのか?」

蓮一はあえてそう尋ねると、チラッと優斗の顔を見た。

「上手く言えないけど…――」

「その……」

「あの時……」

「あの時、梨乃が目の前にいたとき…――」

「おれ……」

優斗は昨日の出來事をしずつ、思い出しながら話した。

「こんなこと言ったら、変な奴なんだけどな……」

「いや、変な奴なんだけど……」

「あの時、梨乃が妹じゃなく、普通のの子に見えたんだ。そしたら何だか急に、梨乃にってみたいっておもった」

「え…?」

「…それで梨乃のってみたいっておもったら、気がついたらってた」

蓮一は優斗のその話しに表が固まった。

「おまえそれってつまり、そう言うことか……?」

「…妹である梨乃ちゃんに、したってことだろ?」

「わからない。でもあの時、一瞬だったけど梨乃にりたいって思ったのは本當だ……」

「自分の妹にしたなんて最低だよな。 自分でもヤバい奴だって思ってるよ…――」

「兄妹なのに、こんなことダメだろ?きっとバチが當たるぜ……」

「最低だよ俺。梨乃にあんな顔させるなんて、きっと驚いただろうな……」

「…優斗」

そう言って話す彼の表はどこか暗かった。優斗は下にしゃがんだまま、小刻みに震えていた。 

いけないことをしてしまった子供のように小さく震えると、

自分の揺を必死で隠そうとした。

 

「じゃあ、お返しに俺もお前に教えてやる。俺は"ある"すくなくても、あの時の俺は どうかしてたんだ…――」

蓮一は、真っ直ぐな瞳で優斗を見つめると、"ある"と答えた。

親友の口から出た言葉に、優斗は思わず息をのんだ。

 

「蓮一……」

「蓮一、お前…今なんて……?」

優斗は唖然となると、そのまま見つめ返した。蓮一はその視線にフと笑うと、後ろを向いてとぼけた。

「――さあ、なんだろうな。まあ、余り気にしないことだ。むしろ兄妹でいたいなら、尚更だ。変に気を使うと梨乃ちゃんだって困るだろうしな」

「さて、午後の授業が始まりそうだ。悪いが俺は先に行く。お前はそこでもうし休んでろ、じゃあな」

蓮一はそう言い殘すと、彼の前から遠ざかって行った。そして非常階段の扉を開けると、彼はそのまま教室へと戻って行ったのだった。

 

優斗は自分のモヤモヤした思いを蓮一に

打ち明けるやいなや、彼から耳を疑うような言葉が返ってきた。

蓮一はサラッと、そう言い殘すと先に教室へと戻って行った。

優斗はそれ以上、彼から聞けなかった。

ただ彼なりの最後のアドバイスだけが心のに殘った。

"あまり気にするな"

そう言われても、優斗は余計に気になった。

妹のれたいと思う「衝」。そこに優斗は、自分自が許せなくじた。

同じ"兄妹"なのに俺は、どうかしている――。

その罪悪は、彼の心に重くのし掛かったのだった――。

 

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