《妹は兄をする》11―妹―『兄達の悩み』

その日の放課後、蓮一はバイトがあると言って先に帰って行った。

屋上で2人で會話した話が、まだ頭の中に殘っていた。

あいつは余り気にするなと言ったけど、そんな簡単なことだろうか?

家に帰れば梨乃(妹)がいる。

俺は、妹の前でどんな顔をすればいいのか解らない。 

あの時、無意識にれたとは言え、梨乃は俺の大事な妹なのに…――。

蓮一が先に帰ったから、俺は一人で帰ることにした。

途中で公園に寄り道すると、誰もいないベンチに腰を降ろして座った。

ボンヤリと周りの景を見ながら、頭の中を空っぽにした。 

だけど急に昨日のことがよみがえった。

お風呂場での景をフと思い出すと、俺はたまらず、自分の鞄から教科書を取り出して適當に読み始めた。

ほんのしの気晴らしになると思った。

だってそれ以上、考えたら頭がパンクする。

俺の頭の中はいつの間にか、妹のことで

いっぱいになっていた。

それにこのまま家に帰るのも気まずい。もしかしたら、梨乃が先に帰っているかも知れない。そしたら俺は――。

そんなことが頭の中でグルグル回っていると、そこで一瞬、頭に何かが當たった。

周りをキョロキョロ見渡すと何もなかった。おかしいなと思い、首を傾げると、俺はため息をついてベンチから立ち上がった。

もういいや、どうにもなれ――。

そんな思いでベンチから立ち上がると、俺は仕方なく家に帰ることにした。

なるべく梨乃と顔を合わせない

ようにしよう。

蓮一も言っていた。相手に気を使うと、

逆に気まずくなる。

つまりはそう言うことだろう。

俺も妹と気まずくなるのは困るから蓮一が言った通りそうしようと、思いついた。

そんな時、後ろから誰かに聲をかけられた。

「優斗お兄ちゃん待って!!」

その聲に反応すると、俺は後ろを

振り向いた。

するとそこに梨乃がいた。

その瞬間、妹の顔を見るなり、自分の心臓がドキッとした。

梨乃は走って呼び止めると、

俺の腕を摑んできた――。

 「梨乃…!?」

 

 

 「優斗お兄ちゃん…!」

 

梨乃は息を切らしながら俺の腕を摑むと、パッと顔を上げた。

 

 「よかったぁ…!」

 「追いついた!」

 

 「梨乃…?」

 

俺は黙ると、ジッと妹の顔を見つめた。

 

 「あのね、お兄ちゃん…――」

その瞬間、俺は妹の言いかけた言葉を遮るように、的な言葉をぶつけた。

 「梨乃、昨日のことは忘れろ…!」

 

 「え…?」

 

「優斗お兄ちゃん…?」

 

 「俺べつにお前のを見たくて、見たんじゃないからな!」

 「あれは事故だったんだ!」

俺は思わず的な言葉をぶつけると、その場で目を反らした。 

 

 「優斗お兄ちゃん……」

 

梨乃はし驚いた表をになっていた。そして俺の顔をジッとみてきた。俺はその視線に気づきながらも目を反らし続けた。すると梨乃は俺の摑んだ腕を黙って離した。

 

 

 

 「うん、わかってる。大丈夫だって…!」

 

 「あれは事故だったんだから、そんなに気にしないで!」

 

 「梨乃……」

 

 「もう、そんなに落ち込まないでよ」

 「なんか笑っちゃうじゃん」 

 

 「あのなあ…――」

 

梨乃は聞き分けがいいのか、ケロッとした表でそう言ってきた。

俺はあのあとからずっと悩んだのに、妹は案外、普通だった。

結局は自分の悩み過ぎだったのかも知れない。そう思った瞬間、何故か急に疲れたため息が出た。

 

そのあとは々あった。

自分の頭に何故かゴミがのっかていたり、蓮一の妹が出てきて、なんな知らないけど口喧嘩してバトったり。それを梨乃に仲裁されたり、とにかく々なことがあった。

そして最後、俺は妹と仲良く

帰ることにした。

梨乃もアレは"事故"だと言った。逆にそう言ってもらった方が気が楽だった。

同じ屋の下で暮らしている以上、お互い気まずくなるのも嫌だったし、何より妹に嫌われるのは兄としても辛い。

だって俺達は兄妹だ。 

それ以上でも、それ以下でもない。

を分けた兄妹である以上、それが普通の考えだ。

なのに俺は妹の梨乃が時々、普通のの子に見えてしまう時がある。

そんな時、俺は自分自を見失いそうで怖くなる。俺は梨乃にとって、"兄"でいなくちゃならないのに…――。

 

 

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