《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》34
どうしてナハトが急にこんな話をしたのか? 俺には分からなかった、ただ1つ分かるのは……告白にはきちんと答えなければいけないと言う事だ。
「急にこんな事を言って申し訳ないね……」
長い沈黙を切ったのはナハトは深々と頭を下げる。
「いっいや、その、気にするな」
口ごもる俺、けない事に酷く揺してしまっている、くっ……こんな時はどうすれば良いんだ! 苦悩する俺、するとナハトが目の前のフレンチトーストをフォークで小さく切り一口食べる。
「どうしても言いたかったんだ、迷だったかな?」
「いっいや、迷じゃ……ない」
「くふふ、そうか……」
大人びた表でフォークを置き、今度はコーヒーを飲む。
「どうして惚れたか聞きたいかい?」
「きっ聞きたい」
俺もつられて紅茶を飲む、ほんのしだが慌てていた心が落ち著いていく、ナハトが俺の事を好きな理由、いきなり告白する位だ……相當な理由があるんだろう、ナハトはティーカップを置き俺の目を見る、恥ずかしさが見てとれるな…そんな表をしながらナハトはゆっくりと口を開ける。
「一目惚れ…だね」
……え? ひっ一目惚れ……だと?
「えと、更に詳しく話して良いかな?」
「あっあぁ……」
一目惚れって街を案した時だよな? その時以外考えられないからそうだろう……そう思った時だ、ナハトが慌てて口を開く。
「じっ実は、初めてシルクを見たのは何年も前なんだ」
「なっなに! でも俺には會った記憶がないぞ?」
何年も? 一何時の事を言っている? 駄目だ……思い出そうとしてもそれらしいが思い當たらない、と言うかナハトは何年も前にこの街に來ていたのか? いや……だとしたら可笑しくないか? 何年も前にここに住んでいるのなら俺に街を案させなくても街の事は分かったんじゃないか? いっいや……その事は今は考えないでおこう、今は目の前の事に集中だ!
「わっ我は恥ずかしくて遠くから見ていたんだ……あっ會っていないのは當たり前だね」
「そっそうなのか…」
ずっと見られていたんだな、全く気付かなかった。
「君に聲を掛けたのは告白する為だよ……時間は凄く掛かってしまったけどね」
「………」
ちらちらと此方を見てくる、凄く気まずい、どうすれば良い? 告白なんて簡単に返答できるじゃないだろう、しかも俺とナハトはと出會って過ごした時間はあまりに短い……でも短いながらもナハトと過ごした時間は濃かった。
「返答に困るのは無理もない……変な事を聞いてしまったね」
「いっいや、気にするな」
と言ってしまったが……どうする? この場合はどう答えれば良い? 告白されたのなんて初めてだ、しかも真正面から堂々とだ……中途半端に答えちゃ駄目だ! yesかnoで答えないといけない、俺は頭を人差し指で押さえ考え込む。
「真剣に悩んでくれるんだね」
「あっ當たり前だろ……」
「くふふふ、普通急にこんな事を言われたら変に誤魔化すかと思ったよ」
正直それが一番楽な方法だろう、だがそれじゃ駄目だ……自分も本人も納得しない……真剣に言ってきたんだ、こっちも真剣に考え答えないといけないんだ。
「當たり前か、そんな真剣さも素敵だね」
甘く囁く様に喋る。
しい視線を向けられてくる、ナハトの大人びた顔でそんな表をされると考えが纏まらないじゃないか。
「取り敢えず、我と過ごした時間の短さは置いてしい……率直に惚れているかそうでないかを答えてくれると嬉しい」
そう……だよな、この際出會って過ごした短さは置いておく、率直に好きか嫌いかを考えよう。
「わっ分かった……」
そう答えて唾を飲み込む、どくんっどくんっーーと心臓の鼓が大きくなり喫茶店に流れる靜かな曲調のミュージックもはっきりと耳に聞こえてくる、俺は目を瞑り深く深呼吸してナハトの事を考える。
出會って初めの事、街を案した事、からかわれた事、雨宿りさせた事、思い出と言ったらこれ位……でもその思い出の1つ1つが濃かった、そんなナハトと居て俺は楽しかったのか? 言うまでもないだろ……楽しかったに決まってる。
「………っ」
し恥ずかしい事もあった、でもそれが嫌かと言われれば嫌じゃない……あぁっもう! ぐだぐだ考えてたら切りがない! 俺は目を見開く! すると驚いた様子のナハトが目に寫る。
「結論が出た……言うぞ」
再び深呼吸して気持ちを落ち著ける……さぁ言うぞ! 覚悟を決めろ俺!
「うっうむ……」
付き合いは短いが俺はなくともナハトに対して心がどきっとした事が何度もある、付き合いが短いだとかそんなのは今は置いておく、今は答えを出すべきだ……俺の答えは。
「俺は……なっナハト……にほっ惚れている……」
その一言を言うのに神が磨り減って行くのをじた、そして急激に恥ずかしくなりが震えてくる、それを聞いたナハトは、ぽかーんと口をあけて呆けている。
「……すっすまない、もう一度言ってくれないか?」
「明らかに聞こえてたよな? 絶対に言わないからな!」
あんな恥ずかしい事を何度も言えるか! と言うか何だよこれ、こんか告白ってあるのかよ!
「ほっ本當に惚れているんだよね?」
「そう言っただろう……」
ぷしゅぅーーと湯気が上がる程に顔を赤くするナハト、すると安堵したのか笑みを溢す。
「よっよかったぁ……」
けきった表…よっぽど嬉しいんだな、そんな顔されると俺まで嬉しくなってくる、このままお互い恥ずかしさのあまり黙ってしまう……その様に思えたがナハトは驚くべき事を口にする。
「我が去る前にそれを聞けて良かった」
「………え」
それは今まで以上に衝撃的な言葉、ナハトは突然変な事を言うが今のはずば抜けて急に変な事を言った。
「さっ去るってどう言う事だよ……」
「そのままの意味だよ、我は今日この街を去る」
この街を去る……その言葉が頭の中で何度も響き渡る、もうさっきから驚き過ぎてどうにかなってしまいそうだ。
「街を去る前に言っておきたかったんだ」
それは間違いなく告白の事だろう、別れる前に自分の気持ちを伝えたかったと言う訳か……。
「まっまぁ、気持ちを伝えるとは言ったけど……良く分からないじになってしまったね?」
「そっそうだな……」
付き合った時間が短いのにも関わらずお互いの事を好きだと言った、他の奴らからしてみれば、軽いと言われても仕方ないだろう、だが好きだとナハトに言った瞬間その気持ちが込み上げて來るのが分かった、俺……をしたんだな。
「でも我の気持ちは本だ……シルクもだろう?」
「っ! そっそうだ」
これを他の奴らに見られていなくて良かった、こんな狀況見られたら死んでしまう。
「くふふっ、顔が赤いね……シルクは可いな」
「顔が赤いのはお互い様だ阿呆!」
ばんっ! とテーブルを強く叩く、その瞬間周りのお客がこっちを見てくる、 あっ……やってしまった、そう思って軽く頭を下げる、そんな姿を見て口を押さえて笑うナハト。
「くはははっ、あまり騒いではいけないよ?」
「誰のせいで騒いだと思ってるんだよ!」
そう俺が言っても何処吹く風のナハト……すると笑っていたナハトが一変して真剣な表になる。
「約束事をしないか?」
「やっ約束事?」
またも急に変な事を言い出した、もう此処までくれば慣れてしまった。
「シルクと我は互いに好き同士だ」
「……あぁ」
改めてそう言われると、やはり恥ずかしい。
「必ず再開するのと、互いに約束をするんだ」
「互いに……なっ何をだ?」
俺がそう言うとナハトは微笑する。
「し遂げたい夢だね」
「……ゆっ夢!? おっおまっ何を言ってるのか分かってるのか?」
慌ただしく話していると俺の口を手で塞ぐナハト。
「その様子だときちんと覚えててくれたんだね、嬉しいよ…」
ナハトの夢は完璧なになって素晴らしい嫁になる事、こんな事……ちょっとやそっとじゃ忘れらる筈がない、と言うかその夢の嫁の相手って俺だよな?
「さてシルクは……」
「いっ言うな! 改めて言う事じゃないだろう!」
商いで儲けた金で好きな人に最高の結婚式を開く……その相手が決まってしまったと言う訳か。
「約束を果たしたら結婚式を開こうじゃないか」
「もっもう結婚の約束をするのかよ……」
「當たり前だ、我はシルクと結婚したい!」
そんな堂々と言うな! こっちの気持ちも考えろ!
「……なっ何か言ってくれないのかい?」
「恥ずかしくて言えないんだよ阿呆…」
とは言え言わないと煩そうだ……言うは一時の恥…言ってしまおう。
「やっ約束を果たしたらな……」
「……くふふふ、婚約立だね、これは今までに類を見ない位妙な婚約じゃないかな?」
「言うな……自覚してる」
こっこんな簡単で良いのだろうか? 今俺達はぽんぽんっーーと、とんでもない約束をした、軽い気持ちでしたんじゃ斷じて無い! だがとてつもなく妙な気分になってしまう。
「一応言っておこう、これは軽はずみで言ってないからね?」
「あっ當たり前だろ……こんな事簡単に言うのは可笑しいだろ」
もうナハトの顔を見れない……だから橫を向く。
「さて互いが彼氏彼になった所申し訳ないのだが……」
「……なんだよ」
そうだ、俺とナハトはカップルになったんだよな? 凄く簡単にだが……。
「我はもう行かないといけない」
そう言って席を立つ、ナハトは悲しげな表を見せる。
「では何時か必ず再開しよう、またね」
「あっあぁ……」
そう言って俺から遠く離れて行くナハト……「さよなら」ではなく「またね」その言葉が深く心に響いた。
「フレンチトースト……殆ど殘してるじゃないか」
全く……最後まで食べていけよ、勿ないな。
この時俺は思ったんだ、ナハトは泣き出しそうになったからこの場を去ったんじゃないのかって? だからさっさとこの場から去っていった、実にさっぱりとした別れになってしまった。
「散々やりたい放題やって帰ったな……嵐みたいな奴だ」
そう言って、ナハトの殘したフレンチトーストを一口食べる。
「んっ……甘い」
卵とパンの風味が口いっぱいに広がる、蜂の甘さも合わさって旨味でお腹が満たされる。
「會った回數がなかったのに好きになるなんてな」
人を好きになるのに時間は必要ない……そんな言葉は何処かで聞いた事がある、だが俺とナハトの様に明らかに付き合いが短いのにも告白してカップルになって結婚の約束をわすのはそういないだろう……。
もしかしたらナハトの雰囲気がそうさせた? それとも俺がナハトの事を好きになりすぎた? いやそんな実はない筈なんだが……まぁどちらにしても好きになったのは事実。
「約束……したからな」
約束したからには頑張らないといけない……と、ここである疑問が頭に浮かんだ。
「ん? そう言えばナハトって本當の名前じゃないって言ってたな」
そう思う俺であったが、その疑問はこう自己解決した、それは「再會して聞けば良い」と。
「さてと……行くか」
フレンチトーストを食べ終えた俺は店を出る事にした、さて……まずは何から始めようか、やる気に満ち溢れる俺は立ち上がりゆっくりと足を進める。
この5年後シルクは最長して20になり店を持つ事になる、そしてあると出會うのだが……そこからシルクの生活が一変してしまうのはこの時は勿論知る由も無かった。
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