《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》481
「しまったなぁ……どうしよう、これ」
コリコリと頬を掻きながらどうして良いか分からず、ただ苦笑いする。
ほんと困ったな、どうしよう。
さっきから廊下を歩き回ってる俺は、一旦歩くのを止めて腕を組む。
「ラキュの部屋、一何処にあるんだ?」
行くと決めてそこに向かっているんだが、何処にあるか分からない。
あぁ、思えばあいつの部屋に行くのって魔法で行ってたからな……場所なんて知らないんだよなぁ。
「くっ……完全に失敗した」
行く前に気付けよ……。
くっそ、完全にやる事がなくなった。
仕方ない……ロアの部屋に行こう、そんでもって適當に時間を潰そう。
そう思って向きを変えて歩いたその時だ。
「あら? シルク様」
「ん、あ……」
背後からヴァームの聲がする。
振り替えると、彼は目を見開いて俺を見てた。
「こんな時間にこんな所にいるとは驚きです。いつもならロア様のお部屋にいらっしゃるのに」
言われてみればそうだな。
風呂から出た後は、ロアの部屋に行ってる。
「え、あぁ……今日はな、そういう気分なんだ」
まぁ々あったんだ、その々ってのは詳しく言うのは恥ずかしいから……言わない、問い質されたって言ってやるものか。
「そうですか」
……あれ? 理由は聞かないのか、聞いてくるのかと思った。
「……」
うん、安心したんだが……話が途切れたな、どうしよ。
えと、そうだな……話題がないんなら此処で別れよう。
「えと、じゃぁ……俺は行くよ」
「はい。お気を付けて……あ、シルク様」
「ん、なんだ?」
立ち去ろうと思ったらヴァームが呼び止めて來た。
だから、足を止める。
「いえ、なんでもありません」
「……?」
え、なんにもないの? だったらなんで呼び止めた? まぁ別に良いんだが……。
そう思った俺は、不思議に思いながらその場を去った。
ヴァームが意味深に目を伏せている事を知らずに……。
◇
……さて、わらわは今ラキュの部屋におる。
相変わらず目が可笑しくなるくらい赤で統一されている。
「姉上、ねぇ……ちょっと、目、目がさ……殺気に満ちてるんだけど、なんでかな?」
「さぁ、何故じゃろうな」
そんな部屋に現れたわらわは、ここに來るなりソファーにぐでぇっと座っておるラキュに素早く近付き馬乗りになり睨みを効かせておる。
そして、拳を作りそれを振り上げる。
そしたら、ラキュは「へ?」と間抜けな聲をあげたあと、ぶわっと汗が吹き出る。
「ちょっ、なに無言で毆ろうとしてるのさ! ねぇ! ちょっと!」
「やかましい奴じゃな……理由などお前が良く知っとるじゃろ」
「はぁ!? 知らないから!」
目を見開いて否定するラキュは、わらわの腕をがしっと摑み引き剝がそうとするが、わらわはそれを力づくで耐える。
ふむ、知らんと來たか……この愚弟め、苛つくのぅ。
「っ、ちょっ! 管浮き出てるよ! まさか本気で毆る気じゃ……」
「毆られて思い出すがよい!」
「っ! あぶなっ!」
「ちっ……わしたか」
本気で顔面めがけて毆ったが……首を振ってわされた、惜しいの。
「わしたか……じゃないよ! ねぇ、今回本気で毆ろうとしたよね? ほんっとうに何にも心當たりないからさ、理由教えてよ!」
こやつ、そんな事言って知らを切るつもりじゃな? と言いたい所だが……この慌てよう。
まさか、本當に知らないのか?
「……本當になんにも心當たりがないのかえ?」
「さっきからそう言ってるよね!」
だから確認してみると、どんっ! と突き飛ばされてしまった。
軽くふらついたわらわは、難しい顔をして口に手を當て考える。
むぅ……だとするとアヤネの言った事は噓? いやいや、あやつが噓をついた事など見たことがない。
まぁ……付き合い短いからどうなのかは知らんがな。
しかし、あの場で噓をつく……なんて事はしないじゃろう、だとするとアヤネの言った事は本當。
しかしラキュは心當たりがないと抜かしおる。
と言うことは……こやつ、自分が何をしたのか分かっとらんな?
くふふふ、じゃとしたら余計に腹立たしいのぅ。
「え、なに? なんで急に笑うのさ。こわ……」
なにも知らないで呑気にここでゆったり過ごしていたと。
くふっくふふふ……そうか、知らんのか、知らんのじゃな? だったら教えてやろうではないか、お前が知らずにやらかした事をな。
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