《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》484

ちゃぽんっ……。

靜かな空間、湯気が辺りに漂い何とも言えん景が広がっている。

「はぁぁぁ……やっぱり、風呂はゆったり浸かるのが良いよなぁ」

ちょっとじじ臭い事を言って、肩まで風呂につかる俺。

ちょっと前に言ってた事をしに來たのだ。

実際、あれから數時間程経った。

案外すんなりと抜け出せて良かった、ラキュの部屋から戻った時ロアはいなかったしここに來るときに誰にも出會さなかった。

いやぁ良かった、運が良いな。

皆はどうしてるかは知らんが、俺はこっそりここにやってきたのだ。

「まだ湯が殘ってて良かったぁ」

ちょうど良い溫度の湯が俺を癒す、本日2度目の風呂も良いもんだ。

だが誰かが「掃除だー」とか言ってくるかも知れない。

それまでには出ていかなきゃな。

だが……ギリギリまでっていよう、せっかく來たんだもの。

「あぁぁぁぁ……」

誰も居ないので気の抜けた聲をらし、腳をぐぐぅっとばす。

さいっこうだな、これ……今度から風呂はこの時間に來ようかな。

……うん、そう思うのが遅すぎだな、最初からそうすれば良かった。

「…………」

なんて考えつつ、ぼぉっとする。

じわぁっと額に汗が出てきた、それと指がしわしわになってきたな。

うん、そろそろ出た方が良いかも。

いや、でも……あとしだけってよう。

……結局あれからたっぷりと風呂を堪能した、おはぽかぽかだ。

「良い湯だったなぁ」

ゆったりした表で呟きながら歩いてる俺。

今はロアの部屋に戻ってる所だ、後はぐっすり眠って明日に備えたい。

そうしたいんだけど、そうさせて貰えるかな? ロアかアヤネのどっちがやってきてそうはならない気がする。

だがしかし、めげずに自分のやりたい事をしよう。

頑張れ俺! 自分自で鼓舞しながら歩いてると、ふとあるものが目にった。

「ん……扉が開いてる」

そう、開いてるのだ。

ここは薄暗い廊下、しだけ開いてる扉かられ出てる。

……なんかこう言うの見たら気になって首を突っ込まずにはいられない。

だから早足でそこに近付く。

息を潛めて、ゆっくりとその部屋を覗くと……。

そこにはロアとヴァームがいた。

と言うことはここは、ヴァームの部屋か? ロアの部屋って事は無いな、だってあいつの部屋はここじゃない。

裝棚や、んな服が飾られてるのを見ると……うん、やっぱりここはヴァームの部屋だな。

なんでロアがヴァームの部屋にいるんだ? まぁ……別に良いんだが。

って、ん? なにか……やってるな、あれは……編み、か?

薄暗い部屋、ランプの燈りを頼りにチクチク糸を編んでる。

うぉぉ……あんな細かい事、良くできるなぁ、俺には無理だ。

って、普通にこうやって覗き見てるが……良くない事だよな。

だがしかし……なんか気になる、だからここをけない。

……ごめんなロア、暫く見たら直ぐ居なくなるから編み頑張ってくれ。

「……うぅぅ。ほっぺた痛いぃ」

あ、喋った。

そうか、ほっぺた痛いのか。

って、おいおい……痛そうにしてるが大丈夫か?

「あらあら。なにかあったのですか? あ、良く見たら赤く腫れてますね」

「ん? 今気付いたのか……」

「はい、今気付きました」

おぅ、なんか主人と従者とは思えない會話してるな。

もっと主人を心配してやれよ、めっちゃ不満そうにふくれてるぞ。

あ、いや……ヴァームはあれで心配してるのか、多分そんな気がする。

「相変わらずの反応じゃな」

「はい、何度か見たので放っておいても大丈夫だと判斷しました。何があったのかは察しがつきますよ」

「ヴァームよ、お前は……いや、良い。いつもの事じゃからな」

この従者は全く……と愚癡をこぼし、編みに集中する。

ヴァームは何があったか分かるって言ったが俺は分からない。

「それにしてもラキュめ。あんなに強く打たなくても良いのに」

だから詳しく言ってほしいなぁ? なんて思ってたら話してくれた。

ラキュに打たれたのか、さては何か変な事言ったな? 多分それで打たれたんだ。

「ただ可いって言っただけだと言うのに……」

ほら當たった。

理由は間違いなくそれだ、十中八九ロアが悪いな。

ヴァームもそう思ったのか「うふふ」と笑って。

「あらあら。それは打たれても仕方ありませんね」

と言った。

うん、その通りだ、仕方ないぞ。

俺もそんな事言われたら打つぞ。

「何が仕方ないじゃ! って、あぁぁぁっ!! 編み目が絡まったぁぁっ!」

「あらら。これはここからやり直した方が良いですね」

「なっなんじゃとぉぉっ!!」

あっあはははは。

話しながらやったのか、絡まったらしいな。

えと……ロアが編んでる、あの縦に長いじからして、マフラーだな。

ほぼ出來てたのに、し前からやり直し、これはキツいな。

編んだ事無いからそのキツさは分からないけどな……。

「くっそぅ、まぁたやり直しじゃ」

悔しがるロアを見た俺は、小聲で「頑張れ」と呟いた。

多分聲は屆いてない、いや屆いてたら困るから小さく言った。

その後、俺は靜かに去ろうと思った。

そろそろ離れた方が良い、ここにいるのがバレたら何かと面倒そうだ。

そう思って、覗くのを止めて立ち去ろうとしたその時だった。

「なぁヴァーム、ラキュがな……わらわのい頃の話をしていたんじゃ」

聞き逃せない事をロアが言った。

その瞬間だった、俺はピタリときを止めた。

そして、また扉を覗きこんだ……バレるかも知れないのに呼吸が荒くなってくる、だが俺は気付いてない、気づく筈が無い。

だって……今まさに、ロアが過去の話をするかもしれないからだ。

ラキュから聞いた話の続きが聞けるかも知れない……そう思った俺は、話してくれるのを期待して聞き耳をたてた。

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