《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》485

「ラキュがな……わらわのい頃の話をしていたんじゃ」

しんみりした顔で話しながら、ロアはマフラーを編んでいく。

そんなロアに対してヴァームは靜かに息を吐いて……。

「話していると、また絡まりますよ?」

そう言った。

そんな忠告に対して、首を橫に振るロアは「構わん」と告げた。

「ちょっとな、聞いてしいのじゃよ……いや、相談に乗ってしいと言うのが正しいかの」

張が走る……。

俺は真剣にその様子を見た、もう気付かれるかもなんて事は頭の中には無い。

ただ話を聞く、それだけに集中していた。

はやく、はやく話してくれ……心の中で急かしていると、額から汗が吹き出て來ているのをじた。

いけない……焦りすぎてる、落ち著け、落ち著くんだ俺。

手でを抑え優しくでていると、ロアが続きを話した。

「最近のわらわはな、行が変なんじゃよ、まっ……それはお主もじていると思うがの」

「……」

「くふふ、何も言わんか。図星じゃな……まっ、そんな事は置いといてじゃ」

ふぅ……と息を吐いたロアは、網掛けのマフラーをテーブルに置く。

「やっぱり、ラキュが言った様に自分で言えなかったら他人に言ってもらった方が良いのかのぅ」

自分で言えない……その言葉も気になるが、俺が聞きたいのはロア(おまえ)の過去の話しだ。

早く、話してくれないかな。

そわそわして、ついが前に出るのを抑えつつ口をつぐんだ。

そしたら……。

「一応確認しますが、自分で言いたい事と言うのは……ロア様の過去の事、ですよね」

「そうじゃ。それをシルクに言いたい」

っ!! 自分の過去を……俺に? 一何の為に……。

そう言えば、何度か俺に話し掛けて來てモジモジして話せない事があったが……もしかして、その話をしに來たのか?

「ですが、言えないんですよね……」

「うっうむ」

「だったら、他の方に言ってもらえば良いのでは?」

「あぁ……うぅ、そう……なんじゃがぁ」

「……その渋い表から察すると、自分のプライドが許さないって所ですか?」

「そっそうじゃ……」

「あらあら、なんとも面倒な事になってますね」

あぁ、聞く限り面倒な事になってる。

だけど……一言一句聞き逃せない。

俺にとって、凄く大事な事を話しそうな気がするからだ。

「そう、じゃな。何度もそう言われてムカッとなったがぁ……。いい加減認めた方が良いかも知れんな」

何処か切なそうに話すロアはがくっとうつ向いた。

なんだ? なにか俺の知らない所で何か起きている気がする。

それを今、二人は話している。

正直、もっと近くで聞きたい……だけど俺の存在がバレたら無理矢理茶化されて話してくれないだろう。

だからここは我慢だ、我慢して……ここで聞こう。

「わらわは臆病じゃな。アヤネの一件が片付いて言おう言おうと思って、ラキュや皆に宣言までした」

「えぇ……。そうですね、あの時は驚きました」

なに、そんな事があったのか? 俺……そんなの知らないぞ。

知らないのは……俺、だけか?

「最早プライドどうこう言っとる場合では無いかもしれん。日に日にアヤネがシルクへのスキンシップが激しくなっておる。あれを見ていれば……幾ら無視しても嫌でも気になる。わらわも頑張らねばっ、そう思ってしまうのだ」

……知らなかった。

ロアがそんな事を思ってるなんて。

……って、なんだ? 俺、今……震えてる? なんで、だ? おっ落ち著け、落ち著けよ……俺!

「相當苦しんでますね。ロア様……私、軽率に早く謂えば良いのにとか思ってましたが、謝ります」

「いんや、謝らんで良い。早く言えば良いと言うのは正論じゃからな……わらわの勇気と自信が足らんだけじゃよ。ラキュもそんなわらわを見て、シルクにわらわの過去を話したんじゃろう」

……さっきからロアは悲しそうに大事な事を言ってる。

でも、まだそれが何かは言ってない、だから俺は理解できないでいた。

でも、これだけは分かる……これを聞けば、何か……何かが分かる気がする、と。

「なぁ……ヴァームよ」

「はい。なんでしょう?」

「臆病でヘタレなわらわの命令を聞いてはくれんか?」

すっとヴァームの方を向いて話すロア、その眼は綺麗に澄んだ眼をしていた。

命令……多分、その命令は自分のプライドや想いを圧し殺して出す命令……かも知れない。

その命令、なんて言うかしっかり聞いておいた方が良いかも知れない。

何故かは分からないが、俺の本能がそう言った。

「……シルクにのぅ、言ってしいんじゃ。昔會って共に誓いを立てたはわらわじゃとな……ナハトという言うのはわらわが作った偽名、昔一緒に約束をわして別れたのはわらわじゃった……この事を伝えてしいんじゃ」

この瞬間、俺は眼を見開いた、眉がピクリといて、全が石のように固まった。

…………え、小さくれ出た言葉、不意に口を塞ぐ。

だが、あの二人には聞こえていなかった。

いや、それよりもこっちの方が大変だった。

ロアが出した命令を聞いた瞬間、數秒間呼吸をするのを忘れた。

いま、なんて……ロアが……ナハト? 昔……會ってたのはロア? え、えぇ……どっどういう、事だ?

おっ俺……前にロアに聞いたぞ、"ロア……お前はナハトなんじゃないか?"って。

そしたらロア、お前は言ったじゃないか、「違う」って……あ、あれは……噓、なのか?

した俺は、ふらりと後退りする。

そして……気が付けば俺は、走っていた。

なっなんだ、なんなんだ……今の話しは!

いを隠せない、知ってしまったロアの過去。

そんななか俺は、ただただ薄暗い廊下を全力で走った。

ナハトがロアだと分かったシルク。

いを隠せない彼は、今後どう行を起こすのか?

次章、シルクの運命は急展開を迎える。

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