《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》494

「と、こんな事があって初めてシルク様にあったのです」

……長い話だった。

とても長くて、驚きの連続の話し。

ただ俺は、その話を黙って聞いてた。

ロアは々と考えて人間界へやってきたんだ。

そこまで俺の事が好きで俺に會いに來た。

「ふふふ、突っ込み所が多いでしょう? わざわざ名前なんて変えなくても良いのに……そう思いましたか?」

「え、いや……それは……」

それは思っていない。

それよりも、ロアの行力に心しているんだ。

まぁたしかに、言われてみればそうだが……それは、語への憧れからだろ? そう言う風に話していたじゃないか。

「あれはですねシルク様にバレたく無かったんですよ。だから偽名を使ったんです、まだ自分に自信が無くて、初めて會ってロアだと名乗って、また會って自分の姿を見られた時……幻滅されないか? そう言う事を考えての行なんです」

ふっ複雑な理由だ。

そんな事をしなくても、ロアは……その、綺麗なのに。

々と面倒な事をしているでしょう? 私もラキュ様も何度も言ったんですよ? 」

ふふふ、と優しく笑ったあと、ヴァームは何かを思い出したのか、ぽんっと手を叩く。

「あ、それとですね。シルク様が初めてロア様と會った時……覚えてますか?」

「あ、あぁ……覚えてるぞ」

確か、草原で會った筈だ。

「あの時、聲を掛けるのに1週間も掛かったんですよ?」

「……え!?」

いっ1週間!? 期限の3分の1も使ってるじゃないか!

「いざ話し掛けようと思って勇気が出なくて木でじっと覗いたり、どうしようどうしようとずっと呟いてたり……挙げ句の果てにはシルク様の家の様子を何度も何度も見たりしてたんですよ? それもロア様の自信の無さが原因です」

いっいやぁ……全く気が付かなかった、近くで見られてたなんて……。

いや、それにしても、どんだけ自信が無いんだよ、普段のロアからじゃ想像できないな。

「意外、そう言う顔をしてますね」

「まっまぁ……な」

「普段のロア様を見てると想像出來ませんよね?」

「うっうん」

今まさに思ってた事だ。

知らなかった……強引に気持ちを伝えてくる奴なのに、こんなにも自分に自信が無い奴だったのか。

それなのに頑張って俺に告白しようとした。

「ロア様いわく、完璧なになったら……あの時會ったのはわらわじゃ、そう伝えるつもりだったそうですよ」

……そうか。

今気付いた、ナハト……いや、ロアと俺とで昔誓いを立てた。

その時にロアは「完璧なになる」そう言っていた。

なるほど、全てはその為に頑張っていたのか……。

でっでもそれだと。

「ロアはもう、俺に告白しても……」

「そう、良い頃合いなんです。でも出來ません、何故かは分かりますよね?」

「じっ自分に自信が無いから……」

「はい。その通りです」

いや、いやいやいやいやいや……自信が無いって。

俺に會う為にそれだけして何を言ってるんだ。

そう思ってた時だ、ヴァームは眼をほそめる。

「ロア様は自分に正直じゃないんです……今すぐにでも告白したい筈、でも告白が失敗する可能がある、そう考えてしないでいたんです。初めてシルク様に會って短い間過ごした時でも、それをじましたよ」

そして、思い出す様に斜め上を見て……話し始めた。

「初めて話が出來て、話し終わった後なんて凄く喜んでました。シルク様の家を訪ねるのに相當時間が掛かって雨が降って、やっとる事が出來た時……シルク様の服を借りたり、近くでシルク様と話したりして、とても楽しそうでした。それが終わって帰った時……ロア様、聲を圧し殺して喜んでました」

……俺の知らない所でそんな事があった。

勿論知る筈も無い、知る方法も無かった……いや、そもそもそんな事になってるなんて考えもしない。

「まぁ、々とシルク様と過ごしロア様は魔界に帰って來ました」

……今思えば、あの時ロアは魔界に帰ったんだ。

「そしたらですっ、急にシルクに惚れられる為に々と頑張るぞ! と言い出して料理や掃除の事を勉強しだしたんです」

「……そうなのか」

早速行に移したんだ。

凄い……本當に凄い、心しかしない。

「実はですね、それは今も続いてるんですよ」

「……え?」

今も、続いてる?

「まだわらわにはあの事を伝える勇気が出ない! そう言ってまだ自分を磨いてます……」

「なっ……いや、え?」

うそ、だろ? 今も続いてるって……それって、もしかしなくても……まだ自分に自信が持てないのか!

「もう察しが付きますよね? その通りですよ……」

もう、何も言う事が出來なかった。

ロア、お前って奴は……。

「でもですよ、昨夜……ロア様は言ってきたんです。わらわがナハトじゃと伝えてくれんか? と」

それは、俺も聞いてた。

そうか……だからヴァームは俺に話があるって話し掛けたのか。

「まぁ、頼まれた事以上の事を話してますが……この際別に構いません。もうそろそろ知ってしいんですよ……シルク様に全てを」

真剣な眼、いや……それはもう鋭い眼と言っても良いくらいの眼だった。

その眼に気圧された俺は鳥がたった。

今まで言ったヴァームの言葉、俺はその全てを信じた。

噓を言ってる様に見えなかったし、ヴァームはこんな所で噓をつくような奴じゃないからだ。

それと同時に……今までその事に気付かなかった俺に心底苛立った。

なんだよ、なんだよそれ……ロアは頑張ったのに全く気が付かなかった。

なんでだよ、なんで気が付かなかったんだよ!

今まで気付くチャンスは幾らでもあった……その筈だ。

なのに気付かなかった、いや……気付いてあげられなかった。

お前はナハトなのか? って聞いて「違う」って言われた時も「本當にそうか?」と疑えば良かった。

くそっ……くそっ! どこまで鈍なんだよ俺は!

くっなんだよ。

俺って、すっごく……最低な人間じゃないか。

「全てを知ったシルク様にお願いがあります。今……今でもロア様が好きなら、告白して貰えませんか? もうこれ以上、ロア様の頑張る姿は見たくないのです」

俺が々と思ってる間、澄んだ眼でヴァームは言ってきた。

想いを伝えろ、か。

「今までそれに気付かずに過ごしてた俺が、今更告白……か」

「え、シルク……様?」

うつ向いて「ははっ……」と暗く笑った俺は……部屋から出ていく。

その時、ヴァームに呼び止められたが、構わず出ていった。

「……が痛むな」

ロアには凄く酷い事をしていた。

々頑張っていたのに、俺は何度もあいつの告白を振った。

ロアこそが俺の好きな人なのにだ……気付けよ、なんで気付かないんだよ。

なんで好きな人にあそこまで頑張らすんだよ。

自分への説教が止まらない……そんな中、俺は思ってしまった。

「俺……ロアに好きになられる資格が無いな」

うつ向いて、苦笑いしながらそう言った後、トボトボと何処へ行こうと考えた訳でも無く、俺はゆっくりと歩いていった。

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