《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》498

あれからほんのし経ちました……いま私はお城に戻っています。

「ぬぁにぃぃっ。アヤネがシルクを連れ出したじゃとぉぉっ!」

ロア様に先程起きた事を話すと、ゆったりと座ってた勢から勢い良く立ち上がり大聲で驚きました。

えぇそれは驚くでしょう、だってこんな事想像出來ませんもの。

私だって想像できませんでした。

って、あらあら……ロア様、驚きのあまり椅子を倒しちゃいましたね。

「えっ、えと……うぐぅ。あやつはまた変な事をしおってぇ」

それ、ロア様が言っちゃうんですか? と言いそうになりましたけど何とか、その言葉を飲み込んで。

「そうですね……」

と同意しておきます。

この狀況はからかってる場合ではありませんからね。

「それで……えと、気が向いたら戻ってくる。そう言ったんじゃな?」

「えぇ。言いましたね」

連れ出しておいて、なんと丁寧な……と思いますが、間違いなく言いました。

「では、良い。戻ってくるのを待つのじゃ」

「あら。探さなくて良いのですか?」

「良い。どうせ街の中を彷徨うろついてるじゃろ、それにアヤネは方向音癡じゃし萬が一迷って偶然ここに來るなんて事もありえる。あやつアホじゃし」

「ハッキリ言うのですね……。まぁ、そんなじがしますね」

あながちロア様の言ってる事は間違いではありません。

アヤネさんの方向音癡は凄まじいですからね……。

「あ、そう言えばラキュはどうした? あいつ、おぬしにぶつかって気絶したんじゃろ?」

「あぁ……ラキュ様ですか。ラキュ様ならメェの部屋で寢かせてますよ」

「ふむ、そうか……あやつも災難じゃな。まさかいきなり投げ飛ばされるとは……」

「そうですね」

ラキュ様、きっと驚いたでしょうねぇ。

「と、そんな話はさておき……一応アヤネのきを気にしておいてくやれ。わらわも気にしておく」

「はい、分かりました」

そうですね。

いくら大丈夫と分かっていても萬が一がありますからね、気にしておいて損はないでしょう。

……アヤネさんとシルク様、今頃何をしてるんでしょう。

そう考えながら、私は一禮した後、部屋から出ていきます。

これからメイドのお仕事が沢山ありますからね、それを片付けないといけません。

ふんっ……と息を吐いて気合いをれ、私は仕事に向かいます。

アヤネさん、はやくシルク様を戻ってくると良いですねぇ……。

さて、ヴァームがそんな心配をしてる頃、アヤネとシルクは……なんと、森の中にいた。

「どうしてこうなった」

風で木々がざわめく森の中、俺はポツリと呟いた。

本當に意味が分からない、気が付いたらこの狀況だよ! 呆然とアヤネの腕の中に抱かれて、ぼぉっとするんじゃなかった!

「そんな落ち込まないで。街から出られたんだよ? 久々のお外、喜ばないとダメ」

「いや、そうだけど? そうなんだけど……」

喜べるもんも喜べるか。

外だぞ外……魔王城城下街から出てきたんだぞ。

そう、俺は外に出たのだ……うん、出たんだが……なんだこの気持ち。

ずっと外に出たい、とは思ってたんだが……いざ出てみると何でこんなぎこちない気持ちになってるんだ?

「ふふふ。城門を飛び越えた時、門番さんビックリしてたね」

「……え? あっあぁ……確かに、驚いてたな」

なんか、半魚人見たいな奴が門番やってて、アヤネが閉じてた城門を飛び越えたら……めんたま飛び出るのか? って思ってしまうくらい眼を開いてた。

あれは今でも頭に殘ってるよ。

で、そのあと「適當に走ろるよ」とか言って、ここまで來たんだよな。

そしたら、森だよ。

來たのが魔王城の近くにあった森だ、しかもかなり深くまでっている。

しかも、なんの裝備もしてないんだぞ? これ、ヤバくないか? さっきまで冷靜についさっき起きた事を思い返してたが、今更になって今の狀況に焦りをじてきた。

さわさわさわ……。

っ! やっやばい、ヤバイぞ……今は明るいからまだいいが、夜になったら……。

風で葉が揺れる音を切っ掛けに不安になってきた。

そんな表でアヤネを見ると……。

「と言う訳でシルク、今日から私と野宿だよ。えへへ、ふたりきり……だね」

もじもじしながら言ってきやがった。

うん、ふたりきりだよ……誰もいないよ。

それにな……。

「すっかりときめいてるけど……そんな場合じゃないからな!」

下手すれば怪我どころじゃすまない狀況なんだぞ! そんな気持ちをこめて言い放つ。

だがしかし……アヤネは、にっと笑って。

「シルク、照れ隠ししてる。かわいい」

「照れてもないし、隠してもないっ!」

微笑みながら言ってきやがった。

こうして、俺とアヤネのサバイバル生活が……始まった。

あぁぁぁ、先行きが不安だぁ……。

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