《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》505

俺がアヤネに森に連れて行かれて、何日もそこで野宿するのかと思ったあの日、俺の思いとは裏腹に直ぐに帰って來たあの日から……一週間が経った。

「しっるくぅ。妖コス似合うのぅ。イケイケじゃぞ」

「うん……ありがと」

今いるのはヴァームの部屋。

そこで相も変わらず俺にべたつくロア、そんな俺は……憂鬱だ。

ロアよ……今までお前の正に気付いてやれなかった。

なのになんで、そこまで俺にベタベタ出來る? って、それは好きだからか。

こんな俺なんかの何処が好きなんだよ……。

「むぅ……。いつもの反応をせんなぁ。もっとこう……離れろ! とか、ベタベタするな! とか言ってくれんかの? さもなくばハグ以上の事を……」

「離れてくれ」

ニマニマするロアに素っ気なく言ってやると、ロアがきょとんとした。

「えぇぇ。なんか素っ気なくないかの? それに最近わらわを見ようともせん……」

……見ようとしないか。

それはな、申し訳なさから來てるんだよ。

見てたらんなが沸いてくる、それも湯水の様にな。

ロアは昔にあった好きな人……ロアは俺の事が好き、夜中俺の為に々と學んでくれている。

ロアはずっと俺の事が好き、そんなロアを俺は好きになって良いのか?

俺が全く気付いてくれなくて苦しんだ時もあっただろう……。

そう思うとやっぱり辛い。

って、何度その事を思ってるんだ俺は。

「もっとこう、がぁぁっ! ってじに言ってくれんか?」

「……うん」

「いや、うんて」

あぁ……ダメだな、こうしてロアの側にいるだけでも辛い。

「その……シルク? わらわ何かしてしまったかえ?」

「違う、そうじゃない!」

それは絶対ない、してしまったのは俺の方なんだ。

っ! しまった……大聲出して驚かせてしまった。

「しっシルク?」

「あ、えと……ごめん。ほんと……可笑しいよな」

「え? あっあぁ……そうじゃな。ちと様子が変じゃな。くはははは」

……気に笑ってるな。

俺はロアの笑う姿を見て、心が大きく揺れた。

そして、ゆらゆらと揺らめく様に昔の事を思い出す。

ハナト、いやロアと初めてあった時だ。

それを鮮明に思い出す、あの時の笑顔、し怒った顔、照れた顔、そして……俺に告白してきた時の顔。

その全てがロアと重なった、當たり前だ、當の本人が側にいるんだ。

「どうした? ついにわらわの魅力に気づいたかえ? 好きになってしまったか?」

……まだ、偽るんだな。

もう偽る必要は無いよ、お前は充分頑張ってる。

キラキラと眼を輝かすロアに対してそう思った後……俺は立ち上がる。

そしたらロアが不思議そうに見てくる。

……ごめんな、ロア。

俺が完全に悪いんだが、お前の側にいると……辛くなるんだ、だから……離れるよ。

そう思い、扉へと向かう。

そしたら、後ろから引っ張られる……転けそうになるが踏みとどまり、後ろを見ると……ロアが悲しい顔をしていた。

だが直ぐに、にこっと笑って服から手を離す。

一瞬だけ見えたロアのその表を見た時、……が締め付けられる様に痛くなった。

ごめん、ほんとごめんな……。

何度もその言葉を心の中で繰り返し……俺は部屋から出ていった。

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