《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》506

部屋から出た俺は、ゆっくりと歩いていた。

思えば、アヤネと一緒に森にいって帰って來た時からずっとこんなじに歩いてる気がする。

なんと言うか、ダメなじがするな。

見る人が見たら、メソメソすんか! と一喝されるだろうな。

「……」

そんな俺が酷くけなく思えてきた。

なんで俺がこんなに落ち込む? 全部俺が悪いのに……。

もう自己嫌悪だ、こんな自分が嫌になる。

髪のをぐしゃぐしゃ掻いて、ダンッ! と壁を叩く。

……痛い。

「……なにやってんだろ、俺」

ポツリと呟いた後……とさっと壁にもたれ掛かる。

「…………」

ぼぉ……としながら天井を見上げる。

あ、そう言えば最近店開いてない……いま思えばそう言う気分じゃなかったからなぁ、開こうと思わなかった。

これじゃ商いやってるととしては失格だな。

今頃街では軽い騒ぎが起きてるだろうな、シルクたんが來てない! なんでだぁぁっ……てじに。

正直、そんな事どうでも良い。

こんな勝手な事を思う俺、來てくれる魔達あいつらは許してくれるかな? まぁ……別に許して貰えなくても良いけど。

と言うか、俺は壁にもたれ掛かって何してるんだ。

確実に変人じゃないか。

……更に変人に見えるかも知れないが、座ろう。

もたれ掛かるの結構しんどい。

そう思ってペタンッと座る。

……うん、自分でも思う。

廊下にポツンと獨り黙って座ってる。

変人以外の何者でもない、他者が見れば絶対にそう言う。

だけど今は誰もいない、だから座った。

人が來れば、立ち上がって何処かに行こう、どこ行くか何も決めてないけど。

「いま、ロアはどう思ってるんだろうな。俺の事」

最近、あいつに対して素っ気ない態度とってたからな。

絶対に嫌な奴と思われたかもしれない、もしかしたら……嫌われたかもな。

そんで俺の事が嫌いになった……なんて。

自分の考えた事に苦笑し、クスッ……と笑う。

そのし後、突発的に……激流の如くある想いが流れ込んできた。

「…………っ! なんで俺、今……それは嫌だって思ったんだ」

意味が分からない。

俺の今思ったことが本當に起きたなら、ロアは絶対に幸せになれただろう。

こんな鈍な俺を好きになっちゃいけない……ロアはロアの事をずっと見てて、ずっと想ってくれる人と付き合うと良い、俺はその資格がない。

むしろ、俺がロアの近くにいることでロアを傷付けてる。

だからさっき部屋を出る時、あんな顔をしたんだ。

「だったら俺、もう出ていった方が良いじゃん」

今更だな、今更こんな事思うとか思い付くの遅すぎて笑えてくるよ。

「…………だったらもう、出ていこう」

蝋燭ろうそくに火が燈されたかの様に、ぽっ……と思い付いた。

そうだよ、俺が出ていけばロアが傷付く事はない。

今の俺はロアが傷付いてるからこんなになっている。

だったらそれを解決すれば良い。

どうすれば良いか? 答えはもう出てる。

「俺が、出ていけば良いんだ」

虛ろな眼をしながらそう言うと、俺はゆらりと立ち上がる。

その時、アヤネのあの言葉を思い出す。

『だったら……出ていかない? 私と……一緒に』

『森で私が言った事、もしそうしたかったら……私に言って』

アヤネが言った……。

アヤネに言えば……家まで連れてって貰える。

アヤネに……言えば。

何かにられた様に何度も思う俺は探した。

「アヤネを……探さないと」

いま、何処に居るんだろう? あんまり遠くに行ってないと良いな。

「シルク君」

ん? 誰かに呼ばれた。

振り替えると……俺のし後ろにラキュがいた、いつも突然現れるな……。

「ちょっと……良いかな?」

「……ごめん。今、やることがあるから」

「あ、そうなんだ。でもさ……ちょっと、ちょっとだけで良いから」

「え、あ……」

斷ろうと思ったけど、俺は強引にラキュに連れ去られてしまう。

邪魔がったな、まぁいいか、用件が済んだら探せば良いか……。

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