《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》508

「ヴァームにさ、お前が話した途中のロアの過去の話を聞いたんだ」

俺がそう話すとラキュはピクッと眼を見開いて反応する。

「それで、ロアが昔何やったか、全部知ったんだ」

「へぇ……」

靜かにそう言ったラキュは、ズビッ! と指差した。

「だったら何で告白しないのさ。姉上の過去を全部聞いて分かったんでしょ?」

「……」

俺は黙って頷く、そしたらだ。

ラキュは、くすっと笑って……。

「速く告白しなよ。シルク君からしないと姉上、絶対にしないよ? それにさ……あの話し聞いて速くしなきゃ! と、思ったでしょ?」

と、続けて言ってきた。

……あぁ、今言われて思ったよ。

一瞬そう考えたな……だけど、直ぐに俺はロアに告白する資格がない、そう思ったんだよな。

そんな考えをしてたら無意識にため息が出てきた。

それに反応したラキュは、何か付いたのかニヤリと笑った。

「あ、もしかしてシルク君まで張して言えない! とか思ってる?」

「……」

ははは……殘念だな、その解答は検討違いだよ。

「それとも、いざ話を聞いて速く告白しなきゃ! とは思ったけど……どう告白して良いか分からない、そう思ったのかな?」

違う、違うぞラキュ。

俺はそんな事を考えてない……。

「んー……うつ向いたまま何も言わないね、図星? まぁ……勝手に図星って事にして話すけどさ。もう簡潔にパパっと好きって事だけ伝えたら良いんじゃないかな?」

……ニコニコ笑いながら出來ない事を言うんだな。

そんなラキュに対して仄かにイライラしてきた。

「うん、その方が良いよ。そしたら鈍い姉上は必ず分かってくれる。これで二人は相思相、時を経て結婚って流れになるね。うん……これ、良い話しだと思わない?」

「……」

相思相……確かにそうだ。

俺は今まで気付かなかったが、確かにロアと俺とは相思相だった。

だけどな……俺は、ロアを好きになっちゃいけないんだよ。

俺なりに考えた結果だ、自分が好きな人が近くに居たのに気付かない奴が……結婚を前提に付き合って良いとは思わない。

なくとも俺はそう思う。

……ん? いつのまにかラキュが黙った。

さっきまで喋ってたのにな、あっそうか……俺が黙ったままだから対応し辛くて黙ったのか。

だったらそのまま靜かにしてくれ、これ以上ロアに告白しろなんて事を言わないでくれ。

「ねぇ。長年想ってた相手にやっと告白できるってのに、なにその顔……すっごく辛そうだね。何か思う事でもあるの?」

そう思った時だ。

今まで聞いた事がないくらいラキュが冷たい口調で話してきた。

背筋がゾクッとなる……だが、俺はその問い掛けに素直に気持ちを伝える事にした。

「あるよ」

「……へぇ、あるんだ。話してみなよ」

俺はギュッとてを握った。

そのあと、気持ちし大きな聲で。

「俺は……近くに長年想ってた相手の近くにいたのに、その存在に気付かなかった。そのせいで相手を傷付け苦しめた。そんな仕打ちを好きな奴にしたんだ。だから……俺はロアに告白する資格がない、だから俺は……告白はしない。もうここから出ていこうかと思ってる」

そう告げた、その剎那……。

「は?」

一瞬で俺の方に詰め寄り……ドゴッ!! 鈍い音が鳴る位、鋭い一撃を喰らった。

「ぐっ……がはっ!!」

くっ! ぜっ全に痛みが走る、痛さを通り越して気持ち悪さが襲ってくる。

そして、毆られた衝撃で俺のがふわりっと浮いて地面に叩き付けられ3、4度転げ回った。

……ようやく威力が消え、べちっ! と仰向けに叩きつけられた後。

「なに言ってんの? え、なに? 僕の聞き間違い? 帰るって言った? ふざけてんの?」

ラキュが俺を冷たく見下しながら話して來た。

その瞬間、俺の中の何かがキレた……。

なんだよ、俺なりに考えた結果だろうが、なにも間違った事は言ってないだろ? 沸々と煮えたぎる様な怒りに燃えて、痛みを堪えながら立ち上がる。

「かえるって……言ったんだよ!」

その後、なんとか苦痛の表を抑え腹を押さえながら聲をあげながら言ってやった。

そしたらラキュが冷ややかに笑う……部屋の空気が張り詰めていく。

「くはは……。初めてだよ。毆りたいくらいうじうじ悩む相手を見たのはさっ!!」

そう言ってラキュは、毆りかかってきた……。

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