《どうやら魔王は俺と結婚したいらしい》513

シルクは黙って行っちゃった。

全く振り返らなかった、真っ直ぐ前を見て走ってった。

私はそれを見えなくなるまで見送った。

「……はぁ」

どっと疲れた。

やっぱりを圧し殺すのって大変、何度も泣いちゃいそうだった。

でも泣いちゃダメ、強くそう思った、だから我慢したの。

「告白くらいすればよかった」

あぅ、今更後悔しちゃった。

でも……私、分かっちゃったもん。

あれ、あの時のシルクの顔……すっごく輝いてた。

あの顔をしたシルクは、何言ったって聞かない、だから言えなかった。

「言えるわけない……泣いたら、シルクを困らせちゃう」

好きな人だけど……そう思うの。

ほんとはあの時、止めたかった。

森で話し聞いた時なんか「イケる」って思っちゃった。

でも、ダメだった……シルク、私よりロアを選んだ。

呆然と立ち盡くしてる私は壁に近付き、ゴンっ……と頭を付ける。

そんな時だ。

しゅわん……と、妙な音が鳴った? なに? 今の音……近くで聞こえた、いや……真後ろ? 気になったから振り向いてみると……。

「……あ、らっ君」

くすっ……と笑ってる、らっ君がいた、後ろに腕を組んで立ってる。

「……」

え、なんにも言わないでこっち見てる。

なん……だろ、今一人にしてしい気分。

よし、ちょっとキツめに言って離れてもらお。

「意外だね。あんなに好きだったのに」

と、思ったら割り込まれた。

…… って、え? その言葉、もしかしなくても……まるでさっきの事を見て言ってる様に聞こえる。

見てたの? 全く気配なんてじなかったのに。

「くふふふ。見てたの? って言いたげだね。うん、見てたよ……ちょっと事があってね、そしたら君ら二人を見付けた訳さ」

「……そう」

なんか、偶然見た見たいに言ってるけど凄く怪しい。

それなら姿が見える筈、この廊下は一本道、隠れる所はない。

らっ君……なんか噓ついてる。

「そんなに睨まないでよ。ほんとの事言うからさ」

「むっ。やっぱり噓ついてた」

私の思った通りだ。

理由によっては、許してあげない……。

そう思いながら、らっ君の話を聞いた。

「……という訳で気になってシルク君の後を追ってたわぐはぁっ!」

「…………」

「ちょっ、なんで……毆るの……さ」

「らっ君なら、理由言わなくても分かる筈」

「うっ……ぐっ……まっまぁ、なんとなくは……ね」

話を聞き終わった瞬間、らっ君のお腹にパンチした。

むぅ……切っ掛けを作ったのらっ君。

だからパンチしたの、らっ君は苦しそうにお腹押さえてる。

軽く毆っただけなのに……。

「なっ臓……全部、ゆっ揺れた……よ」

「大袈裟、そんな威力で毆ってない」

「……そっそう言う事に、しといて……あげるよ」

ぜぃぜぃはぁはぁ言いながら言うと。

壁に手を付き、汗まみれの顔で見てくる。

々言いたいんでしょ? 言いなよ」

「別に良い。文句はもうパンチで帳消し」

「……そう」

ほんとは々と言いたいけど、我慢するもん。

「……良く気持ちを押し殺したね。シルク君の事、好きだったんでしょ?」

と思った矢先、こんな事言ってきた。

「うるさい」

そんなの言わなくても分かってるでしょ? いちいち言わないで。

らっ君がシルクに々しなきゃ、今頃私は、私は……。

あ、やっぱどのみちダメだったかも知れない。

らっ君が何もしなかっても、森でいた時のシルクを見てて思った。

帰りたい、そう思ってるけど……。

頭の中はロアで一杯、私と一緒にいて、笑ったりしたけど。

何処か元気がなかった、昔と比べてずっと……。

シルクの笑顔は他人をきゅんきゅんさせる位に可い、勿論あの時も可かった。

でも、何か足りなかった……その原因は、ロアだ。

あの時のシルクは、言葉に反して……ロアに想いを伝えなきゃいけないって思ってた。

あ、違うかも……それを想わないように、ずっと圧し殺してた。

絶対そうだ。

だったら、らっ君が何もしなくても……仮に帰ったとしても、いつか必ずシルクは魔王城に帰ってくる。

圧し殺した想いは消せない、絶対にあふれでてくる。

特に、相手を大事にするシルクなら……いつか必ず絶対にそう思う筈。

うん、やっぱりダメだった。

シルクを元気付ける為に連れ出したけど……もう気持ちはロアに傾いてた、私は負けてたんだ……。

うっ、そう思っちゃうと……やっぱり最後に告白ぐらいすれば良かった。

「取り敢えず、涙拭きなよ」

らっ君にハンカチを差し出されながら、そう言われて気付いた。

あ、私……涙、出てる、止まらない……あぁ、どんどん、出てるよぉ。

「うっ、うぅぅ……あぁぁぁぁっ!」

らっ君から差し出されたハンカチをけ取らずに、私はらっ君に抱き付いた。

もう無意識だった、今は……誰でも良いから、溫もりがしかったの。

「あぁ……えと、アヤネ?」

「だまっで、なにも……いばない……で」

「……分かったよ」

一瞬苦笑するらっ君だけど、私の言葉を聞いて微笑んで、ぽんっと手に頭を乗せてくる。

「言いたい事言いなよ。全部聞くよ……」

とくんっ……。

が高鳴った、優しくされたからだ。

そんな、らっ君の優しさに甘え、言いたい事を全部言うことにした。

ほんとに、全部……聞いてよ。

沢山、言いたい事……あるんだから。

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