《高校ラブコメから始める社長育計畫。》20.魔族の宴Ⅱ
次の日――
日曜は特に用事がなければ晝に路上ライブだ。
りぃの付き添い。
休日なだけあって広場も賑にぎわっている。
待ち合わせの奴や、ダンスの練習してる奴ら、俺たちと同じように路上ライブしている奴らもいる。
「新曲できたの」
「はやっ!」
こないだ地球なくなったばかりなのに、妹はもう新しい曲を作ってきたらしい。
「曲名は?」
「哀憐あいれん」
おいおい、聞く前から哀しいの決定じゃねーか。
「お前、學校でいじめられたりしてねーだろうな? そんな奴いたら兄ちゃんが」
「大丈夫なの。學校では気配を消してるの」
それはそれで泣けてくるぞ兄ちゃん……
そして俺は、りぃの新曲をいつもの定位置で聴く。
今回も歌詞は無く、りぃは鼻歌とラララで歌い上げる。
「……」
こないだの『地球なくなれ』よりアップテンポだが、トゲトゲしいというか、吹雪でも起きそうだ。
これは魔界の歌だろ。
「ふぅ」
りぃは歌い上げ、満足気に俺を見る。
「カッコいいじゃねーか。トゲトゲしくてよ」
「えへへ。マイナーコード、ごり押しなの」
俺は一人、拍手をしてやる。
そこへ、向かいでストリートダンスをしていたギャルギャルなじの二人組がやってきた。
派手な人種とは縁のない俺にとって、魔族が來たってなもんだ。
「ねえねえ、今の誰の曲?」
「妹のオリジナルですよ」
ギャルの問いに、俺はりぃを指差しながらそう言った。
「えー!? まじでー? ヤバくねー!?」
「ちょーカッコいいんだけど!」
「カッコいいだってよ」
俺はもじもじしている妹に顔で合図する。
「ありがと、なの……」
妹はの前で手を握り、控え目な笑顔と上目使いで謝を述べた。
「キャー! この子ちょー可いんだけど!」
りぃは張しているようだ。
俺に似て人見知りだからな。
手を握ったお祈りポーズで謝を述べるのはアニメの見すぎなのだろうが、兄の俺でもこれをやられると卒倒する破壊力だ。
「次いつ路上やんの? あたしらの連れでさ、こんなじの曲好きな子がいるんだけどぉ、絶対気にると思うのね! 聴かせてやりたいよねぇ!」
「だねぇ! ムービーとっていい? メールしとこ!」
りぃはさっきの新曲をリクエストされ、もう一度ラララで歌った。
彼達は膝でリズムを取りながらノリノリで聴いてくれている。
「マジ超絶神かみってるよねえ!」
「この世界観、ある意味魔ましょうのだよお。あはは」
俺からするとお前らのほうが魔に近いけどな!
その時、一人が俺を見て呟く。
「あれ? そういえば兄貴くんって月高?」
今日は月高校の制服のまま付き添いに來ている。
「そうっす」
「あたしらと一緒じゃん。三年じゃないよね? 二年生かな?」
「そうっす」
彼達はどうやら俺の先輩に當たるらしい。
「へえ! 嬉しいね! 後輩が頑張ってるとこ見れるのは」
いや俺は何もしてない。
ただの保護者にして、いちファンだ。
「だよねえ、絶対この子、有名になるべきだよお」
「そうですよね」
りぃには才能があると俺も思っていた。
そして今日、彼達のようにそう言ってくれる人も出てきた。
俺が褒められたわけじゃないが、とても嬉しい気持ちがに溢れてくる。
本當に、りぃの歌は一人でも多くの人に聞かせてやりたいな。
「良かったら火曜と木曜にも夕方四時半ぐらいからやってるんで、また見に來てくださいっす」
彼達はオッケーオッケーと言いながら攜帯をいじってる。
ちゃっかり、りぃの『ありがとポーズ』の寫メも半なかば無理やり撮られ、きゃっきゃ言いながら去っていく。
ああゆう奴らともコネを作ったほうがいいのか?
しかし話合わせる自信ねーな。
「ドキドキしたの……」
「良かったな、褒めてもらえて。お前はやっぱ才能あるよ」
俺はりぃの頭を優しくでてやる。
「えへへ」
りぃは締まりのない無垢な笑顔で俺に抱きついた――
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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