《カノジョの好度が上がってないのは明らかにおかしい》第3話 憎悪というより殺意ですね
 次の日……學校は俺の敵と化していた。
 校門をくぐれば風紀委員に「不純異遊……」やらなんやら言われ、靴箱を開けば大量の殺害予告の手紙。
 廊下を歩けば罵言や暴言に曬される。
 さらに、教室にった途端、俺は憎悪の視線をたっぷりと浴びせられた。
 え?なに? 俺人気すぎない? 人気すぎて目には涙溢れてるんですけど。
 俺が涙を隠しながら席に著くと、教室の窓側からこんな會話が聞こえてきた。
 「こはるん、本當にあんなのと付き合うの?」
 「そうだよ!なんでよりによってあんな……」
 「そんなこと言っちゃ悪いよ。でも、あいつはないよね〜……」
 ……あ。もう読めたわ。なんか現狀が読めた。
 さっきの會話をしていた子たちを見ると……
 ……案の定、中心に彼がいた。
中心であははー、と空笑する彼、六実小春は周りに気圧されているようだった。
 「見て見て!なんかこっち見てるよー笑」
 「本當だー。キモ。というかキモすぎ笑」
 「確かにー笑 その前にキモすぎない?」
 お前らボキャブラリーにキモいしかないのかよ。もうちょっと本読め本。
 そんな中、六実が俺に気づいたようで、顔の前で手を合わせてウィンクをした。
 そんなことで許してやるわけ……ありますあります。超許しちゃいます。その可さは本當に無敵。なに?チートなの?
 
 それでも、俺の心の傷が完全に癒えるわけもなく、俺はフラフラと教室を出た。
        *     *     *
 特に逃げる場所もないので中庭に來たわけだが……
 逆にここの方がひどくね?
 この學校は、中庭を取り囲むように校舎が建ち並んでいる。
 それはつまり、すべての校舎からここは見ることができる、もとい睨むことができるのだ。
 俺は憎悪、というより殺意じみた視線を浴びながら中庭の端、自販売機の橫のベンチに座った。
 飲みでも買おうかと持ってきた財布を開くが、中にはせいぜい50円程度しかってなかった。
 はぁ……と重い溜息を一つ吐くと、俺は靜かに目を瞑った。普段ならこういう時、ティアと喋って気を紛らすのだが……今はどうにも首筋が冷たくて……
 ……首筋? 冷たい?
 「って、冷てぇっ!!」
 俺は瞬間的に立ち上がるとその首筋についたものを摑んだ。
 「缶、コーヒー?」
 俺の手を見ると、無糖の缶コーヒーが握られていた。
 「ブラックでよかった?」
 顔を上げ、その聲の方向へ目を向けると、そこにはし遠慮がちに笑う六実の姿があった。
 「お、サンキュ。……じゃなくて! なんだよこの騒ぎ。」
 「うん、本當にごめんね。怒らずに聞いてくれる?」
 六実が本當に申し訳なさそうに聞いてくる。そんなかわいい姿見せられて怒れるわけないじゃないですか〜。
 俺は何も言わずこくりと頷いた。
 「あのね…… 私、馨くんと付き合ってる、って言っちゃった……」
 「……そういうことね……」
 俺がそう言うと六実は一瞬驚いたような顔をし、その後悲しげに俯いた。
 「やっぱり私なんてどうでもいいのかな……」
 「は?」
 あまりにも唐突な彼の言葉に俺はまたもや素っ頓狂な聲を上げてしまった。
 いかに朝倉馨を素っ頓狂な聲で鳴かせれるかという大會があったら彼の優勝が確定だろう。
 俺は間をつなぐように咳払いをするとこう言った。
 「どうでもいいわけないだろ。というか何で急にそんな話に?」
 「え……ま、まぁどうでもいいでしょ? じゃ、私行くから」
 六実は小さく手を振ると小走りで俺から去っていった。
 中庭に注がれる殺意は未だに止んでおらず、俺は々なものをため息に込めて吐き出した。
        *     *     *
 目覚ましが鳴っている。
 ピピピピ、ピピピピ、という電子音が回數を増すごとに大きくなり、それが三回目に差し掛かった時、俺は目覚ましを止めた。
 時計を見れば今は7時半。ついでに言えば、4月8日で度は60パーセントである。
 さーっ、という獨特の音とともにカーテンが開かれ、朝の溫かいが部屋にってきた。
 「もう起きて。朝ごはん冷えちゃうよ」
 「あぁ……」
 優しい聲に促され、俺は起き上がる。そして一つ大きなあくびをして目をこする。
 「おはよ」
くすっ、と笑った後、らかな笑顔で彼はそう言った。
 「おはよう」
 俺はそう返すと窓から外を眺めた。
 空には雲がちらほら見えるものの、いい天気だ。電線の上ではスズメが仲間同士で気にじゃれ合い、ちゅんちゅん言っている。
 って……
 「えぇ ︎  何で六実がここにいんだよ!」
 「えぇーっと、なんとなく?」
 「意味不明だよ!」
まったく、訳がわからない。突然告白されたと思ったら次の日にはもう付き合ってることになってて、そのまた次の日には朝起こしてくれるだと?
 なにこれ最高じゃん。
 しかし、笑う六実の顔はどこか冷たく、俺はが粟立つのをじた。
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