寢ない！ 今度は寢ない！！

次の日曜日。私はまた神宮寺家にお邪魔していた。『星夜空』は本當に面白かった。

でも今度は親友の二人が喧嘩してユニット――魔法系の小説でチームを組んでいることそう呼んでいる――解散の危機だし。

四巻はあとしで発売されるらしいし今度こそ自らの手でゲットしてみせる。そして今日は最低三冊は借りて読む！ 寢ない！！

「こんにちは。尾です」

『……』

あれ？ 返事が來ない。もう一回

「こんにちは、尾凜音です」

『……れ』

「れ？」

『帰れ！！ 俺の小説の邪魔をするな！ 次に邪魔したらぶっころ……』

今のは何ですか？ 傷つきます。いえ噓です。あんまり傷ついてません。

何かあったのでしょうかね、今の神宮寺さんの聲ですよね。あんな怒聲初めて。

「尾様」

「あ、松崎さん」

「すみません。先程トラブルがありまして、旦那様の逆鱗にれてしまいまして」

「なら本だけお返ししてまた出直します」

「いえ、あの場所には及びませんが他の場所に案させていただきます」

はあ。何か複雑だけれどお言葉に甘えさせてもらおう。客室のようだけれどここも日當たりが良いな～。

「尾様。私は旦那様を宥めていますので何か用があれば侍に」

宥めるって。なら侍さんに書庫の案をしてもらおう。今は私が持ってきた本を読んだら。

はふぅ～面白かった。近くに侍さんいるか……

ピシャーン！！

ビクゥ！ って柄にもなくびっくりしちゃったよ。

「……神宮寺さん？」

「なんで……だ」

え、今なんて言った？

「なんで皆俺の邪魔をするんだ。何をどうしようが俺の勝手だろうが。なあ、お前もそう思うだろ？」

神宮寺さんの目が怖い。『お前』って私？

ちょちょちょ、神宮寺さん無言でこっちに來ないで。怖いから！

え、何？ すんごい嫌な予しかしないんですけど。手首摑まないで痛い！

「婚約者のくせに男に奉仕しないとは馬鹿なだな」

まだ婚約者じゃ無い……って何で顎を摑むの？

あの痛いです。神宮寺さんお願いだから離してください。松崎さーん助け――

チュ

何かにらかいものが。神宮寺さんの顔もめっちゃ近いし……キスされてんの？

「旦那様！！」

あ、松崎さん。この狀況説明してくれませんか。脳が追いつかない。

「なんだ松崎か。邪魔をするなとさっきから言ってるだろう」

そう言ってまた私にキスしてくる。あ、今度はキスって分かった……んだけど激しい。

あの、舌れないでくれませんか？ 唾が多すぎて私ヨダレ垂らしちゃってるんですけど。

「……っん。神宮寺、さん」

彼の著をギュッと握りしめる。すると激しい舌のきが止まった。

「……凜音さん？」

口を離してくれた。何か口から下の方に何かが流れてる気がするから涎凄いんだろうな。

あれ、神宮寺さんの野心的な目が戻ってる。穏やかそうな優しい目に。力も強くないし。

「あの、僕は一何を」

「私とキスをしましたよ」

フリーズしてゆうに十秒はあったんじゃないか？

どんどん神宮寺さんの顔が真っ赤に……いや真っ青に？ なっていく。

「す、すみません！！ こんな若い方にキスを……しかもは、激しい方まで……申し訳ありません！ 凜音さん！！」

でーい！？ 大の大人に土下座させちゃってるよ！

「大丈夫ですよ神宮寺さん。顔を上げてください」

「大丈夫じゃありません！ こんな勝手なことをしてセクハラで」

「別に神宮寺さんとのキスは嫌いじゃありませんよ」

あ、またフリーズした。おーい神宮寺さーん？

「以前にもお伝えしましたが私は読書以外に興味がありません。なのでキスをされてもそれ以上のことをされてもそれが罪だとは思っていませんよ。

いや、流石に油ぎっとぎとのおじさんにキスされたらそれは警察呼びますけども」

だから気にしなくていいですよと教えてあげた。てかこんなイケメンにあんなオラオラ見せられたら月海とか気絶しちゃうんじゃないか？

「あ、あなたが良くても僕の罪悪は消えません……そうだ！ これからはご要に何でも答えます。それでお許しいただけないでしょうか？」

だから許すも何も怒ってないって。あ、でも要なら。

「今度うちに遊びに來てくれませんか？」

「はい？」

さっきの月海との會話を説明する。私のっつーか月海のだけどね。

「今度三家十人が集まった時に神宮寺さんを紹介したいのですが空いてますか？」

「え、あ、はい！ よ、予定を開けときます！」

「お願いします」

よし。これで月海に文句は言われない。

「……ごほん」

咳払いが聞こえてそっちを見ると、松崎さんが――あ、さっきから放置してたわ。

「よろしいですかお二方。まず尾様、ご迷をおかけし申し訳ございません。旦那様の元にやけによくびる編集者が來られたのです。それで私が來る前にをまさぐられておりましたので」

「ご愁傷さまです神宮寺さん」

「ありがとうございます凜音さん……」

そりゃ機嫌も悪くなるわ。

「そして旦那様。あなたの質を理解していながら止めに行くのが遅くなり申し訳ございません。ですがそろそろ自分を抑えられるようになさってください。

尾様からお許しをいただけなければ今頃警察行きですよ」

厳しい。厳しいよ松崎さん。

でも慣れはしとかないとね。今度麗子姉さん達にも協力してもらおうかな。

とりあえず今は……そうだなあ。じゃあ

「神宮寺さん」

「は……」

神宮寺さんのに素早く自らのを重ねる。すぐに離したけどね。

「慣れならこっちに私合わせて五人いるのでそれで特訓したらいかがでしょう。今はこれしか方法がありませんが」

「え、あ、なん、えと」

真っ赤っか。これは大分特訓が必要だな。

本當はもうし読書したいけどこの狀況で読書すると使用人になんて言われるか分かんないし帰るか。

「すみません。今日はお暇します。あ、神宮寺さん。連絡したいので電話番號を教えてもらえませんか？」

「え、えっとメールアドレスでも？」

「私攜帯持っていません」

「……はい」

今時の子校生が攜帯持ってないことに軽く驚いたなこの人。

「それではさようなら神宮寺さん」

車はすぐに発車した。

「……らかかった」

「尾様のがですか？」

獨り言のつもりだったのにいつしか松崎が立っていた、ら

「ああ。の子のが気持ちいいと思うなんてもう変態だよな」

「そうですね。変態過ぎて気持ち悪いです」

「お前もうし主人に気を使え」

相変わらず表は全く変わっていなかったし心も全く揺らいでなかった。だけど

『……っん。神宮寺、さん』

っぽい聲だった。

「……今なら彼への妄想だけで能小説書けそう」

「やめてください。警察の前に両親をお呼びしますよ」

やめます。だからあの人たちを呼ばんでくれ。

凜音さん。僕があなたを好きになったのは知り合って間もなくでしたよ。