《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》4話 桜花近日満開
桜花近日満開
1
「なぁ、先輩とどんな関係なんだ?教えてくれ!」
「狹間っちとの関係?んーとねぇ……」
固唾を飲んで、蘭華がこれから言う言葉に神経を集中させた。
「うちの近所に住んでいるんだよね。だからい時から遊んでいたんだよ、2人で」
張してたのだが、思ったより普通の回答で安心した。
俺の心にかかっていたモヤはすっかりと晴れたが、依然としてこの曇り空は晴れなかった。
「じゃあその『〜っち』っていうのは?」
「昔の名殘だよ。小さい時はそう呼んでたから」
これで元々の目的は達したし、それに蘭華の楽しんでる様子を見れた。
もう十分に目的は果たせた。
「じゃあ、帰るか」
「え?なんで?來たばっかりだよ?」
笑顔で言えばオッケーしてくれるかなと思ったが、さすがに甘くなかった。
別に蘭華と遊ぶことが嫌な訳では無い。
なのだが、お財布に優しくないこの場所に長くいると、きっと空になってしまうのだ。
そうなると、々と困るので俺は帰宅を提案したのだ。
「さぁ、思いっきり遊ぶぞぉ!」
「おー」
と、俺は半泣きで拳を上にあげた。
2
あれからいくつのアトラクションを遊んだのか。
気付けば5個。
財布が空になる寸前までに來ていた。
そして今は、遅めの晝ご飯。
蘭華は、トイレに行ったので1人で先に食堂にった。
晝間をすぎ、人はないはずの時間にも関わらず、食堂の中はとても混んでいた。
恐らく、みんな混雑する晝間を避けていたのだろう。
俺は食券を購するべく、食券販売機の列に並ぶ。
「あれ?こんなとこで何してんの?」
蘭華とは違う聲質。し高い聲だった。聞き覚えは無くはない。
クラスメイトの……。誰?
聲のしたところを見ると、そこには茶髪のの子がいた。
「ごめん、名前なんだったっけ?」
「まだ覚えてないなんて……。私の名前は皆田みなだ 絵里えり。クラスメイトなのに!覚えておいてよね!」
「ごめんごめん。忘れが激しくて……」
ごめんなさい。忘れが激しいのではなく、ただ認識していなかっただけです。
「ところであんた、何してんの?」
「食堂にご飯を食べに」
「違うわよ!さっきから何?財布を開いて、ため息ついて、頭を搔いて、首を傾げて……」
傍から見るとそんなことしてたんだ……。
恥ずかしい……。
「じ、実はな、々あって……」
「あれ?絵里じゃん!どうしてここに?」
話がややこしくなるので、この方にはもう一度トイレにでも行ってもらいますか。
「悪いが蘭華、し外してもらえるか?」
「え?わ、分かった」
そう言って、蘭華は食堂を出た。
「え、なんで?今、蘭華ちゃんいたよね?」
「その話も含めて、全部説明するからひとまず、席に著こうか……」
俺と皆田さんは、それぞれ食券を購し席についた。
今日の俺の晝ごはんは、かけうどんだ。
本當はカツカレーとか食べたかったけど……。お財布が悲鳴をあげているので、仕方なくこれにしたのだ。
俺はそのかけうどんを食べながら、今回の件について全てを話した。
蘭華と一緒に遊びに來たこと、遊びすぎてお金が盡きかけていること、それで困っていたということ。
話している時、彼は俺を笑うこともなく真剣に聞いてくれた。
そして話し終わると、彼は納得したように、
「なるほど」
と述べたあと、こう提案してきた。
「お金貸そうか?」
「ほ、本當か?出來ればお願いしたい」
困っていた俺にとっては救いである。
これで何とか今日は持つだろう。
俺は安心して、深く息を吐いた。
「分かった。じゃあいつでもいいから、ちゃんと返してね!持ち逃げは許さないから!」
「分かったよ。悪いな……。あれ?名前なんだったっけ?」
「はぁ〜、一どんな頭してるわけ?もう絵里で良いよ。今度こそ忘れないでね!」
もちろん、忘れてなどいない。これはボケだ。
「ありがとう、絵里。今度、ちゃんとお返しするよ」
「じゃあね」
彼は俺に5000円札を渡して、先に食べた皿を返しに行った。
そして俺も殘っていたうどんを啜って、外で待っている蘭華の元に向かった。
「あのさ、なんで追い出されないといけないの?それに何勝手に食べてるの!」
「あ、ごめん。ちょっとね」
そう言えば、蘭華何も食べてなかったんだった……。
「なにが、『ちょっとね』なの!私、お腹がどうにかなりそうだよぉ」
「ごめんごめん」
俺が頭を下げ謝罪すると、蘭華は頬を膨らませて、し拗ねた。
「もう、いいよ。それよりも遊ぼう!」
「え、食べなくていいのか?」
「一応、おやつとして持ってきたサンドウィッチあるから大丈夫!」
そう言って、バックから大きめの弁當箱を取り出し中にあったサンドウィッチを1つ頬張った。
「用意周到だな」
「當たり前だよ!今日を本當に楽しみにしてたんだから!」
そういや、昨日も言ってたな。
蘭華、ずっと楽しみにしてたんだ。
だったら、思う存分楽しんでもらおう。
俺はそういう気持ちになった。
お金もあるし、大丈夫だろう。あくまで『だろう』だけどね。
午後からはあっという間だった。
午前中の數を超えるアトラクションをこなし、閉園15分前の午後5時45分になっていた。
親子連れも、カップルもみんなゾロゾロと帰り出した。
気付けば、日もかなり傾いている。
「そろそろ帰ろうか。もう疲れたよ……」
「そうだね、結構遊んだし帰ろう!」
結構ではない。
俺たちは、とんでもない量のアトラクションを回って気付けば借りていた5000円も殘り1000円を切っていた。
ただそれでも、蘭華の笑顔がたくさん見られたので良かったことにしておこう。
3
俺たちは、帰宅の途についた。
登下校の際、必ず通る2人が別れる場所に著くと、蘭華は立ち止まった。
そして俺の顔を見てこう言う。
「1ついい?剣也」
「どうした?」
彼の顔は今までにないほど赤く染まっていた。
夕焼けの影響もあるかもしれない。
でも明らかに様子がおかしかった。
「私ね、剣也に言わないといけないことがあるの」
「ん?言ってみろよ」
「ど、どうしようかなぁ……」
明らかに回答に困っていた。
今までなら何でも俺に言ってきていたのに、今回は珍しくなかなか言えずにいる。
「安心しろよ、笑ったりしないからさ」
「うん、じゃあ言うね!」
5秒ほどの間があって彼はようやく口を開いた。
俺が予想していた、恥ずかしくて言えない話などではなかった。
彼が言い放ったことは、全く想像していなかったことだった。
蘭華と別れ1人になって歩いていた。家まではそんなに遠くない。
紅く染まった空は綺麗だ。だけどそんなことを言っていられない。
なぜなら彼の言った言葉。
それに隠された気持ち、それを考えていたからだ。
そう、彼の言い放った言葉はこの先の生活を大きく変える、重要な重要な言葉。
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