《Waving Life ~波瀾萬丈の日常~》32話 貓の手も借りたい
貓の手も借りたい
1
急所の痛みが消えて勉強を再開した俺。
それからもうかなり経った。
気付けばもう正午。
晝飯時になったので、俺は勉強をしている手を止め蘭華に聞く。
「晝飯、どうする?」
すると、蘭華も手を止めて自分の鞄を開けた。
そして中から出てきたのは、カップ麺だ。
「これにお湯注いでくれたらそれでいいよ〜!」
と言って彼は俺に渡す。
人任せ過ぎるような気がするが、1から作るよりは手間が省けるので今回は許す。
じゃあ、俺もカップ麺にするか…。
俺は、部屋を出てリビングに向かった。
しばらくして、お盆に自分のと蘭華の分を乗せて自室に戻ってきた。
今回は流石に大人しく勉強していた。
また部屋を詮索されたら…、と思ったがその心配は必要なさそうだ。
「お待たせ」
俺が聲を書けると、蘭華は再度勉強の手を止めた。
そして、テーブルの上にある勉強道を床に置いた。
『ぐぅ〜』
突然そんな音が聞こえた。
どうやら蘭華の腹が鳴ったようだ。
余程、お腹が空いているらしい。
「晝飯、これだけで足りるか?」
「大丈夫。勉強、早く再開しないとね」
俺はお盆に乗っているカップ麺を蘭華に渡す。
蘭華は醤油味のラーメン。俺はカップ焼きそばだ。
蘭華はカップ麺の蓋を取り、割り箸を割るとすぐに麺を啜すすった。
ものの10分もしないうちに、俺たちは晝飯を平らげた。
午前中、蘭華と協力して勉強を進めた。
だが、浮き彫りになったことがある。
2人とも、課題の進捗狀況が悪い。
そのため蘭華からゆっくりと問題を教えてもらうことがあまり出來ていなかった。
更なるペースアップをするためには、勉強を教えに來る人材がもう1人必要だ。
だが知り合いにそんな頭のいい人が浮かばない。
俺より頭がいいのは、蘭華ぐらいしか知らないのだ。
俺は、ダメ元で蘭華に尋ねる。
「なぁ蘭華。もう1人呼ばないか?」
「何で?」
「蘭華から教えてもらおうと思っても、蘭華自の課題を進めるのに忙しくてあまり教えてもらえないから。効率上げるにはもう1人くらい必要だろ?」
「まぁ、それもそうだね」
「誰か、出來そうな人いない?」
「う〜ん」
蘭華は腕を組んで考え込むような仕草をする。
その後、鞄から攜帯を取り出して1本の電話をかけた。
「もしもし?あのね、今勉強會してるんだけど今から來れる?…うん。…うん。…本當?ありがとう。じゃあ、待ってるね!」
3分もしないうちに話はまとまった。
蘭華の話している言葉を聞くとどうやらオッケーのようだ。
「で、誰をった?」
「それは、來てからのお楽しみ!」
全く思い當たる節がない。
俺たちはその人が來るまで再び勉強に集中することにした。
2
それから30分後、午後1時を丁度まわったところだ。
家のインターホンがなる。
「あ、私が行くね!」
そう言って蘭華は立ち上がり、玄関へと走っていった。
しばらくしてその人を連れてきた。
背は高く、はシュッとしている。
黒の髪のは綺麗に整えられていて、カッコイイというのが印象だ。
雰囲気はどこか大人びている。
この人には見覚えがある。
俺たち、1年1組を統率するリーダー。
つまり學級會長の西島にしじま 洋介ようすけだ。
西島とは、正直あまり喋ったことがない。
そのため、知っている人にも関わらず張してしまう。
「あ、こんにちは」
とりあえず挨拶しておく。
すると西島は笑顔をらせて、
「こんにちは」
と返してきた。
世の中では、顔のいい人をイケメンと呼ぶ。
まさに、彼はそのイケメンである。
俺が見る限りでは非の打ち所もない。
まさに高校生の鏡である。
「あぁ、座って下さい」
同級生にも関わらず敬語になってしまった。
あまりの完璧さに揺してしまったらしい。
隣にいた蘭華も座ったのを見て俺は自己紹介をする。
「蔭山です」
「どうも、西島です」
聲もき通ったような聲だ。
「わざわざすいません、來てもらって」
「いえいえ。課題は早急に仕上げて、正直暇でしたから」
とても同級生同士の會話には思えない…。
「なんか落ち著かないから、敬語やめませんか?」
「そうですね…。それでは宜しく、蔭山君」
「こちらこそよろしく、西島」
そう言って早速勉強にろうと思ったが、1つ疑問に思うことがあった。
何故、蘭華が西島と攜帯番號換したりしてるんだ?
というか2人が喋っているのなど見たことない気がするのだが…。
「なぁ、蘭華」
「何?」
「西島とはどういう関係だ?」
「ライバル…ってところかな」
西島が話に割り込んでくる。笑顔は今も絶やさない。
「そうだね。西島君は番數いつもベスト3にはってくるからいい勝負してるよ!今回も3位だったし。それもあってよく一緒に勉強會したりしてるんだよ」
完璧な西島であれば、ベスト3にっているのも納得できる。
なるほど、ライバルね…。
一瞬、俺のライバルかと思ったけど違ったか…。
あ、言っとくけど別に勉強のライバルと意味じゃないからね!
「さぁ、2人とも。勉強始めましょうか」
そう言って、西島が話を閉じた。
それからと言うものの俺たちは5時間ほど脇目も振らず勉強をしていた。
おかげで、かなり効率のいい勉強が出來たと思う。
西島は6時の鐘が鳴ったのを聞いて、さっき帰っていった。
「なぁ、蘭華」
「どうしたの?」
「明日も用事ないなら、このまま泊まってけよ。そしたら夜も出來るしさ」
彼は俺の言葉には、全く驚かなかった。
もしかして、それも考えていたのだろうか。
「そうだね!分かった。このまま泊まってくよ!」
こうして今日、蘭華は泊まっていくことになった。
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