《本日は転ナリ。》9.初登校
長の違いのせいか、いつも歩いているこの道も今までとは全く違う景に見える。見慣れた家の外壁、庭先からびた柑の木の枝、病院に行く時に使うバス停……そのどれもがいつもとどこか雰囲気が違っていた。
そしてそんな事は無いと分かっていても、周りの人達の視線をじてしまう。すれ違う人達が俺の方をチラチラと見ては何かを話している気がするのだ。もしかしたら、他人から見たら俺は俺のままで、になんかなってないんじゃ……そんな風に思ってしまう。
すると、莉結の手が俺の肩を叩いた。
「瑠、大丈夫っ?」
    いつもこいつは俺の微妙な心の変化にも気づいてしまう。これは馴染ゆえの事なのか、莉結が特別そういった微かな変化にも気付ける程の繊細な心の持ち主なのか……きっと莉結は前述した方なんだろうけど。
「大丈夫っ……だと思う。てか本當に妹って設定で通ると思う?」
「まぁ……他の細かい所は気にしなくていいと思うけど、何かと便利なのかもね。だって何か口らせちゃっても"お兄ちゃんに聞いたんだ"とか使えるでしょ?』
「お前……馬鹿じゃなかったんだな」
「失禮なっ!    まぁ、とりあえず慣れるまで瑠は私から離れちゃダメだからね」
「言われなくてもそうさせてもらうって」
そんな事を話しているといよいよ校門がすぐ側へと迫ってきた。
俺の心拍は最高に達し、額からは妙な汗が滲み出る。
「おはようございます!    おはようございます!」
    いつもよりやけに騒がしいと思っていたら……よりによって"挨拶運"が行われていたのだ。不定期で行われているこの運の日に初登校だなんて、俺は相當運が悪いみたいだ。
「おはようございます…」
俺はなるべく存在を消し、顔を伏せながら小さな聲で挨拶をする。
「あれ、あんな子居たっけ?」
    そんな聲が聞こえて、俺たちは小走りに昇降口へと向かった。
職員室へり転校の旨を伝えると、見慣れた擔任の榊原先生に他人行儀で校長室へと案される。
校長先生に簡単な挨拶をすると、"話は聞いているからね。同學年の如月瑠くんの妹さん、だったね"なんて言われただけで特に何かの手続きをするでも無く校長室を後にした。こんな簡単に転校の手続きが終わっていいのだろうか……そんな疑問を殘しつつ、俺は廊下を歩いていく。
そして校長は"病院の先生から話は伺っているよ"と言っていた。そうなると病院がこの転校の話を進めた事になる……俺の唯一の保護者である母さんは何も知らないのか? こんな事になってから、まだ一度も顔を合わせて無い母さんは、俺の"親"として何かをしてくれているのか……
    いや……今はそんな事どうだっていい。どうせ母さんには"興味の無い事"なんだから。
    そして俺は見慣れた教室の見慣れたドアの前に立った。
このドアを開いても見慣れた顔が並んでるだけ。それを分かっているのに心臓が張り裂けそうになる。
そして、そんな俺の気持ちなど知ってか知らずか、榊原先生は容赦なく教室の扉を開いた。
クラスメイトの視線が俺に向かって集中し始める。そしてゆっくりと教卓の前に並ぶと、先生はいつもの調子で口を開いた。
「おはよー。えー……突然ですが、如月瑠が病気の関係で長期的に休む事になった。調的には心配ないらしいが、しばらくの間、學校へは來れないみたいです。まぁそんな酷い病気じゃないらしいから心配するなよー。そんで……代わりと言ってはなんだが、離れて暮らしてた瑠の雙子の妹さんが、看病を兼ねてこっちに住むそうなので、暫くこのクラスで一緒に勉強することになりましたぁ。みんな仲良くしてやってくれよー。男子達は可いからって瑠の妹さんって事を忘れずに!    それじゃ、自己紹介……よろしく」
    俺は教卓の橫で背筋をばし"ふぅ"と呼吸を整え口を開いた。
「あの……えっと、如月瑠です。よろしくお願いします」
すると、先生が驚いた様子で手に持った書類に顔を近づける。
「あれ……雫さんじゃあない? この紙には如月雫って書いてあるんだけど……」
「あぁ……いやっ私は瑠です! 如月瑠です」 
    私がそう言うと、先生は突然何かを閃いたように眉を上げると大きく笑い始める。
「そっか、そうかぁ! そう言う事かっ。瑠の雙子の妹さんだから瑠か!」
  そんな先生に私が苦笑いで返すと、先生はチョークを手渡し、黒板を指差した。
私は先生に促されるまま黒板に如月……瑠…と書きあげる。
すると教室の中からどっかの馬鹿が聲を上げた。
「瑠を逆にしただけやーん!」
    俺はつい、知っとるわ!    なんて心の中で突っ込んでしまう。すると、どこからか「俺めっちゃタイプだわー」なんて言う聲も聞こえてきた。
鈴木勝也だ……お前つい最近"俺にも彼ができたぁ"なんて大聲で喋ってたじゃねぇか。しかも俺の妹、じゃない……俺になんて事……俺に……? うわっ、気持ちわりいっ!
そんなこいつらも、以前の俺とは殆ど喋った事も無いような奴らだ。俺とは知らずに急に馴れ馴れしい事言いやがって。
そして俺は先生の指示で、一番後ろの窓際……俺が座っていたあの席へと向かう。
その途中もクラスメイトの好奇の視線が纏わりつくように俺を追うのをじた。
"あぁ、ちょっと目元が似てるかも"とか"スタイルめっちゃいいじゃん"とか、どうでもいい批評が次々と耳にって來る。その度に俺は"そんなのどうでもいいだろ?"と心の中で唾を吐き捨てた。
そして席に著き、やっと教室の騒めきが落ち著きはじめた時、ふと頭に一つの不安が過(よ)ぎる。
もし、いま突然元の俺の姿に戻ったら……
    そんな妄想はみるみる広がっていく。
"なにやってんの……裝が趣味……とか?"
"気持ち悪い……"
"変な奴だとは思ってたけど……"
"おいっカメラ、カメラ!    "
    そうなるよな、きっと。絶対そうなるって。俺……そうしたら死ぬしか無いじゃん。
そんな時、隣から春の木れ日のような、そんな優しい聲がふわりと投げかけられたのだった。
「あの……大丈夫?」
    その聲の主は隣の席の佐々木千優(ささき ちゆ)さんだった。
彼は大人しく、授業態度も真面目で、休み時間なども読書や授業の復習をしているような子だ。そんな彼も、隣の席でありながら、人と関わるのが好きでは無い俺の格も相まって、これまで一言も會話したことが無かった。
そんな千優さんが自分から聲を掛けてくるなんて……そこで俺はふと気付かされる。そうか……だからか……と。
初めての戀
美男美女。リア充達のハーレム物。 とは程遠い。年齢=彼女いない歴。要するに童貞が主人公の物語。 僕が初めて人を好きになったのは高校二年の春。まさかまさかの一目ぼれだった。 しかし、それは一目ぼれではなくて必然だったんだ。 運命的な出會いのはずなのに、運命はとうの昔から動いており、僕だけがそれを忘卻の彼方に置き去りにしていた。そう、忘れてしまっていたのだ彼女のことも、あの子との約束をも。 そしてあの人のことも---。 ある日を境に見るようになった夢、性別を超えて仲のいい幼馴染、心の闇を隠しムードメーカを演じる親友、初対面なのに目の敵にしてくる男子生徒、そして僕が戀に奧手だったのも、全部意味があった。 それらに気が付いたのはもちろん偶然じゃない、必然的に一目ぼれした彼女と出會ったからである――。 それでも君が好きだから。 必ず君を迎えにいくよ。 戀に不器用な男子高校生と一途に彼を想い続ける女子高生の、青春をかけたドタバタラブコメディー。 【更新頻度】 H31.2月より週一を目処に更新致します。
8 16099回告白したけどダメでした
主人公、伊敷誠実はどこにでもいる普通の男子高校生……ではなく。一目惚れした相手に99回告白しちゃうような、超一途?な男子高校生。 入學してから毎日のように、山瀬綺凜に告白し続けるが、ことごとく振られてしまう。 そんなある日、誠実はある決意をする。 「俺……次の告白が駄目だったら……山瀬さんの事を諦める!」 この一言から誠実の戀愛事情は大きな変化を示す。 果たして誠実に待ち受ける変化とは?! 皆さまのおかげで、投稿開始から4日で日間戀愛ランキングで1位になれました。 これからも週四投稿を頑張りますので引き続き応援いただけると嬉しいです。 600萬PV突破!! ブックマーク登録數8000件突破! 総合評価20000ポイント突破!! 日間総合ランキング4位ランクイン!!(2017年11月17日) 「甘え上手な彼女」完結 「先輩はわがまま」連載中 こちらの作品もよろしくお願いしなす。
8 162double personality
奇病に悩む【那月冬李】。その秘密は誰にも言えない。
8 122脇役転生の筈だった
乙女ゲーム『エデンの花園』に出てくる主人公……の、友人海野咲夜。 前世の記憶というものを取り戻した咲夜はある未來のために奮闘する。 だって、だってですよ? この友人役、必ず死ぬんですよ? 主人公を庇って死んじゃうんですよ? ……折角の2度目の人生、そうそうに死んでたまるかぁぁぁ!! という思いから行動した結果、何故か私を嫌っている筈だった兄が重度のシスコンと化したり…。 何故か面倒事に巻き込まれていたり? (特にシスコン兄の暴走のせいですが) 攻略対象者とは近付かないと決めていたのに何故か友人になって…。 しかもシナリオとは違って同じクラスになってるし…!
8 119獻身遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな戀人ごっこ~
女性なら誰もが惹かれるイケメン銀行マンの穂高清澄(ほだかきよすみ)は、『ミスターパーフェクト』と呼ばれている。 取引先の社員である日野愛莉(ひのあいり)は、ひょんなことから彼とエッチをする関係になってしまった! トラウマから戀愛ご無沙汰だった二人は、胸をきゅんきゅんさせながら手探りの戀人ごっこにハマっていき──?
8 56【連載版】落ちこぼれ令嬢は、公爵閣下からの溺愛に気付かない〜婚約者に指名されたのは才色兼備の姉ではなく、私でした〜
アイルノーツ侯爵家の落ちこぼれ。 才色兼備の姉と異なり、平凡な才能しか持ち得なかったノアは、屋敷の內外でそう呼ばれていた。だが、彼女には唯一とも言える特別な能力があり、それ故に屋敷の中で孤立していても何とか逞しく生きていた。 そんなノアはある日、父からの命で姉と共にエスターク公爵家が主催するパーティーに參加する事となる。 自分は姉の引き立て役として同行させられるのだと理解しながらも斷れる筈もなく渋々ノアは參加する事に。 最初から最後まで出來る限り目立たないように過ごそうとするノアであったが、パーティーの最中に彼女の特別な能力が一人の男性に露見してしまう事となってしまう。 これは、姉の引き立て役でしかなかった落ちこぼれのノアが、紆余曲折あって公爵閣下の婚約者にと指名され、時に溺愛をされつつ幸せになる物語。
8 104