《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》3-7 「あたしの切実な願いなの!」
「おい、このまま移するのか?」
「何言ってるの? 當たり前じゃない」
辺り一面が人で埋め盡くされた駅前広場。その中で俺達四人は橫一列に手を繋いでいる。
普通に考えてこれ邪魔だろ!
「俺達はデモを起こしに來たわけじゃないんだぜ? 橫に並んでたら邪魔だし歩きづらいだろ?」
「うーん……。それもそうね……」
流石の堂庭でもこの狀況が異常だと気づいたか。
というかこうなったのはアナタのせいなんですけどね。
「じゃあとりあえず手を離してバラバラになろうか」
「思いついたわ!」
俺の聲をかき消すように堂庭は大きく聲を張り上げた。しは俺の意見も聞いてくれよ……。
「おいっ、一なんなん」
「桜と修善寺は一旦手を離して!」
俺を完全スルーして場を仕切る堂庭。
だがこうなったら仕方ない。彼に抗議してもけれてはくれないだろうし、大人しく事の経緯いきさつを見屆けるとしよう。
「桜は晴流の後ろ、修善寺はあたしの後ろについて手をそれぞれの肩に乗っけて!」
「えっと……こ、こうかな? お姉ちゃん?」
「うん、そんなじでいいわ」
両肩に桜ちゃんの手が乗せられる。小さいけれど、ほのかに暖かい。
隣を見ると、修善寺さんも同様に堂庭の肩に手をかけていた。
「よし、これで出発できるわね!」
「いやいや待てって! 一どういう狀態だよこれ!?」
俺は堂庭と手を繋ぎ、両肩は桜ちゃんに摑まれる。
イメージ的には期によくやった電車ごっこを橫に連結したバージョンだ。
正直、さっきより目立つ集団と化した気がするがもうそんな事はどうでもいい。それよりも痛い視線をけるこの場から早く抜け出したかった。
「何? 不満でもある訳?」
「いや……。もう好きにしてくれ」
「あ、あの瑛殿? 何故お主はその手を離さないのじゃ?」
修善寺さんは怪訝そうに言いながら、俺と堂庭を繋ぐ手をじっと見つめてきた。
やっぱ気になるよな……。
「うぐっ。こ、これは別に変な意味とか全然なくて、その……四人が離れないために仕方なく繋いでいるのよ!」
「仕方なく、か」
「何か文句あんの!?」
「いや、別に無いけど」
ぶっきらぼうに答える俺。堂庭は獲を見つけたライオンのように鋭い目つきで睨んでくるが、正直何故そこまで怒っているのか分からない。
「……まぁそのGHL? とかいうライブもあるし早く見て回るわよ」
最後にそう吐き捨てた堂庭は俺達に振り返ることもなく前へ歩き出す。
堂庭の言うとおり、今日ここへ來た理由は化粧坂36とGHL28のコラボライブを見るためだ。
だが七夕祭りの會場が近いことや日程が重なったことから、ライブ開演前に祭りに行っておこうとなったのである。
……というかこの電車ごっこのような陣形は崩さないんですかねぇ。凄く恥ずかしいんですけど。
「ねぇ晴流! 昔よくやってた例のアレ、今回もやるでしょ?」
「あぁアレか。なんか久々過ぎて懐かしくじるな」
いつの間にか堂庭の機嫌は直り、昔話に花を咲かせながらやってきたのは道端に設置されたとあるブースの前。
ここで俺が堂庭と一緒に七夕祭りに行く時に必ずする事があった。
それは短冊に願いごとを書く、という事。
一つ説明をすると、この七夕祭りでは街のあちこちに『七夕願いごと短冊販売所』というブースがあり、そこで短冊を購して各々の願い事を記するのだ。
そして書いた短冊は近くにある神社に奉納される。その為、ただのお遊びという訳でもなかったりするのだ。
「星に願いを、か。ふむ、中々面白そうじゃのう」
「短冊に願いごとかー。えへへ、こんなの何年振りだろ」
後ろから楽しそうな聲が聞こえてくる。
釣られた俺は思わず頬が緩んだが、その瞬間を堂庭に見られたらしく鋭い目つきで睨まれた。
「……晴流。なに他のに見惚れてニヤニヤしちゃってるわけ?」
「はぁ!? 全然違うし! つか見てねーし!」
とんだ勘違いをされてしまった。てか仮に俺がをニヤニヤ見つめてても、俺が変人認定されるだけで堂庭にとやかく言われる筋合いはないだろうに。
「ったく、もっと魅力的ながここにいるってのに一何を考えているんだか!」
「いやお前はただのロリだろ」
呆れてツッコミをれる俺。しかし堂庭は嬉しそうに「まぁね!」と返してきやがった。
別に褒めた訳じゃないんだけどな。
「いいから短冊を買うぞ。後ろがつっかえてるから」
「あぅ……。そ、それもそうね」
混み合が酷く立ち止まっていては迷になるため、急ぎ早に売り場の前まで移することにした。
「あれ? なんでお前だけ二枚持ってんだ?」
「ふふん、あたしの願い事は一つだけじゃないからねー」
得意気になって答える堂庭だが、複數ある願い事を悩んで一つに絞り込むのが普通なのではないだろうか。それに二枚以上書くのは反則な気もする。
「とりあえず……」
面倒な奴を橫目に、まずは自分の短冊かだいを見つめてみる。はて、何を書こうか……。
用意されてあったペンを手に取りしばらく考えた挙句、現実的且つ葉ったら嬉しいな程度の小さな願いごとに辿り著いた。
「ぷすぅ、あんた『授業中居眠りしませんように』って! 星に願う前にそれくらい自分で努力しなさいよ!」
笑われた。隣の面倒な奴に盛大に笑われたぞ。……まあ自慢できる容ではないのは事実だが。
「そういうお前は何を書いたんだよ」
苛ついた俺はし強気な口調で話し掛ける。すると堂庭は誇らしげに一枚の短冊を差し出した。
そこに書かれていたのは……。
『いつまでものような見た目でいられますように 堂庭瑛』
「ちょ、てめぇだって他人の事言えねぇじゃねーか!」
「はぁ!? あんたのとは全然違うじゃない! それとも何? あんたもになりたいわけ?」
「んなわけねーだろ!」
俺がにTSする展開とか誰得だっての。
「これはあたしの切実な願いなの! それにいつまでも若々しくいたいのはとして共通の意識だし!」
「いやお前はその設定年齢が低すぎるんだよ!」
堂庭は何故そこまで型に拘るのだろうか。普通のの子なら低長、貧なんてコンプレックスにしかならないのに。
……まあコイツが普通ではないってのは十分わかっているのだが。
俺はこれ以上堂庭と激論を繰り広げても進展しないと判斷し、溜め息をついて反対側にいる桜ちゃんの方を見てみる。彼の短冊の容はしっかりとしていて、字も丁寧に書かれてあった。
「『志校に合格できますように』か。高一なのにもう進路とか決めてるのか。凄いな」
「いえいえ全然そんな事ないですよ! 私、將來看護師になりたいって昔から決めてありましたから」
目線を落とし、照れくさそうに答える桜ちゃん。進路、か。俺なんて考えてすらいないのに彼は立派である。
桜ちゃんの短冊を見ながら心する俺だったが、ここで彼の短冊の下にもう一枚紙が隠れていることに気付いた。
「あれ、桜ちゃんその下にもう一枚……」
「っ! あ、えっとその……。これは見せられないです! 本當に!」
「そっか、それなら全然大丈夫なんだけど……」
必死になって見ないでくださいと訴える桜ちゃんだったが、そこまで言われると逆に見たくなってしまう。
それに顔も赤くなって恥ずかしそうにしているし、余程他人には言えない悩みなのだろうか。
というか桜ちゃんも短冊を二枚買っていたんだな。姉妹二人、揃いも揃って張りな者達である。
苦笑いを浮かべつつ気まずくなった俺は、再び顔を堂庭の方に向ける。すると奧に立っている修善寺さんが口を開いた。
「おや瑛殿。このもう一枚の短冊は……」
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