《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》3-11 「友達…………じゃと?」
「じゃが何故川殿はわしと連絡先を換したんじゃろうな」
「うぅ……。もうその話題はやめないか……?」
そんなの決まっているだろう。俺と換するのが嫌だったんだよ。
それに考えてみれば早い話だ。素もよく分からない見ず知らずの男子に自分のメアドを教える子がいるか?
あの狀況だったら同相手の方が當然安心できる。即ち、俺が男だから駄目だった訳で、川さんは俺を嫌ってないはずだ! ……多分。
「しかし、妹さんは全然見當たらないのう。まさかもう手遅れなのでは……」
「おい、不吉な事言うのは良くないぞ」
冗談じゃ済まされないフラグが立ちそうで怖いんですが。
大、こんな人混みの中で背丈の小さい子を見つけるのはそう容易い事ではない。
既に迷子センター的な場所に預けられているかもしれないし、ゆっくりと探せばいいだろう。
川さんも二人の邪魔にならない程度で構わないと言っていたしな。何か勘違いしているようだったけど、気にしないでおこう。
「もう六時過ぎてるし、そろそろ合流場所へ戻ろうか」
気づけば堂庭達と別れてから一時間が経とうとしていた。今日のメインイベントであるライブに間に合わなければ本末転倒だし、早めに戻っておきたい。
「そうじゃな。それと川殿の件は二人に伝えた方がいいかのう?」
「あぁ、言っといた方がいいよな。気乗りはしないけど」
桜ちゃんは構わないが、堂庭には言いたくない。あいつならセンサーを度最大にして探してくれそうだが、もし見つけた場合、俺達が困るのだ。
人目を憚らず抱きつくという行為を堂庭は平気でやりそうだし、暴走する姿は目に見えている。
合流する前に何とか事が解決すると良いのだが……。
「じゃあ戻るとするかのう」
「おぅ」
「……ほれ」
「…………?」
當然の如く差し出される手。
そして早く繋げと言わんばかりに見つめられる。
もはやこれ、ご褒というより義務みたいだな。
最初は生暖かいらかさにドキドキしたが、もうそのような恥ずかしさはどこか遠くへ行ってしまった。慣れって怖いね。
「よーし! 出発進行なのじゃ!」
「ちょっ、そっち逆だから! 真逆だから!」
「え? でも西は左じゃろ?」
「あぁ。北が上の地図ならな……」
ここまで方向音癡が酷いと逆に心してしまう。
手を繋ぐのもある意味正解と言えるだろう。
突っ走ろうとする修善寺さんを押さえ、店と人がひしめき合う通りを進む。
日が暮れて空も暗くなりかけていた。
「お主に一つ聞いてもいいかの?」
珍しく真剣な眼差し。重要な話でもするのだろうか。
「何? 俺ならどんどん聞いちゃって大丈夫だぞ」
「そうか……じゃあ」
歩きながらであるため、お互い顔をチラ見しつつ會話する。
修善寺さんの聲のトーンが若干低い気がした。
「お主は學校が……楽しいと思うか?」
學校が楽しい……?
想定外の質問に戸うが、様子から察するに率直な答えを述べた方が良いだろう。
學校か……。堂庭と平沼という厄介者の二人がいるけど、他は面白い奴や気の合う奴もいるし、十分楽しいと言える。
「俺はエンジョイしているぞ。修善寺さんはどうなの?」
「え? あぁ。わ、はじゃな……」
會話を繋ごうと聞き返したが、反応は微妙だった。なんか慌てているようだし、もしかして地雷を踏んでしまったのかもしれない。
「は……楽しいと思わない。寧ろ嫌。學校は嫌いじゃ」
「あ、そ、そっか……」
「おまけに家に帰る事も無いし、外へ出掛けようにも、一人だと怖いのじゃ……」
「なら友達とかって遊びに行けばいいんじゃない? ストレス発散にもなるだろうし」
「友達…………じゃと?」
鋭い視線が向けられる。
不味い。俺はまた地雷を……。
「わしの友達はお主たちだけじゃ。……學園の連中は上っ面だけのばかり。正直顔も見たくないのう」
うわ、これ絶対踏み込んじゃいけない闇だろ。まず言い方がヤバいって。
それに、修善寺さんは學園で孤立してるのか?
聞きたいのは山々だが、もうこの話題を続けるのは流石にキツいだろう。
でも困っているのなら協力してあげたいよな。俺を「友達」と言ってくれたし。
「なんかごめんな。気まずくさせちゃって」
「ふふ、お主が謝る必要はないぞい。事の種はが蒔まいたからのう」
「いやでも、変に聞き返したりしたし……」
「別に構わないのじゃ。その優しさはわしに十分伝わってきたぞ」
にこりと微笑む修善寺さん。
地雷を踏んだ件については怒ってないようだ。
しかし、友達が俺達……多分俺と桜ちゃんの二人だろうが、それだけというのは気掛かりだ。
もしかして學園で寂しい思いをしているのかもしれない。
そういえば堂庭も學園時代、ロリコンがバレてハブられてたとか言ってたよな。
私立鶴岡學園……。お嬢様學校であるが故に謎も多い世界だ。
一般人の俺にできる事があれば何でもしてあげたいが果たしてどうだろうか……。
「お兄さんに修善寺先輩。どうでした? 楽しめました?」
「うーん、まぁまぁかな。そっちはどう? 堂庭に引っ張られなかったか?」
「あ、それは無かったですね。意外とお姉ちゃん頼りになりましたよ」
合流場所の駅のトイレ前。
えへへとらかな笑顔を浮かべる桜ちゃんに安堵する。
だがもう一人、厄介者のアイツが居なかった。
「堂庭はどこ行った? 探しの旅にでも出掛けたのか?」
「あ、お姉ちゃんですか? お姉ちゃんならついさっきトイレに行きましたよ。探しは……いつもの事じゃないですか?」
「うん、確かにその通りだ」
流石堂庭の妹。よく分かってらっしゃる。
「あ、もちょっとお花を摘みに行ってくるのじゃ」
指差しながら修善寺さんが言う。
暗喩を使うあたり、気品の高さが分かる。流石財閥のご令嬢。よく育ってらっしゃる。
そそくさと子トイレへ向かう彼の背中を俺は何気なく見つめていた。すると橫から桜ちゃんが話し掛けてきた。
「修善寺先輩って不思議な方だと思いませんか?」
「え? あ、あぁ……」
初めて見た時は不思議、というより驚いた。
あんな口調で話すの子が三次元に存在したんだと。
「先輩は凄いんです。思想、信念を一切曲げなくて、常に正直。噓もつきません」
「……でも冗談は言うだろ?」
俺をからかったりするしな。この前の橫浜デートの時なんか明らかに俺の反応を見て楽しんでたし。
「確かに冗談は言ったりしますね。ただ他人も自分も騙したりしない方です。……一つだけ例外がありますが」
「例外?」
「はい。それは……お姉ちゃんです」
きっぱりと言い切る桜ちゃん。
まるで俺に自慢するかのように修善寺さんの紹介をしているし、二人はきっと親友のような間柄なのだろう。
それよりも噓をつかない例外が堂庭って……どういう意味だ?
「お兄さんは先輩とお姉ちゃんとの関係についてどう思います?」
「どうって、そりゃあ……」
お互いに煽り合っていたし、犬猿の仲と例えるのが相応しいだろう。
「仲が悪い、と思っているかもしれませんが、それは間違いです」
「……マジで?」
「はい。お姉ちゃんと修善寺先輩は…………大親友ですよ」
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