夏休みの宿題をお互い教えながら（大俺が教えるのだが）黙々と作業を続けて一時間。

俺はずっと堂庭が発したあの言葉が頭から離れなかった。

の子のゲームで遊びましょ！

――駄目だ。絶対が出てくるギャルゲーを俺にやらせるつもりだ。

あれだけ目を輝かせていたからな……。良い予が全くしない。

「ねぇ、ここの答え何？」

「……自分で考えろ」

「えぇー。さっきから晴流、冷たくない？　もっとこう、楽しくいこうよ！」

「お前はもうし脳みそ使え。そうすれば俺みたいにうんざりするだろうからさ」

「むぅ、せっかくの夏休みなのに……。もうし前向きに考えようよ！」

誰のせいだと思ってんだこのロリコン。

「じゃあこれが終わったら解散でいいか？　そしたら俺のテンションは上がるぞ」

「はぁ、何言ってんの？　今日のメインイベントをやらないで帰るとか馬鹿なの？　阿呆なの？」

「あのな……俺はお前とゲーなんてやりたくないんだよ」

「え……あたしのゲームなんて一言も言ってないけど」

「でもなんだろ？」

「…………そうだけど」

ふてくされたように呟く堂庭。

結局予想通りが登場するゲームをやるんじゃねーか。

もう尾を巻いて逃げ出したい……。

でも後々面倒になるだろうからなぁ。大人しく引きけるしかないんだよね。

はぁ……。

に敷かれる世の夫たちの気持ちが分かった気がするぜ……。

それからしばらく宿題を埋める作業が続いた。だが時は待ってくれない。やがてその時は訪れる……。

「よし、宿題は終わり！　じゃあまずあたしの嫁達を紹介するわ！　その目でしっかりと焼き付けておくのよ！」

本日のお楽しみタイムになり、堂庭のテンションはマックスに達したようだ。俺はだだ下がりだが。

堂庭は背の高い大きなタンスの前に移し、これまた大きな観音扉をゆっくりと開いていく。

「おま、何だよこの量！？」

中には大量のフィギュア（ロリ）やマンガ（ロリ）、ゲーム（ロリ）がぎっしり詰まっていた。

部屋のあちこちにも並べてあるが、まさかそれ以上に隠し持っていたとは思わなかった。

「ぐへへー、可いでしょー？」

「ごめん、キモい」

そんな頬を緩めないで下さい。綺麗な顔が臺無しです。

「これ、あたしの本妻。ごちわさのキノちゃん！」

「……ただのフィギュアじゃん」

「ただのって言うなぁー！」

睨まれる。いや、でもこれフィギュアですよね？　無機質な固形ですよね？

「あたしの嫁を馬鹿にするんじゃないわよ？　ほら、こう下から覗くと……グヘッ、パンツが」

ヤバい、をロックオンした時のような暴走モードにりかけているな……。つかマジでキモい。

「えへへ、してるよぉ」

「ちょ、そんなとこりながら言うんじゃねぇ！」

いくらフィギュアとはいえスカートの中に指突っ込んでニタニタ笑う景はの子であっても気持ち悪い。

うん、これは真剣に更生させる策を考えないといけないな。

「……嫁紹介だけしたいなら俺はもう帰るぞ。じゃあな」

「待って！　今から遊びましょ！　ね？」

腕をぎゅっと摑まれる。こいつ、どんだけ俺とゲーで遊びたいんだよ。

「なら早くしろ。さっさと済ましてやるから」

「ふふっ、ちょっと待っててねー」

そう言った堂庭はタンスの中に詰まれた山々に手を突っ込んで漁りだした。

そして……

「じゃじゃーん！　二次元の時代はもうお終いなのだ！」

「うわ、VRゴーグルじゃんそれ。買ったのかよ！」

「ええそうよ。VRでと遊べるゲームが発売されるって聞いて衝買いしちゃったのっ！」

「…………値段聞いてもいいか？」

「パソコンも一緒に買ったから総額で大四十萬くらいね！」

「馬鹿かよ！？　お前馬鹿かよ！」

流石富裕層……。その金を日々の生活に悩む俺達庶民に使えばより多くの人が幸せになれたというのに……。資本主義って理不盡で殘酷だよね、ほんと。

「まあやってみればあんたも分かるって！　ね、一緒にロリコンになろ？」

「ふざけんな、俺は意地でもそんな泥沼にはハマらないぞ！」

フラグを立てたじになってしまったが、俺がロリコンになるなんて有り得ない。なりたくもない。

堂庭の異常なるを直そうとしているのに、俺まで染してしまったら元も子もないからな。

「準備するからもうし待っててー」

言いながらパソコンを慣れた手つきで作する堂庭。

しかしこいつ、ロリに関しては本當にいつも全力だよな。

「因みになんて名前のゲームなんだ？」

「それは……後で教えてあげる」

何故か恥ずかしそうに答える。

そんなに言いづらいタイトル……なのか？

やがて準備も終わり「畫面の前に來て」と手招きされたのでしぶしぶ移する。

そして手渡されたVRゴーグルをセット。ゲーム自は嫌だったが、VRは初験なのでし楽しみだったりする。

「うぉぉ……」

映し出されたのは六畳間ぐらいの洋室。

どうやら子供部屋のようで勉強機やいぐるみが置いてある。

また、絵本や文房などの小もありゲームとは思えないほどリアルな作りだ。

「手をばしたりするとにることもできるわよ」

堂庭の聲がまるで別世界から囁いたかのように聞こえる。

が、取り敢えず言われた通り手を前に差し出してみる。すると……。

「うぉ、すげぇ」

映像の中にあるグラスにれると、手にしていたコントローラーから冷たいが伝わってきた。

なんとのきだけではなく覚までリンクしているようで、実際に映像の中に居るような臨場が味わえる。かがくのちからってすげー！

「あのさ、この部屋なんだけど……俺しかいなくね？」

VRという次世代の遊戯に激して気付かなかったが、これはと遊ぶゲームだ。なのにがいない。

「あんたが全然かないからでしょ。……後ろ振り向いてみ？」

後ろって……どうやって向けばいいんだ？

「晴流！　聞こえてる？　をかすのよ、あんた自の！」

「……なるほど」

自由にき回れるのか。それはすげぇ。

堂庭の指示通り、反対側にを向ける。するとそこに不自然な程に可らしい一人のが佇んでいた。

はこちらの視線に気付いたのか、振り向いてニコッと笑った後、駆け寄ってくる。

そして長差で生まれる必然的な上目遣いで……

「瑛お兄ちゃん！　一緒に遊ぼっ！」