《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》4-4 「誰にも言わないから」

「誰だ、今のは!?」

辺りをぐるっと見回す。

すると後ろ……堂庭邸の向かい側にある電柱に人影が見えた。

「あ! もしかして紗彌加ちゃん?」

同じく人影に気付いた堂庭が指差しながら聲を上げる。

すると隠れていた人影がき出し、俺達の間に割ってってきて……

「ふっふっふ、その通り。いや~偶然通りかかったけど、まさかここが瑛りんの家だとは思わなかったよ~!」

「お前は……誰だっけ?」

「都筑だよ! 都筑紗彌加! もう、同じクラスなのに何で覚えてないの?」

「あぁ、そういえばそんな奴もいたっけ」

確か以前、新聞部の部室へ無理矢理連れて行った奴だよな。まああの時は助かったけど。

「紗彌加ちゃん、その……さっきの話、聞いてた?」

恐る恐る尋ねる堂庭。

「うん! ロリっ娘のエロゲーがもっと普及してくれってあたりから聞いてるよ!」

「おい、それほぼ全部じゃねーか!」

まさか盜み聞きされていたとは。

堂庭のがバレてしまったら非常に不味いのだが……。

「瑛りんがロリコンだったのは驚いたけど、これは流石にスクープできないねー」

「ありがとう紗彌加ちゃん! でもこの事は絶対に誰にも言っちゃ駄目だよ、何でも言うこと聞くからお願い!」

「俺からもこの通りだ。堂庭も結構気にしてるからにしてやってくれ」

二人揃って都筑に頭を下げる。

堂庭は自癖が異常な事を理解し、學校ではバレないように努力してきた。

俺もその頑張りについては認めているし、水の泡になんてさせたくはない。

ここはどんな手段を使ってでも食い止めないと。

「そっかー。宮ヶ谷君にまで言われちゃ仕方ないねー」

「……分かってくれたか!」

「安心して、誰にも言わないから。それに、友達の嫌がる事なんてする訳ないでしょ?」

「紗彌加ちゃん……」

堂庭は今にも泣き出しそうな顔で都筑を見つめている。

持つべきものは友って奴だな。日頃の行いが良かったおだろう。

「……で、その代わりと言っては難だけどぉー?」

ニヤリと口角を上げる都筑。

まさかこいつ、さっきの堂庭の発言を利用して……。

「二人で凄く楽しそうな話もしていたよねぇー?」

「それってどういう……?」

「別荘でキャンプとか言ってたよねぇ? それ、詳しく教えてよ!」

都筑も変わり者だな。合法ロリって言葉は聞こえなかったのかな?

「箱の別荘の話ね。そうそう、來月になると思うんだけど、あたしたちキャンプをするんだ! 紗彌加ちゃんも來る?」

「え、いいの!?」

「もちろん! 人數多い方が楽しいし」

「なら行くよ! カメラとメモ帳を持って気合いれて行くよ!」

ぐっとガッツポーズをする都筑。流石は新聞部員。プライベートでもネタ探しをするつもりだな。

「でも大丈夫なのか? 人が多過ぎて狹くなったりしないか?」

「何言ってるのよ。そんな心配は無用! うちの別荘は十人來ても余裕だわ」

「本當にいちいちスケールのでかい奴だよな、お前の家族は」

庶民には金持ちの思考が分からない。逆もまた然しかり、だろうけど。

「時間とか持ちとか的に決まったらLINEで連絡するね。……あ、この際だからグループでも作っておかない?」

「おぅ、そうするか」

「さんせーいっ!」

「じゃあ作ったら招待しとくからよろしくー!」

後日談になるが、グループ名は『様と愉快な下僕たち』という何とも悲慘なものだった。

數日後。

暇を持て余した俺は近所の本屋に來ていた。

空調のよく効いた店でマンガ雑誌の立ち読み。

うん、実に快適だ!

パラパラとページをめくり、しばらく時間を潰す。

一通りの雑誌を読み終えたが、これで帰っては詰まらないと思い、店をぶらぶらと歩き回ることにする。

何か面白いモノはないかと見回していると一枚のポスターに目が止まった。

伝記、ねぇ……」

ポスターには二人の小さなの子がの丈ぐらいある大きな剣を持ったイラストが描かれていた。

原作はラノベでアニメ化もされたらしい。堂庭が好きな作品の一つで、俺はよく話を聞かされているので外面だけは知っているのだ。

暇だししだけ読んでみるか。

けど斷じてロリコンではないぞ。する事が無いから仕方なくって訳だ。

自分に言い聞かせながらラノベコーナーに辿り著く。

するとそこに見慣れた姿のの子が立ち読みしていた。長くて綺麗な黒髪が特徴の俺の馴染みである。

「こんにちは桜ちゃん、こんな所で奇遇だね」

「ひゃあぁぁぁ!」

を震わせて悲鳴を上げる桜ちゃん。

ちょ、店に響くからやめてくれ!

「俺だよ俺! ちゃんと顔見て!」

「あ……お兄さんじゃないですか!?」

だから俺だって言ってるじゃん……。いきなり聲を掛けたのは悪いと思ってるけど。

「ごめんなさい。男の人だって思ってびっくりしちゃって……」

「いや、こっちこそごめん。急に話し掛けて」

「そんな事はないですよ! お兄さんが気にする必要はありませんから」

ニコリと微笑む桜ちゃん。本當にいつでも優しい子だ。優しすぎて悪い人に騙されないか心配になってしまう程である。

「あ、それは……」

視線を落とすと、桜ちゃんが手にしていたラノベに目が釘付けになった。

「この本、がどうかしましたか?」

「うん。だってそれ……・伝記じゃん」

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