《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》4-5 「が、頑張ります!」
桜ちゃんが立ち読みしていた本。
彼がラノベコーナーに居た事自驚いたが、それよりも手に持っている一冊がおかしい。
堂庭に勧められて読んでいるとか?
いやいや、ロリコンを直そうとしてるのに逆効果になるような事はしないだろう。
俺は先日のVRゲームの件だったり、話の流れで堂庭に加擔してしまった事があるけど桜ちゃんは意外と意志が固い子だ。
相手が姉であろうとキッパリと斷るはず。
だとすると……?
一點を見つめて思案する俺に見かねたのか、桜ちゃんが先に口を開いた。
「研究……ですよ」
「研究?」
まさか桜ちゃんまでに目覚めたのか!?
「お姉ちゃんのロリコンを直す為の研究です。彼かを知り、己を知れば百戦危うからずって言葉もある位ですし」
「それでわざわざが登場するラノベを読んでいたのか」
ロリコンを直すためにロリとは何かを勉強する。
言いたいことは分かるのだが、本を読むだけで効果はあるのだろうか。
「その伝記を読んでさ、的に分かった事とかあるの?」
「そうですね……小さいの子なのに酷使されて守ってあげたいと思いました!」
「本の想じゃんそれ!」
こんな調子じゃ桜ちゃんまでロリコンになってしまうじゃないか。
姉妹揃って好きとか俺の手に負えなくなるよ……。
眉間にしわを寄せて思い悩む。
すると桜ちゃんは軽く手招きをして本の中を見るよう促した。
「ちゃんと參考になった所もありますよ。……ここの三行目を読んでみてください」
「『はっきり決めろよ! 生きたいのか死にたいのか。自分に素直になれよ!』……本當にここで合ってるのか?」
「はい、その一文で合ってますよ」
コクリと頷く桜ちゃん。
堂庭のロリコンを直す參考なんだよな?
はっきり決めるって……一どういう意味なんだ?
「ふふ、まあこれは最終手段なんですけどね」
「ちょっと待ってくれ。悪いが全然分からない」
「お兄さんはそれで大丈夫です。寧ろそのままの方が……」
寂しそうな笑顔を浮かべる桜ちゃん。聲音も小さくなり、何か別の事を思い出してしまったようなじだ。
「ま、まあ桜ちゃんが參考になるのなら良いんじゃないか?」
「ええ。道のりはまだまだ遠いでしょうけど、お互い頑張りましょう!」
グッと笑顔で腕を構える桜ちゃんだが、やはりどこか辛そうで無理をしているような印象だった。
「じゃあ俺はそろそろ……って!?」
振り向きざまに一人の男と目が合う。
「気付くのが遅いよ、宮ヶ谷にさ・く・ら・ちゃん?」
「ひ、ひゃあぁぁぁ!!」
靜かな店に再び桜ちゃんの悲鳴が響き渡る。
だが別に相手は不審者ではない。行こそ不審だが言わずと知れた俺のクラスメイト、平沼である。
……というかこれ以上ばれたら出喰らうかもしれないから驚かすのはやめてくれ。
「お前いつから居たんだよ」
「研究とかどうとか、辺りかな」
「結構前からだな、おい」
このシチュエーション……既視があるが気にしないでおこう。
「でさぁそんな事よりぃ、桜ちゃんに聞きたい事があるんだけどぉー?」
「ひゃ! わ、わた、私に、ですか!?」
わなわなと口を震わす桜ちゃん。
そして尚も詰め寄ろうとする平沼を俺が制止する。
「怖がってんだろ、やめてやれ。あと聲でけぇ、自重しろ」
他人の事は言えないが、平沼の聲のボリュームが一段階大きいので気になったのだ。
「へいへーい。んで、聞きたい事ってのは……」
平沼はふてくされたような顔をして、こめかみをポリポリと掻きながら
「今度別荘でキャンプするんだってな。なんで俺に聲を掛けなかったんだよ」
「いや大お前らをう予定じゃ……つか何で知ってんだよ!?」
「甘いな宮ヶ谷。俺はリア充でいるために常にアンテナを張っているのさ。例で言えば報に満ち溢れた人間との流、とかかな」
「都筑だな? 都筑から聞いたんだな?」
平沼に話しそうな人を考えれば消去法で都筑一人になる。
というかあの子、凄い口が軽い奴なんじゃないか?
堂庭の件が心配になってきたぞ……。
「はっは、まあそんな所だ。……んで、どうなんだよ? 俺も行きたいんだけど」
「別に構わないが、聞くなら俺じゃなくて隣に……」
平沼から桜ちゃんへ視線をずらす。
すると注目を浴びたせいか、彼はビクッとを震わせた。
「あ、えっと私は……。が、頑張ります!」
「え、何を……?」
「その、チンピラな先輩でも対処できるように訓練だと思って頑張るので……私は大丈夫です!」
「チ、チンピラ……だと!?」
口をポカンと開けて驚く平沼。
桜ちゃんの素直な気持ちがダメージとなったようだ。
「クスッ……まあ元気出せよ平沼。お前がどんな野郎でも俺は付いていてやるからさ」
「おいてめぇ笑いながら言うんじゃねぇよ! こっちは割とガチで傷付いたんだぞ」
そう言いつつも言葉にがっている辺り、まだまだ平気だろう。
こいつが本気で落ち込む時はいくら話し掛けても無表で、抜け殻のようになってしまうからな。
楽観視する俺だったが、桜ちゃんはおたおたと心配そうな顔になり……。
「ご、ごめんなさい! 別に悪気があって言った訳じゃなくて本心で……」
「ぐさっ!」
「だから気に悩まないでください。チンピラ先輩!」
「ぬぅぉぉおぅぅ」
「とどめ刺すなよ……」
最後に至ってはわざとじゃないかと思ったが、「大丈夫ですか!?」と言って慌てているじからすると恐らく素の態度だったのだろう。良い子過ぎるのも、ある意味怖いのかもしれないな。
「み、宮ヶ谷……。堂庭ちゃんに伝えておいてしい。俺もキャンプに連れていってくれ……と」
「お前どんだけ行きたいんだよ」
平沼の頑固さと立ち直りの早さは見習いたいものである。
家庭訪問は戀のはじまり【完】
神山夕凪は、小學校教諭になって6年目。 1年生の擔任になった今年、そこには ADHD (発達障害)の瀬崎嘉人くんがいた。 トラブルの多い嘉人くん。 我が子の障害を受け入れられないお母さん。 応対するのはイケメンのイクメンパパ 瀬崎幸人ばかり。 発達障害児を育てるために奮闘する父。 悩む私を勵ましてくれるのは、 獨身・イケメンな學年主任。 教師と児童と保護者と上司。 「先生、ぼくのママになって。」 家庭訪問するたび、胸が苦しくなる… どうすればいいの? ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ |神山 夕凪(こうやま ゆうな) 27歳 教師 |瀬崎 嘉人(せざき よしと) 6歳 教え子 |瀬崎 幸人(せざき ゆきひと) 32歳 保護者 |木村 武(きむら たける) 36歳 學年主任 ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 2020.8.25 連載開始
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