《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》4-9 「試しに投げてみてよ!」

出発から二時間が過ぎた頃、一同は堂庭の別荘がある箱町へ來ていた。

晝間は渓流で水遊びをしつつバーベキューで腹ごしらえ。夜は溫泉にった後、別荘で寢泊まりする予定だ。

……ってさらりと言ってしまったがこれ、結構なリア充イベントだと思う。なくとも川で水遊びやバーベキューなんてした事の無い俺にとっては未知の領域だ。

とはいえメンバーは変態な馴染みと厄介なクラスメイト。フラグが立たないどころか存在すらしないような面子なので淡い期待はしていない。川さんあたりが來てくれたらテンション上がったのになぁ。

「ここを下れば川があります。巖場を通るので足元には気をつけてくださいね」

メアリーさんの案で駐車場から細い山道を下っていく。

慣れない悪路に苦戦し、途中何度か躓きそうになったが、なんとか川岸まで辿り著くことができた。

「風が凄い涼しいねここ!」

「はぇー。他に人もいないし場なんじゃね?」

「ふっふーん。ウチのメイドは何でも知ってるのよ!」

各々、想がれる。

周囲は山に塞がれ、その間をうように小さな川が流れている。

時折聞こえる鳥のさえずりが心地良い。俺はたまらず深呼吸をした。

「皆さん、水著に著替えて川で遊んできてはいかがでしょうか? 私はバーベキューの準備をしてますので」

「はぁーい! ……ってメアちゃんは川にらないの?」

「ええ、私は水著を持ってきておりませんので。それと……」

堂庭の問いに優しく答えるメアリーさんだったがしの間を置いた後、表を途端に曇らせて

力と言いますか々素を見せるには限界な年齢なんですよ、ハハ」

中學生みたいな見た目が話す言葉じゃないなと思いつつも実年齢を知った以上、俺達は苦笑いを返すことしかできなかった。

……ってか空気いちいち重たくするのやめないか? どうせだし盛り上がっていこうぜ!

「あのメアリーさん。著替えるのはいいんですが一どこで……」

嫌な流れを斷ち切ろうと俺は今疑問に思った事を彼へぶつける。

そう、著替えがあっても場所が無いのだ。

海水浴場とかプールであれば場も併設されている。だがこんな大自然のド真ん中にはそんなものあるはずもなく……。

別に男子だけなら堂々と著替えればいい話だが子がいる。……腐っても変態でも子がいる。

「そうですね……。ですが」

「晴流! あたしなら中にもう著てるから安心しなさい!」

メアリーさんの返答を遮り、堂庭が意気揚々と聲を上げる。いや、別にお前の心配をしていた訳じゃないんだけどな。

「流石瑛りん! 用意周到だねー。でも私はどうしよう、どこで著替えたらいいかな……」

々手間になりますが私の車の中でならプライバシーも守られて安全かと」

「うーん、でもまたあの山を往復しなくちゃいけないのか……。めんどいからここで著替えよ」

「いや行けよ!?」

都筑には子としての恥じらいが無いのだろうか……。

「なあ宮ヶ谷。せっかくの覗きのチャンスを自ら潰すのか? お?」

「うるさい、黙れ」

小學生みたいなノリで生きてる男は無視しておく。

「じゃあ俺はあの辺の茂みで著替えてくるから。都筑はメアリーさんと一緒に駐車場まで行った方が良いぞ。危ない盜撮魔がここにいるからな」

「誰が盜撮魔じゃい! 覗きは男のロマンだろうが!」

「はいはい……」

こうしてしばらくの間、各々の行に分かれるのだった。

數分後。

川辺に戻ると堂庭がただ一人、小石を片手に水切りをして遊んでいた。都筑や平沼はまだ戻ってきていないようだ。

やれやれと彼に近づきながら聲を掛ける。

「よぅ、お前普通の水著とか持ってないの?」

「ふふ、當たり前でしょ? あたしにはこのスク水が一番似合ってるんだからっ!」

えっへんと両腕を腰に當て、得意げに話すスク水の堂庭。

今までも何回か見た姿なので特段驚かないが『4-2 どうにわ』って名札が痛々しい。

小學生の時から型が変わってないのが丸分かりである。

「ところでさ、お前水切りできるんだな。知らんかったわ」

「え? 逆にできない人なんているの? ……ほら、こんなじで」

不思議そうな顔をしながら堂庭は足下にある小石を拾い上げてひょいっと川に投げる。

すると小石は二回飛び跳ねた後、水面から姿を消した。

「やっぱ三回は跳ねないかー。……ねぇ、晴流はどうなの? どれくらい飛ばせるの?」

「え、俺!?」

水切りなんて一度もやった事無いんだが。

どれくらい飛ばせると言われても多分飛び跳ねずにそのまま川へダイブするよ?

正直に答えようとしたが、堂庭は期待の眼差しでこちらを見つめていた。見た目相応な遊び盛りのといったじであり、できないと言えば泣いてしまうのではないかと錯覚する程、子供らしさが漂っていた。

「試しに投げてみてよ! ワクワク!」

「よ、よぅし、やってやろうじゃねぇか」

堂庭の無邪気な姿からなのか、はたまた俺のプライドが邪魔したのかは分からないが、堂庭の言われるがままに小石を手に取り川へ投げつける。

俺の手から離れた小石は大きな弧を描き、派手な水しぶきと共に川底へ落ちていった。

「今のは……腕慣らしだよね?」

「いや、本番のつもりだったが」

おっかしいなー。力を込めて投げたつもりだったのに。投げ方が違うのかな……。

「晴流って球技だけが取り柄なのに水切りできないんだ~」

「だけって何だよだけって! つかこれ球技関係ねぇだろ!」

口を尖らせて小馬鹿にする堂庭に腹が立つ。この生意気なスク水児め。

「ふっふーん♪ やっぱり晴流ってだらしなぁーい」

「くっ……。よし、こうなったら勝負だ! 帰る時までに練習するからそこで決著をつけよう!」

けて立とうじゃないの。ただ、二回跳ねの瑛様に勝てるかしら?」

キャンプという普段と違うテンションと堂庭の口車に乗せられ、あらぬ決戦を申し出てしまった。

だがこれも悪くないだろう。いつも調子に乗っているガキっ娘を泣かすチャンスである。

今は……思いっ切り楽しまなくちゃ!

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