《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》4-10 「脇腹だからセーフ……」
「よっしゃあ! 遊ぶぞぉ!」
全員が川岸に集まったところで平沼が聲を上げた。
どうやら水鉄砲で撃ち合いをするらしい。俺は知らなかったのだが、メアリーさんが既に人數分のおもちゃの水鉄砲を用意してくれていた。
「うわぁ、今のってタンクとか付いてるんだ~。なんかゴッツいね~」
水鉄砲の山を眺めながら都筑が嘆する。
「水遊び……あたしと晴流は十年振りかしら。稚園以來だから」
「お前よく覚えてるな。そんな昔の事なんか忘れちまったわ」
「えぇぇ! 有り得ないんだけど! だって晴流ったら隙あらば水著姿のあたしにべったりくっ付いてたのに……」
「ちょ、待て……はぁ!?」
何してたんだよ稚園時代の俺は!
「あたしの背中に隠れて「水しぶき怖ーい」って半べそかいてたわよね。ふふっ、あの時からずっとだらしないままなんだから」
「なるほど……けねぇな、俺」
そんな過去の話は聞きたくなかったな。なんだっていつも俺はどうしようもないのか。そしてそんな時は必ず堂庭が側にいるのだ。
笑われ、時には呆れられる事もあるけど、それでも堂庭は俺に手を差しべてくれる。
だから頭が上がらないし、アイツのロリコンを直すにも多の戸いが生まれてしまう。やたら偉そうな態度はとれないからだ。
それでも今は桜ちゃんの協力のおで堂庭をまともな人間に生まれ変わらせることができるのではないかと考えている。他人任せ……ではないけれど。
「へぇ~宮ケ谷君も可いトコあるんだねぇ」
「十年前から既に堂庭ちゃんを手玉に取っていたとは……宮ケ谷も中々やるな」
気付けば都筑と平沼がニンマリとした視線を俺に送っていた。あぁもう面倒くさい。
「昔は昔。今は今だ。ほら、とっとと遊ぼうぜ」
適當にあしらい、本題へることにした。
「……以上が第一回チーム対抗帽子取り合戦 in 箱のルール説明です。不明點はありますか?」
事前に書いてきたと思われるメモ用紙を見ながら、メアリーさんは淡々と話した。
簡潔に言えば二対二のチームに分かれ、両チームのリーダーは帽子を被る。そしてそれぞれ手渡された水鉄砲で相手チームの帽子を狙い撃ちし、先に落とした方が勝ちということだ。
因みに負けたチームは罰としてこれから行うバーベキューの後片付けを任されるらしい。これは地味に嫌なヤツである。あと勝ったチームにはメアリーさんとの婚約優先権が手にるそうだがこれも正直罰のような気がする。
「んで、チームはどうすんだ? グットッパ(※)で決めるか?」
気になったので問う。するとそれを聞いた平沼が呆れたように笑いながら
「もう決まってるも同然じゃないか。この面子で俺や都筑さんが堂庭ちゃんと組むなんて、とてもじゃないけどできないよ」
「いや、普通に男別とかでよくないか? 寧ろその方が……」
「待ってください、宮ヶ谷君! あなたはホモですか!? ……何を言おうと宮ヶ谷君は瑛お嬢様と組んでいただきます」
「はぁ……」
突如話にってきたメアリーさんに強く言われ、チームは半強制的に決まった。
だがこの時メアリーさんは何故、堂庭と俺を一緒にさせたかったのか俺にはよく分からなかった。
「おい、帽子取り合・戦・じゃなかったのかコレ? 何でアイツ等だけ隠れて俺達が狙われる羽目になってんだよ」
「そんなのあたしに聞いても知らないわよ。ってかそれより何であたしが帽子を被らなきゃいけないのよ!」
「メアリーさんがしつこく言ってきたから仕方ねぇだろ。それにお前の方が小柄だし狙いを定めにくいから適任だと思うけどな」
「えぇぇ! 確かにあたしは小柄でスク水の似合うの子だけど、狙われるのって凄く怖くない? いや、怖いよ、うん……」
小聲で弱音を吐く堂庭。
らしくないなと思いつつもこの狀況を考えれば無理もない。
都筑と平沼は辺りの茂みに潛んでおり、水鉄砲と言う名の銃を構えている。
一方、俺達には銃は無く(開始前に取り上げられてしまった)巖場の一つも無い開けた場所で敵の弾を今か今かと待ちけるのみ。
メアリーさんがあれこれ制約をかまして始まったこの無理ゲーだが、こうなった以上やり遂げるしかない。
そう、これはただの遊びなのだから。今は年の気持ちに戻って楽しもう……
「ひゃっ!」
よしっと自分を納得させたのと同時、後ろで甲高い悲鳴が響いた。
「大丈夫か!?」
「うん……脇腹だから、セーフ……」
もうゲームは始まっている。
堂庭の腹部が濡れ、水滴が太ももを伝ってぽたぽたと垂れていた。
その姿に俺は不覚にも妙な気をじてしまった。
昔から変わってない型だというのに……ってかそんな事考えてる暇じゃない!
「取り敢えず立ち止まってると危険だから移するか」
「そうだね…………ってひゃう!? またお腹……もう、趣味が悪いわね。平沼君だったら後でぶん毆ってやるわ!」
「趣味が悪いって……お前が言えるセリフかよ」
愚癡をこぼしつつ、堂庭が撃たれた方向へ移する。俺にできる事は壁になる、ただそれだけだし。
「ひぅぅ!? ちょ、晴流の役立たず! 今背中撃たれたんですけど!」
「無茶言うなよ……」
反対側から撃たれたという事は平沼達は手分けしているのか。なら片方に集中しても無意味だな……。
やれやれとき回るも相手からの攻撃は続く。
「ぁんっ! 今度はお!? ったくもう、あんた達! さっきからイヤらしい所ばっか狙ってあたしの反応を楽しんでるだけじゃないの? 狙うのは頭でしょ、ア・タ・マ!」
生い茂った草村に向かって堂庭がぶ。
まあ実際、趣旨が変わっている気はするが……。
一方俺はこれ以上堂庭の悲鳴が流れないよう、辺りをキョロキョロしながら見張る。
すると堂庭がゆっくりと近付いてきて……
「あんたはあたしを守りなさいよ。そうじゃないと意味無いでしょ?」
「ん? さっきからそうしているだろ。何を今更」
「そんな突っ立ってるだけじゃ駄目でしょうが。ほら、その……もっと近くに……」
一歩俺の前に踏み出した堂庭が上目遣いで呟く。
この距離は……お互い水著のせいなのか、とてつもなく恥ずかしい。俺は自分の顔が熱くなっているのをじた。
目線を逸らし、どう答えようか思案する。すると堂庭の背後から水の矢が勢いよく飛んできた。
水は彼の背中に的中し、ビシャッという音と共に水しぶきが散らばる。
驚いた堂庭は甲高い悲鳴を上げ、衝撃により俺の方に重が傾いて……
「きゃっ!」
「うわっ!?」
見事に俺の腹部辺りにダイブした。
彼の子供のようならかいが直に當たる。生暖かいが水に濡れた所はし冷たい。
はっと顔を上げた堂庭と目が合う。顔は真っ赤だった。恐らく俺も同じ狀態のはずだ。
お互いしばし直。……なんなんだ今の狀況!? めっちゃ恥ずかしいんですけど!?
「ごめん……」
「いや、別に……」
先に口を開いた堂庭が離れる。
彼の溫もりは消えたが、全が熱い。きっと頭から足の爪先まで火照ってしまったのだろう。
軽く溜め息をついて自分を落ち著かせていると、先程飛んできた水の方向から人影が現れた。
「やっほぉ瑛りんっ! 私のの撃はどうだったかな?」
「都筑ちゃん!?」
どうやら背中の一撃は都筑の仕業だったようである。ったく余計な事を……。
「都筑さんベリーナイスっす! もちろん堂庭ちゃんの甘い聲もベリーベリーナイスだったぜ!」
都筑の反対側、俺の背後から平沼が寄ってくる。
「素晴らしい青春を拝見させていただきました。皆様方に謝いたします」
隣でパチパチと手を叩くメアリーさんが答える。ってかいつの間に來た!? 全然気付かなかったんだけど……。
「ちょっ、帽子取り合戦はどうなってんのよ! まだゲームは終わってないじゃない!」
「瑛お嬢様。ゲームは引き分けといたしましょう。収穫は十分に取れたわけですし……」
嬉しそうに話すメアリーさん。やはりこの人、最初からまともにゲームしようなんて思ってなかったんだ。
堂庭の反応を眺めるため? はたまた公開処刑? いや、でもメアリーさんは堂庭家のメイドだ。従者として取るべき行では無いと思うのだが……。
「まあ引き分けでもなんでもいいですけど、メアリーさん。罰ゲームはどうするんです? 確かバーベキューの後片付けとか言ってたような……」
実はこの罰ゲームをしたくなくて俺は頑張っていたりしていたのだが、引き分けとなっては誰がけるのか。
これに関しては全員総意のようで一同、メアリーさんへ視線を向ける。すると彼は満面の笑みで
「全員で片付けましょう。引き分けですからっ!」
「「えぇぇぇぇ!?」」
がーんっと肩を落とす。そう來ましたか……。
しかしここまで計畫を立てた上、実行していたのだとすればこのメイドさん……侮れない!
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