《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》4-13 「好きな子とかいるの?」

閉じられた木製のドアの前で立ち止まる。

中の様子を窺う事はできないが、隙間かられているあたり、誰かが居るだろうと推測できる。

ゴクリと生唾を飲む。軽く茶化しに來ただけだというのに何故か張してきた。

コンコンコンッ。

三回ノックする。返事は無かった。

「……るぞ」

一聲かけてドアノブに手を乗せ、ゆっくり扉を開ける。

もし鍵がかかっていたらどうしようと思ったが、その心配は要らなかった。

無駄に広いリビング。

部屋の中央には真っ黒な革のソファーがドスンと鎮座しており、その上に堂庭がスペースを持て余すかのように育座りになってこまっていた。

他に人は居ないようだった。

「よぅ、どうしたんだ?」

分かりきってるけど敢えて聞く。

「…………るさぃ」

目線を変えず、小さく呟く堂庭。これは相當怖がってるな。

「膝震えてるぞ、大丈夫かよ」

「ふ、震えてなんかないしっ!」

両手で隠して問題ないアピールをしているが、その手も震えているため説得力は皆無である。

束の間。

ゴロロロゥゥゥ……。

「ひぃぃぃぃ!」

今度は両手を頭に當てて全を震わせ始めた。これは想像以上の反応だな……。

流石に心配になった俺はソファーの前まで近づき、堂庭の隣に並んで座った。

「…………冷やかしなら帰ってくれない?」

「……冷やかしじゃねぇよ、別に」

堂庭はただ強がっているだけ。俺には分かる。

だからそんな態度を見せなくても良いのにな。俺だってだらしない所ばっか見せてるし……。

「…………手、繋いでくれない?」

「はぁ!?」

驚いて振り向く。

上目遣いで見つめる堂庭の顔は真っ赤だった。

「べ、別にそういう意味じゃなくてっ! 晴流なら分かるでしょ? ……ったく、変な勘違いしないでよねっ!」

「あーはいはい、どうぞ好きにしてください」

何で俺が怒られるんだよ。

だらっと力した手を差し出すと暖かなが上に乗っかった。

「…………っ!」

「昔から何回もあるのに何変な反応しちゃってるの? 気持ち悪いよ?」

「うっせーな。これが普通って捉える方が間違ってるだろ」

ジト目で罵ってくるくせに繋いだ手は離さない。一本音はどっちなんだよ。

ドッゴロロロォォゥゥ……。

「きゃあっ!」

ぎゅぅぅぅぅぅ。

「いってぇぇぇぇ!? おい離せ折れる! 骨が砕けるから!」

堂庭の悲鳴と共に握る手にとんでもない力をれてきやがった。

で俺まで雷に負けないび聲を轟かせてしまった。

「ごめん、そんなつもりじゃ無かったけど……」

「マジかよ! もう俺は今後左利きで生きていかなくちゃいけないと思ったぜ」

「えぇぇ!? それは大袈裟でしょいくらなんでも」

「いや、割とガチで病院送りだと思ったんだが……」

小柄な型のくせして無駄に力だけはあるんだよな。

握力に関しては正直俺より強い気がする……。

「手が駄目なら……こうしよっか」

不意に優しく囁いた堂庭は手を前にどけると、全をこちらに傾けてきた。

の頭がぼふっと二の腕に當たる。

この覚は……七夕以來か。そういえばあの時も堂庭は弱気になってたんだっけ。

暫く沈黙が続いた。

ガラスを叩く雨音とお互いの息遣いだけが支配する空間。

妙なもどかしさをじた俺はやがて耐えられなくなり、ポツリと一言呟いた。

「小せぇよな、相変わらず」

「え……それってあたしののコト? うふふ、照れますねぇ」

「……心も、な」

「あぁ!?」

睨まれる。よしよし、大分調子は良さそうだ。

「明日もあるし、いい加減寢ようぜ。俺はもう部屋に」

「ちょっと待って!」

腕を摑まれる。……まだ隣にいなくてはいけないのだろうか。

「あとしだけ……話さない?」

「あ、あぁ……」

いながらも頷くと、堂庭は照れくさそうに微笑んだ。

「……で、何話すんだよ」

「えっとー、深夜なんで……バナ、とか?」

「寄りによってですか。また柄にもない事を」

堂庭本人から振ってくる話題としては意外すぎる。雷に怯えまくって思考がおかしくなったんじゃないか?

「いいからいいから……。で、晴流は好きな子とかいるの?」

「俺? いる訳ねぇだろ。聞かなくても分からないか?」

「ふふ、そうよね。だらしなぁい晴流はなんて出來ないもんね!」

「何で嬉しそうなんだよ。つかだらしなさは関係ないだろ」

酷い言われようである。

しかし、俺が好きな子はいないと言った瞬間、堂庭の顔が緩んだ気がした。まるでほっとしたかのような表に見えたが……特に意味は無いか。

「大お前はどうなんだよ。好きな人はいるのか?」

「え? …………いる、けど」

「はぁ!?」

思わず聲を荒げてしまった。

堂庭のびっくりした顔を見て自の失態に気付く。

何故驚いてしまったのか。堂庭に好きな人がいるって事は意外だけど大聲を出す必要は無かったじゃないか。

なんで俺は…………。

いや待て。

好きな人って言ってもこいつの場合は……?

だろ、好きなのは」

「え……? あ、うん、そ、そうだよー。うんうん」

明らかな作り笑いをみせる堂庭。

怪しい。これは裏がありますな?

「自分で聞いておいて難だが……本當に本命はなのか? 実は普通に男の誰かが好きだったり……」

「うぐっ…………ってうわぁもうこんな時間!」

「んあ?」

部屋の壁掛け時計に視線を移す。時刻はいつの間にか午前二時を過ぎていた。

……ってあからさまに話を逸らされたんだが。

「雷さんももう怒ってないし、あたしはもう寢るねー」

「ちょっ、寢るなら自分の部屋に戻って……っておい!」

どすんと太ももの上に堂庭の頭が乗っかる。これは所謂ひざまくらって奴だ。

「ふっふふーん♪ これも意外とアリだねぇ」

「他の奴等に見られたらどうするんだ! どけ!」

「…………」

「おい聞いてるのか! 無視しないで人の話を」

「…………すぴぃ……」

「もう寢てる!?」

既に堂庭は気持ち良さそうな寢息を立てていた。

……何も喋らなければ可いのに。

不覚にもそんな事を思ってしまった。

でも事実、堂庭姉妹は容姿端麗である。年相応かは置いといて。

それにしても……こいつにもいつか彼氏とか出來ちゃうのかな。

寂しい? 悲しい……? いや、よく分からないな、やっぱり。

「……眠い」

これ以上考えるのを止め、大きな欠を一つ。

気付けば雨音は無く、部屋に靜寂が訪れていた。

と同時に、急な睡魔が我がを襲う。

堂庭の部屋は二階だっけ……?

軽いだろうけど抱えて運ぶのは面倒だな。

それにしても眠い……。

思考はこの辺りで一旦途切れた。

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