《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》番外編 「舞奈海の夏休み」
私は宮ヶ谷舞奈海。9歳です。特に秀でた才能は無いごく普通の小學生です。
そんな私には高校生のお兄ちゃんがいます。休みの日は家でぐうたらしてるのに最近はよく外に出掛けていきます。お兄ちゃんの馴染み……二つ隣の家に住む瑛りんって人とよく遊んでいるそうです。
おで夏休みの宿題が全然進みません。もう、お兄ちゃんってば早く帰ってきて!
「ただいまぁー」
あ、お兄ちゃんが帰ってきました。噂をすれば何とやらってヤツですね!
それにしても夜の六時……こんな遅くまで何してたんだろ。
ドタバタと階段を駆け降りて玄関まで向かう私。
「もうお兄ちゃん遅い! こんな時間まで何してたのっ!」
「悪ぃ、堂庭と夏休みの宿題をしてたら……」
「私は!? 私の宿題も手伝ってよお兄ちゃん!」
頬を膨らませてぐぅーと睨んでやる。このーっ! いつも瑛りんと一緒なんだからぁ!
「まあそんな怒るなって。今度大仏チップス買ってやるからさ」
「えぇ~! 私駅前のケーキがいいんだけど!」
お兄ちゃんはまた食べで釣ろうとする……。いい加減私を子供扱いするのはやめてくれないかな。
でも……貰えるは貰っておきたいよね!
「ケーキは母さんに頼め。じゃあ俺は著替えてくるから」
「はぁーい。……ってちょっと待ってよ!」
危うく話が流れるところだった。
「なんだよ」
「晩飯食べた後でいいからさ、私の部屋に來てくれない?」
「なんでよ」
「私の話聞いてたの!? もうっ、お兄ちゃんのろくでなしぃ!」
拳で背中に一発毆ってやった。
でもお兄ちゃんには全然効かないみたい。なんか笑ってるし腹立つなぁ。
「宿題だろ? 仕方ねぇなぁ舞奈海は」
「なっ! 分かってたなら最初から言ってよ!」
「はいはい、じゃあ後でな」
ポンッと頭に手のひらを乗せられる。
なんか馬鹿にされてるようでイライラするけど安心するこのじはなんだろ。
「ぐぅ……ぜ、絶対だからね!」
変な気持ちを誤魔化すかのように一言叩きつけてやった。
◆
夕食後。
約束通りお兄ちゃんは私の部屋にやってきた。まったく、こういう時ばっかり真面目なんだから。
「これ、夏の練習帳ね。あと計算ドリルの17ページからと漢字ドリルの……」
「ちょっと待て舞奈海。お前がやるんだよな?」
「え? お兄ちゃんがやってよ。高校生なんだからこんなの簡単でしょ」
「そういう問題じゃねぇっつーの!」
ちぇっ。易々と策には乗ってくれないか……。
「なら私が書くから答え教えて?」
「それだと意味無いだろうが」
「ぶぅー。お兄ちゃんのけちぃ」
「うっせぇ。ここまで來てやってるんだから謝してくれよな」
お兄ちゃんのくせに生意気でなんか偉そう。
今年の夏休みなんて私と遊ばないで瑛りんとばっか會ってたくせに。
「……じゃあお兄ちゃんは何してくれるの?」
「手伝ってやる。まず自力で解いて分からない所があれば言ってくれ」
「むむぅ……仕方ないなぁ」
これ以上は何を言っても無駄になりそうだし、私は諦めて鉛筆を握った。
「まずは13×4……お兄ちゃん分からないっ!」
「お前解く気無いだろ!」
「ちっ、ばれたか」
「バレバレだよ!」
そんなくだらないやり取りをしながらも、私の宿題は著々と終わりに向かって進んでいた。
そしてお互い何も喋らなくなった頃、ふとお兄ちゃんがこんな事を呟いた。
「舞奈海って……どうして堂庭を瑛りんって呼ぶんだ?」
ほほう、今更な気もするけどそこに気付いちゃったか。
でもそうだよね。瑛りんはお兄ちゃんと同い年だし、私も昔は瑛お姉ちゃんって呼んでたから。
「それは……お兄ちゃんの知り合いで私と仲良しさんの人がいるからだよ」
「え、マジで!? まさかお前、裏で俺に対する包囲網を作ってるんじゃ……」
「そんな訳無いでしょ! で、誰だか分かる? ヒントはお兄ちゃんのクラスメイトで瑛りんの事を瑛りんって呼ぶ人!」
ふふ、いくらお兄ちゃんでもここまでヒントを出せばすぐ分かるよね?
「えぇ……いたっけそんな奴……」
「噓ぉ!?」
紗彌加姉さん、話は聞いていたけどどんだけ影薄いの……。
「都筑紗彌加さんって人……お兄ちゃんのクラスにいるでしょ!」
「あ、あぁ都筑かぁ。確かに舞奈海と同じ呼び方してたなぁ」
「もう、しっかりしてよね」
「それよりだ。お前、都筑と知り合いだったのかよ!?」
「うん、ちょっと前から……」
一年くらい前になるのかな。友達と橫浜まで遊びに行った時に道端で私がすっ転んじゃって、それを偶然見かけた紗彌加姉さんが聲を掛けてくれたんだよね。
あの時の安心というか優しさは凄かったなぁ。
「なるほどな……。前から気になってはいたが俺の學校での醜態を舞奈海がたまに知っている件について……」
「私が紗彌加姉さんから報を仕れていたからね」
「くそぉー! 都筑の馬鹿野郎ー!」
ふっふっふっ、あの出會いのおで私はお兄ちゃんの弱みをいくつも握ることができました。謝していますよ、紗彌加姉さん。
「ちなみに報を貰う代わりに私はお兄ちゃんの家での様子を紗彌加姉さんに報告してるから安心してね、お兄ちゃん!」
「寧ろやめてくれぇー!」
頭を抱えて機に突っ伏すお兄ちゃん。……流石に懲らしめすぎたかな?
でも、お兄ちゃんにはしっかりしてもらいたいんだ。だって私のお兄ちゃんとして相応しくないと困るもん。
「お兄ちゃん、宿題手伝ってくれてありがとっ!」
「え……俺まだ何もしてないぞ?」
「いいからいいから。もう部屋に戻っていいよ」
「お、おぅ……」
戸いながらも立ち上がるお兄ちゃんの姿を私は満面の笑顔で見つめてあげた。
もっと私に構ってね、お兄ちゃん!
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